心配された空梅雨だったが、ここ数日雨が降り続いている。
頚椎に爆弾を抱えている身としては、好ましくない季節だが、
我が侭は云えない。農作物や、自然界にとっては必要不可欠な
営みなのだ。
蒸し暑さも、湿気も、風情有りの一言で片付けよう。
50年も昔の話だが、雨の降り続く日の午後、4歳下の妹に
詩集を読んで聴かせたことがある。
それを思い出したのは、大掃除を終えて何処からともなく出て
来た一冊の詩集「青い小径」(竹久夢二著・野ばら社刊)を手に
したからだった。奥付けをめくると1957年11月の発行と記
されている。確かに50年前だ。記憶が甦る。あの頃、僕は漠然と
絵描きか小説家になるだろうと思っていた。
芝居を書き、演出している今、あの頃の無垢な思いを忘れては
いないだろうかと、思い返している。妹は僕の話しにいつも目を
輝かせて聞き入っていた。6歳上の姉が学校へ行っている時間の
何と平穏だったことか。大勢の級友を引き連れて姉が帰ってくると
僕はワンピースを着せられ、口紅を塗られ、髪を二つ結びにさせられ
ウサギのダンスを踊らされるのだ。梅雨の季節になると思い出したくない
記憶まで甦る。60歳をとうに過ぎた姉は、「あなたが可愛かったからよ」
と、嘯く。50年も昔のことが、こうも鮮やかに甦るのは、梅雨の所為に
しておこう。
頚椎に爆弾を抱えている身としては、好ましくない季節だが、
我が侭は云えない。農作物や、自然界にとっては必要不可欠な
営みなのだ。
蒸し暑さも、湿気も、風情有りの一言で片付けよう。
50年も昔の話だが、雨の降り続く日の午後、4歳下の妹に
詩集を読んで聴かせたことがある。
それを思い出したのは、大掃除を終えて何処からともなく出て
来た一冊の詩集「青い小径」(竹久夢二著・野ばら社刊)を手に
したからだった。奥付けをめくると1957年11月の発行と記
されている。確かに50年前だ。記憶が甦る。あの頃、僕は漠然と
絵描きか小説家になるだろうと思っていた。
芝居を書き、演出している今、あの頃の無垢な思いを忘れては
いないだろうかと、思い返している。妹は僕の話しにいつも目を
輝かせて聞き入っていた。6歳上の姉が学校へ行っている時間の
何と平穏だったことか。大勢の級友を引き連れて姉が帰ってくると
僕はワンピースを着せられ、口紅を塗られ、髪を二つ結びにさせられ
ウサギのダンスを踊らされるのだ。梅雨の季節になると思い出したくない
記憶まで甦る。60歳をとうに過ぎた姉は、「あなたが可愛かったからよ」
と、嘯く。50年も昔のことが、こうも鮮やかに甦るのは、梅雨の所為に
しておこう。