最近、高齢の女性や夫婦の物語が気になる。本や映画もつい手に取ってしまう。人生の最終章をどう生きたのか。どう生きていくのか。今最大の関心亊。
「愛・アムール」は、切なく辛い後を引く映画だった。ショックな場面で物語は始まる。いったい何があったのか。まだこの映画を見ていない方は読まないでくださいね。まるでオフェリアのように花の中で眠る妻の姿が忘れられません。
夫婦共に音楽家でパリの高級アパルトマンに住んでいる。居間にはグランドピアノ。弟子のピアノコンサートに行き幸せに満ち足りた老夫婦の姿。パンと卵を焼き朝食を作る妻。夫婦で朝食を食べるいつもの朝の光景。それがある日を境に一変する。脳梗塞の手術の失敗で妻に身体の障害が残ってしまったのだ。次第に状態も悪化していく。認知も進んでいく妻。病院には行きたくない。老醜を人に見せたくはない。娘にさえも。誇り高い妻の気持ちを大切に夫の老々介護の日々が始まる…。イギリスに住む娘は時々顔を見せるけれど、父親に代わって介護をするという事は無い。個人主義のフランス故でしょうか。献身に面倒を見る夫の姿に打たれます。
日に日に進んでいく病状。それでも妻との約束を守って面倒を見る。夫婦役は共に仏で有名な俳優さんだそうです。ふと意識が戻った妻が夫に言った言葉に号泣。「こんなにも長く素晴らしい人生だった。」夫の手を握る妻。優しく手を握る夫。「もう最後にしたいの」・・・夢なのでしょうか台所で朝食を作る妻の姿が見える。ピアノを弾く妻の幻影。何でもない日常の幸せ。「愛・アムール」印象に残った作品です。
