「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

わが街にまだ聞こえてくる豆腐屋のラッパ

2018-03-16 06:01:33 | 2012・1・1

"暑さ寒さも彼岸まで”-ここへきて陽気だけでなく、日中の長さも一時に比べて一段と長く感じるよになった。午後5時をまわっても東京の西の空はまだ明るい。その夕陽を浴びて昨日もわが街に豆腐屋のラッパが響いてきた。”プ―ツ、プーツ”という、あの昭和の響きである。老妻の話では、昭和30年、新婚当時から隣の町から自転車の荷台に載せてやってくる二代目のおなじみの豆腐屋さんだ。

豆腐屋のラッパの音を聴くと、子供だった昭和の10年代を想い出す。軍靴の音が次第に大きくなり始めてきた頃だが、東京の街にはまだ色々のの物売りの音が聞こえてきた。順不動に列挙してみると、朝早くの納豆売り、”イワシ子やイワっ子”の鰯売り、鋳掛屋の”とんとん”とした音、ラオ屋から聞こえてくる”ピーツ、ピーツ”という蒸気音、紙芝居の拍子木、それに冬の夜空、遠くから聞こえてくるチャルメラの音などなど。

スーパーなど大型量販店の進出で、街の様相が一変、昔ながらの小売店が店を閉じ、いつのまにかわが街から豆腐屋さんもなくなった。スーパーへ行けばいくらでも安い豆腐が手にはいる。しかし、昔ながらの”いっちょう”いくらの豆腐の味ではない。それに形も”いっちょう”より小さい気がするのだが。若干、値段は高いのかもしれないが、老妻が通りまで出て行ったら、わざわざ家まで届けてくれた。ラッパの音には昔ながらの商人魂まで込められている。