1965年に在韓米軍から脱走して北朝鮮に投降したチャールズ・ジェンキンスさん(77)が十数年ぶりに米国メディアのインタビューに応じ、かつての北朝鮮での生活について「犬同然の生活だった」と話していたことが分かった。米紙ロサンゼルス・タイムズが最近報じた。

 ジェンキンスさんは1965年に北朝鮮入りした後、40年近くにわたり北朝鮮で暮らしていたが、2004年に拉致被害者だった日本人の妻と共に日本に入国・定住した。日本で暮らし始めた当初は北朝鮮の内部事情について告発するなど活発に活動していたが、その後は沈黙を守ってきた。

 ジェンキンスさんはLAタイムズとのインタビューで「北朝鮮では誰もまともに暮らしていない。食べるものもなければ飲み水も不足している。電気もない。冬には凍え死ぬような寒さと戦わなければならない。北朝鮮で私は犬同然の暮らしをしていた」と話した。

 ジェンキンスさんがメディアに対して口を開くきっかけとなったのは、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄・金正男(キム・ジョンナム)氏の暗殺事件と、米国人大学生オットー・ワームビアさんの死亡事件だ。ワームビアさんは昨年1月に観光で北朝鮮を訪れたまま17か月にわたり拘束され、解放されて米国に帰国したものの数日後に死亡した。ジェンキンスさんは「いまだに北朝鮮に観光に行く人がいるというのが驚きだ。北朝鮮に旅行に行くというのは狂っている」と話した。

 LAタイムズは、ジェンキンスさんが今年3月にマレーシアの空港で殺害された金正男氏の事件を知って以来、不安で震えていると報じた。ジェンキンスさんは「娘たちには、人けのない所で運転する際には警察に呼び止められても絶対に車を停めるなと言っている。北朝鮮はどんなことをするか分からない国だ」と話した。

 また、ジェンキンスさんは「北朝鮮が変わるためには政権全体が崩壊しなければならない」として「金正恩氏を除去するだけでは変わらないだろう。次の人物がその座について、同じようなことが続くだろう」と主張した。