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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第6章−10 深層世界に入る

2018-09-21 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 夢魔サマンザが開いた深層世界は、心の闇への扉。
 天真爛漫の眠眠にも、祖先から受け継いだ集団的無意識の根源的恐怖は深層真理に巣くっていた。人間が作った武具の数々を破られたサマンザは、どんな恐怖を眠眠に用意しているのか?
 真っ暗闇の中で、何かがいた。
 眠眠は、思った。
 シュルシュルと音を立てているのは毒蛇? 
 ウッホウッホと騒いでいるのは猿? 
 キーキーと叫びながら飛び回っているのは猛禽? 
 斧を振り回す音は蟷螂拳? 
 大丈夫、象形拳なら一通りこなしている。

     

 蛇拳、猿拳、鷹爪拳など、カンフーには動物を模した武術が多い。そうした流儀は象形拳と呼ばれている。眠眠が誤解していたのは、カンフーではあくまで人間が動物の身体の動きを真似している。だが、深層世界ではこうした動物たちが人間の知性を持って攻撃してくる点だった。
 ウッ。いきなり鷹の爪が、眠眠の右肩の包帯を切り裂いた。
 アッ。続いて、蟷螂拳が背後から一文字に包帯を切り裂く。
 イタっ。さらに、鋭い毒蛇の牙が右ふくらはぎの包帯を噛んだ。
 だが、眠眠は恐怖に打ち震えるどころか興味津々だった。これまで青龍と孔明としか闘えなかったのが、ついに強敵相手に腕を試せるのだ。「今度はこっちらから行かせてもらうぞ〜」
 眠眠が、背中の鞘から引き抜いたドリームカリバーをゆっくりと回転させた。左に構えた魔剣を最初は正眼に、さらに右に動かしていく。普通なら暗い粒子が生まれ所持者は正気でいられなくなるが、眠眠は平気だった。
 一本の剣が数十本の剣のように光の粒子を残していく。真っ暗闇だった闇が、だんだん明るくなって獣たちが闇へ引き下がる。
 魔剣の周りに徐々に七色の虹が生まれ出す。
 動物には動物の技で、成仏させてあげる。
 ツバメ返し! 伝説の剣豪の秘剣を振るって踏み込むと最初の一太刀で鷹を切って捨てた。返す太刀で巨大な蟷螂を袈裟懸けに切り下ろす。ドリームカリバーで切られた瞬間、どちらも雲散霧消して夢の中に溶けていく。
 魔剣は勝利の雄叫びを上げ続けた。
 シュン! 毒蛇が今度は噛むのではなく、すれ違いざまに牙で左ふくらはぎに傷をつけた。眠眠は、両足がしびれるのに気づいた。


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