脳のミステリー

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脳と記憶と睡眠

2010-03-04 09:45:18 | Weblog
学習にとって睡眠は、本当に無駄なものなのでしょうか?
徹夜で勉強すると、勉強してから眠るよりも学習時間が長くなる為、量的に多くの事を記憶できます。
確かに、勉強以外の事で頭を使う事も少ない為、記憶した事の多くが忘れられずに脳に残ったまま、試験を受けられます。
だから、徹夜して覚えた事を思い出し易く、比較的よい成績をとれる事があるのでしょう。
我が息子の学生時代の勉強法を思い出しても確かに頷けます。
ところが残念な事に、徹夜で勉強した事の多くは、数日も経つとキレイさっぱり忘れてしまいます。
確かに勉強した知識を使えなければ意味がないでしょうが、
息子曰く バカじゃない限り、後で一生懸命必死になって思い出そうとすれば、記憶に戻ってくる、と言うのです。
本人が経験済みなのかも知れません。

以前は「睡眠は脳の休息」と考えられていたようですが、最近では、何かを記憶してから起きていた時よりも眠った方が、よく覚えていると言うのです。
居眠り、大いに結構なんだそうです!
昼寝にも、記憶を強化する働きがあるらしいですよ!

勉強した事をしっかり記憶したければ、午前0時には眠りに就いて、寝つきの1時間半から3時間を大事にするのが良いのだそうです。

実験1:2語一組の単語を20組暗記し、12時間後に別の単語20組を覚える実験が行われました。
睡眠グループは2回の記憶課題の間に睡眠をとり、覚醒グループは睡眠をとりませんでした。
2回目の記憶を行った後に、初めの単語の組についてテストすると、睡眠グループのほうが覚醒グループに比べて、明らかに多くの単語を覚えていました。

実験2:学習した後に短い時間だけ昼寝をして、どれだけ記憶できたかを調べた実験があります。
このとき、昼寝の間に徐波睡眠が多いほど記憶の再生率がよく、脳が活発に活動している事が分かりました。
実際、福岡県の高校が1日15分の昼寝タイムを設けたところ、昼寝をした生徒は、勉強にやる気が出て、成績も向上したと答えています。

実験3:こんな実験もあります。
自己覚醒できると答えた、男女7人で行った実験があります。
午前0時に床に就いて、午前3時30分や5時30分に自己覚醒するように設定しました。
覚醒予定時刻の、前後40分以内に目覚められれば成功とします。
結果は、7人で14回の実験夜のうち12回で自己覚醒し、成功率は 86%でした。
覚醒した時刻の正確さは、予定時刻の前後10分以内が 36%、20分以内が 21%、30分以内が 7%、40分以内が 21%でした。
目を覚ます直前の睡眠の状態は、レム睡眠が 67%、ノンレム睡眠の段階2が 25%、段階4が 8%でした。
レム睡眠は睡眠と覚醒の橋渡しの夢うつつ状態であり、ノンレム睡眠の段階2は比較的浅い睡眠、段階4は深い睡眠です。
この事から、浅い睡眠からは自己覚醒がし易いけれども、深い睡眠からは自己覚醒し難い事が分かります。
つまり、自己覚醒する為に、覚醒予定時刻へ向けて睡眠のリズムを調整している、という訳ですね。

自分の人生は、自分で決めよう!
だから、睡眠時間も自分で決めよう!

「明日の朝6時に起きよう」 などと、眠る時にあらかじめ起床したい時刻を決めておいて、目覚ましなどの外からの刺激を使わずその時刻に自分で目覚めることを 自己覚醒 self-awakening と言います。
実はこの自己覚醒は多くの人が実行可能なのです。
海外の報告では、日常的に毎朝、自己覚醒している人は、21~81歳の約50%に上るとされています。
また、日本での調査によると、大学生で自己覚醒できる人は約10%しかいませんが、65歳以上の高齢者では約75%の人が自己覚醒できると答えています。
長い間、自己覚醒のトレーニングを積んでいく事で、習慣化していくのかもしれません。
また、若い世代には夜型人間が多く、朝は早く起きたいのだけれど、睡眠が足りていない為に目覚められない事もあります。
それが年を経るに従って、朝型の生活に移行してゆくのは事実です。
更に、心身が必要とする睡眠時間が少なくなる事とも相まって、高齢者では自己覚醒し易いのでしょう。

脳の血流量の変化にも、違いがあります。
自己覚醒できた時には、覚醒15分前から覚醒に向けて、右前頭葉領域に緩やかな脳血流量の増加が見られたようですが、何故か? 未だ脳医学者が研究中らしい。


長い長い『脳・記憶・睡眠』を読んで下さって有難うございました。
これから「春眠暁を覚えず」の季節に突入です。
このブログを参考にして戴けたら幸いです。

さて、次の話題は「ハイパーグラフィア」に任せましょうか!