人間の実相を語る歴史人(釈尊と貴公子)
仏教の第一歩は現実の
自己自身を出発点とする。
ある時、釈尊が林中の一樹の蔭に
休んでいられた。
その時林中で三十人余りの貴公子達が
日頃のウンプン晴らしに
銘々夫人同伴で酒宴を楽しんでいた。
その中に一人の独身者が
娼婦(お金で買う女性)の
ような女を連れて加わっていた。
ところが、みんな飲むほどに酔うほどに
疲れて休んでしまった。
一人の貴公子が夜中、起きると
自分の身につけていた貴重な品物がない。
娼婦が一行の貴重品を
盗んで逃げたのである。
目がさめて驚いた一同は
懸命に探し廻っている時、
丁度一樹のかげに釈尊の尊容を見て
「一女人の通りかかるのを
御存知ありませんか」
と尋ねた。
釈尊はことの次第をきかれて
「そのようなわけか、
だが一女人を求めることと
汝自身を求めることと、
いずれが大事であろうか」
と反問されたので一同
迷夢からさめた心地して
釈尊の説法をきき
お弟子となったことが
古い仏典に記されている。
道元禅師の正法眼蔵の
現世公案の一節にも
「仏道を習うというのは自己を習うなり」
と道破し
「よもすがら、仏の道を求むれば、
我こころにぞ、たずね入りぬる」
と源信僧都は述懐している。
人類歴史の初頭に於いて
ギリシャのデルファイの神殿の扉に
きざまれた
「汝自身を知れ」
の有名な言葉は千古に輝く金言である。
仏教の第一歩は現実の
自己自身を出発点とする。
ある時、釈尊が林中の一樹の蔭に
休んでいられた。
その時林中で三十人余りの貴公子達が
日頃のウンプン晴らしに
銘々夫人同伴で酒宴を楽しんでいた。
その中に一人の独身者が
娼婦(お金で買う女性)の
ような女を連れて加わっていた。
ところが、みんな飲むほどに酔うほどに
疲れて休んでしまった。
一人の貴公子が夜中、起きると
自分の身につけていた貴重な品物がない。
娼婦が一行の貴重品を
盗んで逃げたのである。
目がさめて驚いた一同は
懸命に探し廻っている時、
丁度一樹のかげに釈尊の尊容を見て
「一女人の通りかかるのを
御存知ありませんか」
と尋ねた。
釈尊はことの次第をきかれて
「そのようなわけか、
だが一女人を求めることと
汝自身を求めることと、
いずれが大事であろうか」
と反問されたので一同
迷夢からさめた心地して
釈尊の説法をきき
お弟子となったことが
古い仏典に記されている。
道元禅師の正法眼蔵の
現世公案の一節にも
「仏道を習うというのは自己を習うなり」
と道破し
「よもすがら、仏の道を求むれば、
我こころにぞ、たずね入りぬる」
と源信僧都は述懐している。
人類歴史の初頭に於いて
ギリシャのデルファイの神殿の扉に
きざまれた
「汝自身を知れ」
の有名な言葉は千古に輝く金言である。