源信僧都②(当意即妙)
僧侶の問いに見事、答えた千菊丸は
そんなことに頓着しない。
すぐ川原へ行っては村の子供たちと、
石投げをして遊んだ。
「あんな子供に」と思っただけでも腹がたつ。
何とか一矢報いてやらねば気が済まん、
の思いから僧侶は一計を案じ、
石投げをしている千菊丸に近づいていった。
「おい坊や、お前さんは大層利口だが
十まで数えられるかい」
「数えられるよ、お坊さん」
「それなら数えてごらん」
「いいよ、一つ、二つ、三つ・・・・九つ、十」
僧侶はわざわざ十まで数えさせてから、
「坊やは今、おかしな数え方をしたな。
一つ、二つ、と皆、ツをつけているのに、
どうして十のときに十つと言わんのじゃ」
と意地の悪い質問をして、
「どうじゃ、今度は答えられんじゃろう」
と内心、ほくそ笑んだ。
それも束の間、
「そりゃお坊さん、無理だよ。
五つの時にイツツと
ツを一つ余分に使ってしまったから、
十のとき、足りなくなったんだよ」
と答えられて、またしても負けてしまった。
僧侶はもう、憎むよりも
「こんな智恵のある子供を田舎に置いておくのは
実に惜しい。
出家させてたら、どれほど勝れた善知識に
なるかもしれん」
と、かえって千菊丸に惚れ込んでしまった。
僧侶の問いに見事、答えた千菊丸は
そんなことに頓着しない。
すぐ川原へ行っては村の子供たちと、
石投げをして遊んだ。
「あんな子供に」と思っただけでも腹がたつ。
何とか一矢報いてやらねば気が済まん、
の思いから僧侶は一計を案じ、
石投げをしている千菊丸に近づいていった。
「おい坊や、お前さんは大層利口だが
十まで数えられるかい」
「数えられるよ、お坊さん」
「それなら数えてごらん」
「いいよ、一つ、二つ、三つ・・・・九つ、十」
僧侶はわざわざ十まで数えさせてから、
「坊やは今、おかしな数え方をしたな。
一つ、二つ、と皆、ツをつけているのに、
どうして十のときに十つと言わんのじゃ」
と意地の悪い質問をして、
「どうじゃ、今度は答えられんじゃろう」
と内心、ほくそ笑んだ。
それも束の間、
「そりゃお坊さん、無理だよ。
五つの時にイツツと
ツを一つ余分に使ってしまったから、
十のとき、足りなくなったんだよ」
と答えられて、またしても負けてしまった。
僧侶はもう、憎むよりも
「こんな智恵のある子供を田舎に置いておくのは
実に惜しい。
出家させてたら、どれほど勝れた善知識に
なるかもしれん」
と、かえって千菊丸に惚れ込んでしまった。