「技能検定の受験参考書にもずいぶん親切に書かれているのがありますね」
「そりゃ商売じゃからなぁ」
「親切すぎて読み違えるのもあります。一つひとつの手法に、手順も含めた説明が書いてあって、その項目の終わりにまた手順だけを箇条書きにしてあるのです。はじめの説明と、あとの手順書とは、内容の同じことが繰り返されているのですが、読者はそれに気づかずに、説明に続いて次の手順が示されているものと思ってしまうのです」
「この通りやってみなさいと、ポイと渡されれば、そういう間違いも出るじゃろう」
「とにかく順番に読んでそのとおり進めていけばよいものと思い込んでいる人に、読み違えを気付かせるには、どうしたらよいでしょう」
「宗教と同じで、頭がいったんそっちを向いてしまうと、振り返らせるのは難儀じゃのぉ。読み方にこだわるのは、スラックスを裏返しにはいてしまったのを、脱がずに履きかえようとするのと同じとでも言ってみたら、おこるかの」
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