理想国家日本の条件 さんより転載です。
11/24(金) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171124-00010004-binsider-int
金正恩体制の終わりは近い? 北朝鮮政府はすでに資本主義に切り崩されている
・北朝鮮の国民は、孤立した社会主義経済とは異なる、中国や韓国での暮らしがどのようなものなのかを知り始めている。
・北朝鮮国内で成長する市場経済は、政府から権力の一部を奪い取り、国民の手に戻す可能性もある。
・党指導部に対する若者たちの忠誠心は、必ずしも絶対的ではないと報じられている。脱北した元高官は以前、金正恩体制は10年持たないと述べていた。
アメリカはかつてアジアで、全体主義体制との核戦争の崖っぷちに立たされたことがある。そして、ソ連を最終的に崩壊させたのは、軍事力ではなく経済だった。
アメリカの核は、北朝鮮の核開発を思いとどまらせることはできなかった。経済制裁も、北朝鮮の市場アクセスを制限することができなかった。そして米中関係の強化も、飢えに苦しむ北朝鮮を服従させることはできなかった。
だが、アメリカ最大の武器である資本主義なら、効き目があるかもしれない。
ワシントン・ポストのアンナ・フィットフィールド(Anna Fitfield)記者は、アジア各地に住む25人の北朝鮮人に、2011年から続く金正恩体制下での暮らしがどのようなものなのか、取材した。そして、日常生活にもたらされた市場志向が、体制を土台から揺るがしていることを明らかにした。
「飢えのために、この全体主義国家から逃げ出すのではないという北朝鮮人が増えている」とフィットフィールド記者は書いている。「彼らが脱北するのは、国に幻滅したからだ」
フィットフィールド記者のインタビュー取材からは、国家経済が立ち行かなくなり、一般国民の間で資本主義を求める傾向が強まっていることが伺える。北朝鮮の人々は中国へ出稼ぎに行き、そこで国外の生活の現実を知って帰国する。こうした市場活動は、欧米の情報をももたらす。
ニューヨーカー誌のエヴァン・オスノス(Evan Osnos)氏によると、北朝鮮で韓国のメディアを所持していれば死刑になることもあるが、北朝鮮のエリート層の間では韓国訛りで話すことが流行っている。これには自分たちの力や国家からの独立、国外の情報に通じていることを示す意味合いがあるという。
「北朝鮮は厳密には集権的計画経済だが、今や人々の生活は市場を中心に回っている」2013年に北朝鮮を離れたある大学生は、フィットフィールド記者に語った。「政府が物資を供給してくれるとは、もう誰も思っていない。それぞれが自分で生き延びる術を見つけなければならない」
北朝鮮のインフラはもはや国民の生活を支えきれず、一般人の実生活と国家が求める絶対的忠誠の間に亀裂が生じる中、金正恩体制がこうした実態を把握できず、権力の座から追われる可能性もある。
36人の北朝鮮人を対象に行われた2016年の調査では、全員が国から十分な生活物資が供給されていると思うと回答した。だが、政府の財政支出について陰で冗談を言ったことはないと回答したのは、36人中1人だった。
「親しい友人の間では(金正恩氏のことを)ク……呼ばわりしていた」と、別の学生はフィットフィールド記者に話している。「皆、そう思っているが、口に出せるのは、親友か親が同じように思っていることが分かっているときだけだ」
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AP通信が伝えた韓国国家情報院の報告によると、北朝鮮は最近、人民軍総政治局の幹部2人について「不純な」態度を理由に処罰した。中にはかつて政権ナンバー2と目された人物も含まれている。
国際的な経済制裁によって、北朝鮮の国家経済はかつてないほど弱体化している。北朝鮮に情勢に詳しい韓国のニュースサイト「デイリーNK」は、アメリカが主導する制裁が北朝鮮経済にダメージを与えており、一般市民が政権に反旗を翻す可能性があると報じている。
そのためデイリーNKは、当局がこれまで市民に忠誠を誓うよう強いてきた歴代指導者の肖像画や銅像が破壊されることを恐れ、警備を強化していると報じた。
現政権下で亡命した中で最も地位の高い元外交官、太永浩(テ・ヨンホ)氏は、北朝鮮の若者たちが隠し持つ、韓国メディアを記録したSDカードについて語った。こうしたSDカードは、鼻の穴に入れて隠すことから、「鼻カード」と呼ばれているという。
同氏は、街頭のデモは戦車で排除できるかもしれないが、国外からの情報やソフトパワーは政権を崩壊させる可能性があると指摘する。
「金正恩体制と一般国民の間の溝は、年々深まっており、両者のつながりはいつか輪ゴムのように切れてしまうだろう」8月のインタビューで同氏は述べた。「その日は、10年以内にやって来るだろう」
だが、米シンクタンク「ストラトフォー(Stratfor)」のアジア太平洋地域のリード・アナリスト、ロジャー・ベイカー(Rodger Baker)氏は、北朝鮮政府は脱北者が願っているよりも強靭かもしれないと、Business Insiderに語ったことがある。
「西側諸国が思い描く北朝鮮像の多くは、脱北者の証言から得たもので、政治的に偏りやすい」と同氏は言い、韓国のDVDや音楽を北朝鮮に空中投下するとのアイデアを実行すれば、体制に反感を持つ国民を揺さぶり、「愛国心や国民意識よりも、物資に価値を見出す」かもしれないと指摘する。
歴史を振り返れば、一般市民が抑圧を拒絶し、繁栄を選んだ例は少なくない。北朝鮮は、豊かな民主国家である韓国とは比較にならないだろう。
アメリカのトランプ大統領が、金正恩体制を「残酷な独裁政権」と呼び、ならず者国家に対する軍事行動を示唆する様子は、1983年、米ソ間の緊張が高まり、核戦争の危機が迫る中、ロナルド・レーガン大統領がソ連を「悪の帝国」と呼んだことによく似ている。
だが、米ソ両国は何万もの核兵器と十分な兵力を持っていたが、第三次世界大戦は起きなかった。そして1980年代から1990年代初めにかけ、ソ連が崩壊する一方で、アメリカは輝かしい経済成長を享受した。1997年には、ソ連の指導者としてレーガン大統領と相対したミハイル・ゴルバチョフ氏が、モスクワでピザハットのCMに出演した。
冷戦時代、共産主義を打ち倒したのは、軍事力ではなく資本主義だ。あれから数十年が経ち、今度は北朝鮮を相手に、自由市場がもう1つの勝利を収める時がやってきたのかもしれない。
[原文:Capitalism is already breaking down North Korea's government ー and it could be the end of Kim Jong Un]
(翻訳:Tomoko A./編集:山口佳美)