何でも「使いよう」という言葉が力を発揮する。聞き飽きたほど、私は自ら左脳がダメージを受けたと言い続けてきた。壊れたものは諦めるしかない。洋の東西を問わず、昔から同じ様な諺がある。「覆水盆に返らず」西洋のフレーズは、訳すと「こぼしたミルクは元には戻らない」という事になる。先日、輪島の地震で大切な漆が大量に流れ出した映像が映し出されていた。職人が一生懸命、床にこぼれた漆を救って大きなワッパに戻していた。上塗には使えなくなっても中塗りや下地には充分使えるという訳である。輪島の漆職人の様子を話すと、塗師の姉は「丁寧に何回も漉せば、何とか使える筈よ」と言っていた。
そう、左脳の直撃を受けた細胞は決して戻らないけど、回りの他の機能がきっと働き出すから、諦めずに私も期待して呼びかけたらいいのだ。分かっちゃいるけど・・・
ところで、我々の日常生活では、耳から入る音楽を側頭葉に働きかけて、目に入る映像や景色を後頭葉が捉え、前頭葉が活躍し出すという事になる。耳も目も有難い事に二つずつあるので、幸いにも私のように半身不随で右側だけがストップをかけられても、情報は何らかの形で脳に送られるという事になる。問題は、前頭葉だろう。読んで字の如しで、脳の前部にある前頭葉は人間の場合、他のどんな生き物よりも遥かに大きい。前頭葉は機能的にふたつに分けられ、前半部は高次脳機能に関わる前頭前野で後半部は運動に関わる運動前野である。大脳皮質の聴覚野や視覚野に与えられた刺激は連合野で統合するという訳だ。
私はつくづく最高次の中枢で運動系が重症でも、情動の自律神経系が無事でよかった、と私らしく思っている。しかし、日常生活を考えると、自分の家の中はいいが、外出すると色々な問題が出てくるのに戸惑ったり、怒れてくる自分に対して慰めようがない事がままある。私のちょっとした悩みは、確かに自分が車椅子の上の人間でも「どこがわるいんだろう?」と不思議がられるのだが、実は動かない右半身の異常な過敏神経の存在にあるという訳である。「どこが悪いの? 何がダメなの?」と見られても、「実は結構重症なの!」とは言えない。もっともっと重病に悩んでいる人はいっぱいいるんだから。視覚障害の人の場合、眼の障害の為に視覚による刺激が視覚野に伝わらないで、視覚と触覚の刺激を比べると、触覚の方が俄然多いという。私は視覚に異常は見られないが、自分の視野に入らずに、急に背後から、例え優しくでもちょっと触れられたりするだけで異常な強さの刺激が触角野の伝わってしまうという訳である。人の目に触れないところで、異常な刺激が体から脳を突っ走っている事実を如何に事前に伝える事が出来るかが、外出時の私にはちょっとした課題なのである。バックミラーも病院の作業療法士の先生に付けて貰ったが、むやみやたらに自分の弱点を口から出していたら、煩い女だ、と言われるだろうし・・・多いに悩むところである。
所詮、自分の脳は自分の使い方次第なのだから、異常な触角の刺激を穏やかに受け止めるように自分の脳に言い聞かせるのが、最高の処理の仕方かも知れない。
そう、左脳の直撃を受けた細胞は決して戻らないけど、回りの他の機能がきっと働き出すから、諦めずに私も期待して呼びかけたらいいのだ。分かっちゃいるけど・・・
ところで、我々の日常生活では、耳から入る音楽を側頭葉に働きかけて、目に入る映像や景色を後頭葉が捉え、前頭葉が活躍し出すという事になる。耳も目も有難い事に二つずつあるので、幸いにも私のように半身不随で右側だけがストップをかけられても、情報は何らかの形で脳に送られるという事になる。問題は、前頭葉だろう。読んで字の如しで、脳の前部にある前頭葉は人間の場合、他のどんな生き物よりも遥かに大きい。前頭葉は機能的にふたつに分けられ、前半部は高次脳機能に関わる前頭前野で後半部は運動に関わる運動前野である。大脳皮質の聴覚野や視覚野に与えられた刺激は連合野で統合するという訳だ。
私はつくづく最高次の中枢で運動系が重症でも、情動の自律神経系が無事でよかった、と私らしく思っている。しかし、日常生活を考えると、自分の家の中はいいが、外出すると色々な問題が出てくるのに戸惑ったり、怒れてくる自分に対して慰めようがない事がままある。私のちょっとした悩みは、確かに自分が車椅子の上の人間でも「どこがわるいんだろう?」と不思議がられるのだが、実は動かない右半身の異常な過敏神経の存在にあるという訳である。「どこが悪いの? 何がダメなの?」と見られても、「実は結構重症なの!」とは言えない。もっともっと重病に悩んでいる人はいっぱいいるんだから。視覚障害の人の場合、眼の障害の為に視覚による刺激が視覚野に伝わらないで、視覚と触覚の刺激を比べると、触覚の方が俄然多いという。私は視覚に異常は見られないが、自分の視野に入らずに、急に背後から、例え優しくでもちょっと触れられたりするだけで異常な強さの刺激が触角野の伝わってしまうという訳である。人の目に触れないところで、異常な刺激が体から脳を突っ走っている事実を如何に事前に伝える事が出来るかが、外出時の私にはちょっとした課題なのである。バックミラーも病院の作業療法士の先生に付けて貰ったが、むやみやたらに自分の弱点を口から出していたら、煩い女だ、と言われるだろうし・・・多いに悩むところである。
所詮、自分の脳は自分の使い方次第なのだから、異常な触角の刺激を穏やかに受け止めるように自分の脳に言い聞かせるのが、最高の処理の仕方かも知れない。