人間の実相を語る歴史人(鏡のない村)
ある処に鏡が一つもない村があった。
村人は自分の顔をハッキリと
見たことがなかったのである。
そんな折、どうしても町に
買い物にいかなければ
ならなくなり、一人の若者が
行くことになったのだ。
町へ行くと見るもの、会うもの
珍しいものばかりで目を奪われた。
ある店の前にきて、
四角板のようなものが
置いてあり、覗いてビックリした。
そのには死んだ筈のお父さんが
いるではないか。
「お父さん、20年前に
亡くなったと思ったのに
こんな処におられたのですか。
すぐに村へおつれします。」
それは鏡に映し出された自分の顔だった。
20年も経つと死んだお父さんに
ソックリになって、
鏡に映った自分の顔をお父さんと
見間違えたのである。
早く村に帰って、皆をビックリさせ、
喜ばせてやろうと若者は家路についた。
家に戻った若者は二階の
押入れの中に鏡を仕舞い、
「お父さん、しばらく
待っていてくださいね。
まず、妻を呼んできて、
驚かせますから」
と妻のところへ行った。
「おい、町で凄いものを
買ってきたぞ。
二階の押入れに入れて
あるから見て来い。」
と言った。
妻はどんなお土産かと
押入れの戸を開いた。
するとそこには若くて
綺麗な女性がいるではないか。
夫は自分に内緒で女を
かくまっていたと思った妻は
激怒した。
本当は鏡に映った自分の姿だったが、
鏡を見たことのなかった妻は
他の女だと見間違えたのだ。
「あなた、いつから
あんな女をかこっていたの」
と夫を攻め立てる。
「女、そんなの知らないよ。
それよりもお父さんがいて、
ビックリしただろう」
「お父さんなんていなかったわよ」
と、仲の良い夫婦なのに
大喧嘩が始まった。
そこへ尼さんがやってきた。
「どうしたのですか。
普段は仲の良い夫婦が大喧嘩して」
と仲裁に入ってくれた。
事情をきいた尼さんは、
「それなら私が見てきましょう」
と二階へ行って戻ってきた。
「はい、確かに女の方はおりました。
しかし、改心したようで、
髪をそり、尼になっておりました」
と言ったという。
尼さんも自分の顔を見たことがないので
鏡に映った姿を見間違えたようだ。
鏡は自分の姿を映し出す為に
作りだされた物。
無いと笑い話どころか、
悲劇がおきる。
或る富裕な婆羅門の子が
美しい妻を迎えた。
新婚の若き夫婦は飲酒によって
一層の快楽に酔うた。
ある夜、新妻が酒を飲もうとして
カメの蓋を開けると酔眼に
ふと美しい女がうつった。
新妻はテッキリこれは、
自分に秘めた女だと
感じ夫に憤り泣き叫んだ。
夫は、驚いてカメを覗くと、
そこには女は見えず
若い情欲に燃えた男の顔が見えるので、
妻に怪しい男があると
思って妻に激しく、
その不貞を怒った。
若い夫婦の激しい争いで
カメは打ち砕かれ
酒つきて始めて
浅ましい争いが絶えたという。
悦楽の悪夢に酔うている若い夫婦には
自分の姿も判らなかったのである。
三毒五欲の悪酒に酔い潰れて
我身知らずから
我々の一切の迷いや
苦悩の生ずることを
知らねばならない。
ある処に鏡が一つもない村があった。
村人は自分の顔をハッキリと
見たことがなかったのである。
そんな折、どうしても町に
買い物にいかなければ
ならなくなり、一人の若者が
行くことになったのだ。
町へ行くと見るもの、会うもの
珍しいものばかりで目を奪われた。
ある店の前にきて、
四角板のようなものが
置いてあり、覗いてビックリした。
そのには死んだ筈のお父さんが
いるではないか。
「お父さん、20年前に
亡くなったと思ったのに
こんな処におられたのですか。
すぐに村へおつれします。」
それは鏡に映し出された自分の顔だった。
20年も経つと死んだお父さんに
ソックリになって、
鏡に映った自分の顔をお父さんと
見間違えたのである。
早く村に帰って、皆をビックリさせ、
喜ばせてやろうと若者は家路についた。
家に戻った若者は二階の
押入れの中に鏡を仕舞い、
「お父さん、しばらく
待っていてくださいね。
まず、妻を呼んできて、
驚かせますから」
と妻のところへ行った。
「おい、町で凄いものを
買ってきたぞ。
二階の押入れに入れて
あるから見て来い。」
と言った。
妻はどんなお土産かと
押入れの戸を開いた。
するとそこには若くて
綺麗な女性がいるではないか。
夫は自分に内緒で女を
かくまっていたと思った妻は
激怒した。
本当は鏡に映った自分の姿だったが、
鏡を見たことのなかった妻は
他の女だと見間違えたのだ。
「あなた、いつから
あんな女をかこっていたの」
と夫を攻め立てる。
「女、そんなの知らないよ。
それよりもお父さんがいて、
ビックリしただろう」
「お父さんなんていなかったわよ」
と、仲の良い夫婦なのに
大喧嘩が始まった。
そこへ尼さんがやってきた。
「どうしたのですか。
普段は仲の良い夫婦が大喧嘩して」
と仲裁に入ってくれた。
事情をきいた尼さんは、
「それなら私が見てきましょう」
と二階へ行って戻ってきた。
「はい、確かに女の方はおりました。
しかし、改心したようで、
髪をそり、尼になっておりました」
と言ったという。
尼さんも自分の顔を見たことがないので
鏡に映った姿を見間違えたようだ。
鏡は自分の姿を映し出す為に
作りだされた物。
無いと笑い話どころか、
悲劇がおきる。
或る富裕な婆羅門の子が
美しい妻を迎えた。
新婚の若き夫婦は飲酒によって
一層の快楽に酔うた。
ある夜、新妻が酒を飲もうとして
カメの蓋を開けると酔眼に
ふと美しい女がうつった。
新妻はテッキリこれは、
自分に秘めた女だと
感じ夫に憤り泣き叫んだ。
夫は、驚いてカメを覗くと、
そこには女は見えず
若い情欲に燃えた男の顔が見えるので、
妻に怪しい男があると
思って妻に激しく、
その不貞を怒った。
若い夫婦の激しい争いで
カメは打ち砕かれ
酒つきて始めて
浅ましい争いが絶えたという。
悦楽の悪夢に酔うている若い夫婦には
自分の姿も判らなかったのである。
三毒五欲の悪酒に酔い潰れて
我身知らずから
我々の一切の迷いや
苦悩の生ずることを
知らねばならない。