木の葉が色づくのは、昆虫や鳥たちにやがてその身が枯れ
行くことを知らせる為だと教えてくれたひとはもういない。
梅雨のまにまに、庭の芙蓉が芽吹き始めた。雨に逆らう様に
咲き誇るのも、数日を待たないだろう。
旅に出たいと思う。今は芝居の稽古中、何を我が侭云うのだと
自分を戒める。
只今14時15分、16時から18時は踊りの振り付けだ。
僕は18時に稽古場入りの予定なので、3時間余ある。
雲行きも怪しいので、書斎で書物の中へ旅することにしよう。
書棚の隅に「北から来た黒船(ニコライ・ザドルノフ著)」が
僕を待っている。1972年3月に出版されて、30年間、度重なる
引っ越しに耐え、読まれる日を待っている。(拾い読みなら3,4回
した事があるが)手に取ったが、いや、3時間ではまた拾い読みに
なってしまう。と、書棚に戻した。ふと、目についたのは、丸谷才一
文章読本、奥付けをみると、1972年の発行になっている。
丸谷才一先生は、歴史的仮名づかひの継承第一人者で尊敬する作家の
一人である。30年前に読んだ限で、手垢もなく新書のようだ。
文章読本は、谷崎、三島、中村と、昭和に4人の文章名人が著されたが、
僕は丸谷版が一番素直に受け取れた記憶がある。
何だか新鮮な空気に触れた気分だ。
それでは、ビニールカバーを外して…。
行くことを知らせる為だと教えてくれたひとはもういない。
梅雨のまにまに、庭の芙蓉が芽吹き始めた。雨に逆らう様に
咲き誇るのも、数日を待たないだろう。
旅に出たいと思う。今は芝居の稽古中、何を我が侭云うのだと
自分を戒める。
只今14時15分、16時から18時は踊りの振り付けだ。
僕は18時に稽古場入りの予定なので、3時間余ある。
雲行きも怪しいので、書斎で書物の中へ旅することにしよう。
書棚の隅に「北から来た黒船(ニコライ・ザドルノフ著)」が
僕を待っている。1972年3月に出版されて、30年間、度重なる
引っ越しに耐え、読まれる日を待っている。(拾い読みなら3,4回
した事があるが)手に取ったが、いや、3時間ではまた拾い読みに
なってしまう。と、書棚に戻した。ふと、目についたのは、丸谷才一
文章読本、奥付けをみると、1972年の発行になっている。
丸谷才一先生は、歴史的仮名づかひの継承第一人者で尊敬する作家の
一人である。30年前に読んだ限で、手垢もなく新書のようだ。
文章読本は、谷崎、三島、中村と、昭和に4人の文章名人が著されたが、
僕は丸谷版が一番素直に受け取れた記憶がある。
何だか新鮮な空気に触れた気分だ。
それでは、ビニールカバーを外して…。