面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

うつろう季節

2007年07月05日 | Weblog
 木の葉が色づくのは、昆虫や鳥たちにやがてその身が枯れ
行くことを知らせる為だと教えてくれたひとはもういない。
 梅雨のまにまに、庭の芙蓉が芽吹き始めた。雨に逆らう様に
咲き誇るのも、数日を待たないだろう。
 旅に出たいと思う。今は芝居の稽古中、何を我が侭云うのだと
自分を戒める。
 只今14時15分、16時から18時は踊りの振り付けだ。
僕は18時に稽古場入りの予定なので、3時間余ある。
 雲行きも怪しいので、書斎で書物の中へ旅することにしよう。
 書棚の隅に「北から来た黒船(ニコライ・ザドルノフ著)」が
僕を待っている。1972年3月に出版されて、30年間、度重なる
引っ越しに耐え、読まれる日を待っている。(拾い読みなら3,4回
した事があるが)手に取ったが、いや、3時間ではまた拾い読みに
なってしまう。と、書棚に戻した。ふと、目についたのは、丸谷才一
文章読本、奥付けをみると、1972年の発行になっている。
丸谷才一先生は、歴史的仮名づかひの継承第一人者で尊敬する作家の
一人である。30年前に読んだ限で、手垢もなく新書のようだ。
文章読本は、谷崎、三島、中村と、昭和に4人の文章名人が著されたが、
僕は丸谷版が一番素直に受け取れた記憶がある。
 何だか新鮮な空気に触れた気分だ。
それでは、ビニールカバーを外して…。
 

今日も雨は降り止まず

2007年07月05日 | Weblog
 ようやく梅雨らしい天候が続いている。23日に初日を
迎えるアトリエ公演「ミッドナイトフラワートレイン」の
稽古も充実してきた。
 今日は、キャサリン青田役のつぶらまひる嬢の事務所から
挨拶に見えられ、美味しい差し入れを頂いた。
 演出助手の三田裕子から無駄話を控えるように注意されるので
稽古が非常にスムーズに進行する。初演助にしてはなかなかの器だ。
 そろそろ踊りや歌もいれつつ、音響、照明とのスタッフ打ち合わせ
に入る。芝居の演出も楽しいが、このスタッフミーティングもまた、
実に楽しい。僕が不可能に近い注文を出しても誰も出来ませんとは
答えない。何とか演出家の夢を叶えてあげようと頭をひねってくれる。
 今日は、音効の永尾嬢に、「裏木戸を叩く音は、ほら、古い板戸に
ガラスの覗き窓がついた、築40年ばかりの、叩くとドシャドシャって
音がして…」などと、無理を云った。「解かりました。作ってきます」
明るく答える永尾嬢が頼もしくみえた。彼女はまだ、入団3年目の新人
で、4月に研究生に昇格したばかりだ。
 劇団稽古場の壁には武術の道場よろしく劇団員、準劇団員、研究生の
順に名札が掛けてある。13期生の生き残り、小島くんと永尾嬢は、
研究生の列に並んでいる。
 東京に、俳優を志す若者が八万人いるらしい。全国なら何十万人に
なるのだろう。四十代で職業として成り立つ俳優は二千人にも満たない
という。過酷な生存競争の世界だ。確かに魅力ある仕事だが、稲を育てる
でもなく、道路や家を作る仕事でもない。有事の際に何が出来るかも定かで
ないが、人の心を豊かに出来ると信じて芝居作りに邁進している。
 神津先生、そろそろ稽古観て下さい。