面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

言葉の綾

2007年07月17日 | Weblog
 手もとの広辞苑を開くと、通常僕らが使う言葉のいいまわしは、
言葉の「文」と書いてある。「綾」は文字通り糸を経横斜めに織り
なすこととある。しかし、思い浮かぶ文字は「綾」の方が多いのでは
ないだろうか。
昨日、稽古の合間に「好きな文字」について語り合った。とっさに
思い浮かぶ文字が必ずしも好きな文字とは限らないが、なかなか興味
深いものがあった。「誠」「涼」「凛」などはわかりやすい。が、
腐乱、蠢く、奇怪、などは、あまり美しくはない。実は、この文字、
僕がとっさに思い浮かべた言葉だ。好きではない、むしろ嫌いな文字
に属すると思うのだが、こういう言葉が浮かぶのは、馬琴や秋成、鏡花
を好んで読んだせいではないかと弁解した。
 好きな言葉だけでは物語は書けない。織り成す言葉の綾が物語を複雑
にもシンプルにもする。人間関係もまた、言葉の綾で大きく変化する事
がある。気をつけねば、と、いつも思っているのに、織り損ねて失敗する。
 ふと気付いたのだが、夢野久作はやはり大した作家だなあ、「不吉な高貴さ」
「妖しい美しさ」「貧乏なお公家様」「でっぷり太った優しそうな方」等、
「あやかしの鼓」の数ページでも、陰と陽が巧みに織り成してある。
 それに比べると鏡花は言葉の好き嫌いが激しい。それもまた、読むには
とても面白いのだが。
 さてさて、僕の「ミッドナイトフラワートレイン」も、下品な言葉の羅列で
少し悪趣味だと叱られるかも知れないが、素敵な女優さんの笑顔に免じて
許して下さいませ。
 晴れた夏の日の午後、一座を連れて別府の坂道を歩きたいなあ。