手もとの広辞苑を開くと、通常僕らが使う言葉のいいまわしは、
言葉の「文」と書いてある。「綾」は文字通り糸を経横斜めに織り
なすこととある。しかし、思い浮かぶ文字は「綾」の方が多いのでは
ないだろうか。
昨日、稽古の合間に「好きな文字」について語り合った。とっさに
思い浮かぶ文字が必ずしも好きな文字とは限らないが、なかなか興味
深いものがあった。「誠」「涼」「凛」などはわかりやすい。が、
腐乱、蠢く、奇怪、などは、あまり美しくはない。実は、この文字、
僕がとっさに思い浮かべた言葉だ。好きではない、むしろ嫌いな文字
に属すると思うのだが、こういう言葉が浮かぶのは、馬琴や秋成、鏡花
を好んで読んだせいではないかと弁解した。
好きな言葉だけでは物語は書けない。織り成す言葉の綾が物語を複雑
にもシンプルにもする。人間関係もまた、言葉の綾で大きく変化する事
がある。気をつけねば、と、いつも思っているのに、織り損ねて失敗する。
ふと気付いたのだが、夢野久作はやはり大した作家だなあ、「不吉な高貴さ」
「妖しい美しさ」「貧乏なお公家様」「でっぷり太った優しそうな方」等、
「あやかしの鼓」の数ページでも、陰と陽が巧みに織り成してある。
それに比べると鏡花は言葉の好き嫌いが激しい。それもまた、読むには
とても面白いのだが。
さてさて、僕の「ミッドナイトフラワートレイン」も、下品な言葉の羅列で
少し悪趣味だと叱られるかも知れないが、素敵な女優さんの笑顔に免じて
許して下さいませ。
晴れた夏の日の午後、一座を連れて別府の坂道を歩きたいなあ。
言葉の「文」と書いてある。「綾」は文字通り糸を経横斜めに織り
なすこととある。しかし、思い浮かぶ文字は「綾」の方が多いのでは
ないだろうか。
昨日、稽古の合間に「好きな文字」について語り合った。とっさに
思い浮かぶ文字が必ずしも好きな文字とは限らないが、なかなか興味
深いものがあった。「誠」「涼」「凛」などはわかりやすい。が、
腐乱、蠢く、奇怪、などは、あまり美しくはない。実は、この文字、
僕がとっさに思い浮かべた言葉だ。好きではない、むしろ嫌いな文字
に属すると思うのだが、こういう言葉が浮かぶのは、馬琴や秋成、鏡花
を好んで読んだせいではないかと弁解した。
好きな言葉だけでは物語は書けない。織り成す言葉の綾が物語を複雑
にもシンプルにもする。人間関係もまた、言葉の綾で大きく変化する事
がある。気をつけねば、と、いつも思っているのに、織り損ねて失敗する。
ふと気付いたのだが、夢野久作はやはり大した作家だなあ、「不吉な高貴さ」
「妖しい美しさ」「貧乏なお公家様」「でっぷり太った優しそうな方」等、
「あやかしの鼓」の数ページでも、陰と陽が巧みに織り成してある。
それに比べると鏡花は言葉の好き嫌いが激しい。それもまた、読むには
とても面白いのだが。
さてさて、僕の「ミッドナイトフラワートレイン」も、下品な言葉の羅列で
少し悪趣味だと叱られるかも知れないが、素敵な女優さんの笑顔に免じて
許して下さいませ。
晴れた夏の日の午後、一座を連れて別府の坂道を歩きたいなあ。