華氏451度

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国民投票法案/各紙の社説などを読んでみた

2007-04-14 23:17:20 | マスコミの問題

 国民投票法案衆院通過に関する社説や論説を、新聞各紙がいっせいに載せている。活字で読んだのは2紙ほどだが、改憲国民投票法案情報センターのサイトで各紙の社説・論説をまとめて読んだ。

 産経や日経など一部の新聞を除き、少なくとも「与党の横暴」には批判的。可決した与党の法案は改憲のハードルが最も低い、ということをはっきりと、かなり丁寧に書いている新聞も少なくない。「取り上げるの遅すぎ!」とお玉さんの口真似をしたくなるが、まあ何も書かないよりはマシか……。

 一部を紹介しておこう。なお掲載日はすべて4月14日である(上記センターのサイトには、それ以前の社説なども載っている)。

【そもそも急ぐ必要があるのだろうか。最近の世論調査(NHK)では、国民投票法案への賛成は三割弱しかなかった。賛成者でも、今国会にこだわらず時間をかけて論議するべきだと七割が考えている。(中略)(華氏注/憲法改正については)その賛否は分かれるかもしれない。それでも、いま多くの国民が政治に望むのは、たとえば格差解消であり医療や教育の充実だ。「なんとか還元水」に象徴される政治とカネの問題も未解決ではないか▼国民の望み、世論の動向がどこにあろうとも、自らの信念に合わせ力ずくで政治を進めてゆく。このベッドの上で息絶えるのは、おそらく民主主義なのだ。】(北海道新聞)

【法案自体にも問題点が少なくない。憲法改正を承認する「過半数」の母数が、有権者総数や投票総数ではなく、最もハードルの低い「有効投票総数」とされたのである。もっと問題なのは国民投票を有効とする「最低投票率」の規定がないことだ。仮に投票率を40%とすれば、有権者の20%余りの賛成で憲法改正が成立することになる。】(秋田魁新報)

【国会の外からも、有効投票数の二分の一とされた「過半数」の定義の見直しや、最低投票率制度の必要性を強調する意見など、改憲派、護憲派の双方から問題点の指摘が相次いだ。今回の採決は時期尚早の「見切り発車」との批判を免れないだろう。】(山陰中央新報)

【法案処理を急いだ結果、議論のあった最低投票率は定めなかった。投票率がどんなに低くても成立することになる。地方公聴会はわずか二回。それも大阪と新潟で同じ日に開いた。国民的議論があまり盛り上がらないように済ませたとも映る】(中国新聞)

【中立的な手続きルールを定めるだけなのだから、成立は当然だ。遅すぎたぐらいだという論調が、メディアの中にもあることに正直驚く。(中略)憲法改正への第一歩がついに踏み出された。歴史の節目をこんなふうに越えてもいいのか。(中略)防衛庁を省に昇格させ、手続きルールだと言っては改正への国民投票法をつくる。そんな外堀を埋めてから本丸を攻めるような姑息(こそく)な方法で国家百年の計を決めるな。】(東京新聞)

【国民の間に憲法改正を求める声が広がっているわけではない。法案を急いで成立させる必要性はどこにあるのか】(新潟日報)

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 それにしても思うことは……「強行採決されてから、評論家みたいに喋るんじゃなーいッ」。(いや、むろん以前から取り上げていた新聞もあるが、全体の雰囲気としては可決されて慌てて横並びで批判姿勢を見せた、という感じが否めないのだ)

 私はメディアの役割は社会の動きに神経を尖らせ、庶民の代理として「知っておくべきこと」を取材し、報道することだと思っている。権力側が隠そうとしていること、ごまかそうとしていることを、広く知らせることだと思っている(むろん娯楽的な側面などもあり、それはそれでいい。人間、24時間緊張はしていられないのだから)。だから昔は「社会の木鐸」などと言われていたのだ(古いなぁ)。いつから新聞は評論家になってしまったのだろう。

 社説で【あれよあれよという間にもうここまで来たか…という印象である】と書いていたのは、宮崎日日新聞。これにはつい笑ってしまった。あれよあれよという間に、ってねえ。あなた達は情報の収集にかけては国民ひとりひとりとは比べものにならないほど、たけているはずでしょう。もちろん現代は個人でもその気になれば相当の情報が集められるが、個々人が全国津々浦々取材して回ることはできない。会える相手も、読める資料も限られている。メディアは「その代理人」であるという意識を忘れてはならないと思う……。

 少々ガックリしながらも、なお私は「メディアへの叱咤激励」を続けたい。「憲法改正をしたいがために、議会制民主主義を踏みにじっても国民投票法案を通す。その与党の暴挙に対して社説等で抗議されたことを嬉しく思います。しかし、それだけでジャーナリズムの責務を果たしたと思って欲しくありません。同法案の問題点などを、さまざまに工夫してわかりやすく報道していただけることを切に望みます」という簡単なメールを、各新聞社に送った。

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 民主党にももう少しシッカリしてほしいという願いをこめて、戸倉多香子さんを応援しています。

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