ものの形は、影で見ると面白く見えることがある。
だた日の当たっているだけのときには、気にもならなかった道ばたの風景が、影の部分を含むことによって、新鮮に眼に写ることがある。
日の当たりかたには形がないが、影の差しかたには形が現れる。
影と日のあたっている部分との形の組み合わせは、年に一度しかまったく同じになる機会はない。
しかも、同じ日付のその時間に、同じように晴れて日が当たることはまずないだろう。
天候が同じでも、次の年には建物の様子は変わる。壁に影を落としている樹の姿も変わる。
そこに見た形は、一生のうちにもう一度見ることはできない。
目に入ったものは、だいじに見たくなる。
人の話を聴くのも同じことなのだろう。