せつなく朽ちた鉄扉

雑草地帯・日記部門。硬軟色々取り混ぜて、よろず話題の書き捨て場。
なおAdsenseはgooが勝手に出してるだけ。

今日で悲しみは捨てる。

2010-06-09 21:55:36 | 宇宙、航空系
あの「はやぶさ」、TCM-4(最後の軌道修正)完了しました。
これで、はやぶさはもう、燃え尽きるしかありません。

 ■「はやぶさ」のTCM-4、WPAへの精密誘導完了 (JAXA・ISAS)

 ■「『我らのイオンエンジンは世界一のエンジンだ!』」 (Twitter: @Hayabusa_JAXA)
 ■「皆さん,μ10イオンエンジンは立派に役目を果たしました。」 (Twitter: @Hayabusa_JAXA)

今まで「はやぶさ」は、色々なものをくれました。
工学的な話では、当然ながらイオンエンジンの実使用に関する膨大な知見を。
運用面では、初めての本格的な惑星探査機の運用経験を。
そして我々野次馬には、夢と希望と、日本が世界のトップに立っているという甘い酩酊を。

「はやぶさ」は、間違いなく日本の宇宙開発の、日本の科学史のマイルストーンです。
50年後、100年後、科学史の年表に載り、永く名前を残す優秀な探査機です。

優秀というのは技術だけの意味ではありません。
これほどまでに愛された探査機が、今まで日本にあったでしょうか。「はやぶさ」の存在が、日本の宇宙開発に対する世論を大きく変えた気がします。あの5年前のイトカワ着陸以来、JAXAからの情報も、その情報に対するメディアの取り扱いも、格段に増えたと感じています。そして公開される情報を基に、より沢山の人が宇宙開発に興味を示し、意見を交わすようになりました。私だってその一人です。

「はやぶさ」は、本当に色々なものをくれました。


そんな「はやぶさ」が、燃え尽きてしまう。

今日のTCM-4が失敗していれば、安全のために再突入軌道からの離脱が行われるはずでした。
でも、成功しました。
後はカプセル分離だけですが、成否に関係なく、その段階ではもう軌道を離脱する事ができません。

物凄く不謹慎ですが、私は心の中で「TCMが失敗すればいい」とずっと思っていました。
やはり「はやぶさ」を失いたくはない。決して地球には帰ってこれなくとも、太陽系の何処かで生きてさえいてくれれば、30年後でも50年後でも、いつか人間の方から会いに行ける。ずっとそう思っていました。

本日、TCM-4成功の報に接し、泣きそうになりました。
会社だったので泣けませんでしたが、自宅ならきっと泣いてました。


私も、もう決心するしかありません。

彼の運命は決した。
彼が死ぬ思いで這いつくばって掴んだ運命を、受け入れない訳には行かない。

最後まで頑張れ、はやぶさ。
絶対に帰ってこいよ、待ってるからな。


 ■「はやぶさ」、回収部隊の待つ地域へ精密誘導を完了 (AstroArts)
 ■「はやぶさ」の地球帰還直前の光学望遠鏡による観測について (JAXA・ISAS)

大気圏再突入は13日23日頃。あと4日の命。
12日、13日の日没後には状況が良ければ見える可能性があるので、機材ある方は是非観測を。