美術館にアートを贈る会

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市民と美術館の新しい関係の構築をめざしています。

2022総会・講演会(要旨) 11/22

2022-12-25 14:47:25 | Weblog

講演会「山村幸則さんの表現世界いろいろ」 ゲスト:美術家 山村幸則



(ご講演の一部をご紹介します。)
■2005 年から 2019 年の作品について

https://www.youtube.com/watch?v=KI3GH9WxWtM
(公開されている youtube 動画を見ながら順番にお話いただきました。)

・私は土地土地で暮らすということを大事に考えています。
当時各国でレジデンスをしていて、ケニアのナイロビではフライパンを溶接して叩いたら音がなる作品をつくり、除幕式には現地のダンサーに踊ってもらいました。

・神戸市にある相楽園という池泉回遊式庭園の池の上に五葉松の作品を設置。
その五葉松に外の世界を見せてあげようと、リアカーに乗せて神戸の街を歩き、 かつて松林があったかも知れない海岸線を港のほうに向かって移動させまし た。

・2009 年には C.A.P. STUDIO Q2 にスペースを借り、そこに3ヶ月滞在して、 毎朝タコ釣りをしまして、たくさん釣れるものですから、タコもそのときの作品 にしました。

・2011年には自宅から 神戸市中央区の C.A.P のスタジオまでの自転車往復を地図 上にドローイング作品として仕上げたりもしました。

・海外で滞在制作するとき聞かれるのは「どこから来たのか」。「神戸から来た」 と答えると、「神戸牛のところですね」とよく言われます。そこで神戸牛は神戸の素材だと思って、牧場に牛を借りに行きまして、子牛を山から海へ、海から 山へ旅をする作品をつくりました。子牛と港まで来て水をあげて、二人で足の型をキャンバスの上に描いて、また戻って行きます。とにかく帰りは子牛が ずっと鳴いていまして、想像以上に大きな鳴き声は、車のクラクションほど大きな音でした。

・そのほか、西宮船坂の集落では使われていない椅子を見晴らしのいい場所に 置いたり、ドイツではじゃがいもの舟をつくったり、六甲ミーツアートでは明石海峡で釣った鯛を山上に運び、六甲山天覧台のキジと鯛を出会わせたり、阪神淡路大震災で枯れた井戸に入ったり、神戸港開港 150 周年記念には神戸港で見つけたイカリを作品化、神戸市内を 200 カ所巡ったり、中国の広州では「対対対好好好(トイトイトイハオハオハオ)」(日本で「はいはいはいそうそうそう」みたいな相槌)の手書き文字を鏡張りの部屋にずっと続くような作品を発表したりしました。

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■ 近年の作品について

● 兵庫陶芸美術館開館 15 周年記念特別展
『No Man’s Land—陶芸の未来、未だ見ぬ地平の先—』での 作品《時のかけら》制作過程について


丹波篠山市の丹波古陶館で室町時代の古丹波の壺をひとつ購入。それをリュックサックに入れて、立杭にある虚空蔵山に登りました。
まずは壺を高く掲げ、次は投げ上げたいと思い、投げては受け止める行為を丹波篠山のあちこちで1年間繰り返しました。

コロナが流行りはじめ展覧会が延期になり、投げては受け止める行為をさらに繰り返し、その結果起きたこと、それは自分の肩が上がらなくなったこと。医者に行くと、肩に何か骨のかけらみたいなものが見えると言われま した。
図らずも、コロナを乗り越えて開催された展覧会の作品のタイトルは《時 のかけら》でした。

四季折々にいろいろな場所で撮影と同時に音も録音していました。それには 理由があって、この壺は三耳壺で紐を通すような耳が三つあり、耳がある ということは室町時代から色々な音を聞いていたのではないかと思いまし た。
 
展示空間では壺の中から四季折々の音が流れるようにしました。

● 高砂生活


コロナで海外でのレジデンスが難しくなり、日本国内でもそれは出来るので はないかと思い、高砂市に滞在することになりました。

滞在場所は、町家 Tentofu というブックカフェ。船着場のそばにあって、漁 師さんが昔の風景が描かれた絵を貸して下さったので、それを宿泊していた 約1畳の部屋に飾っていました。その絵をきっかけに来場者の方々とお話が 盛り上がることが多くありました。

地元に高砂神社があって、尉と姥という高砂人形が御神体なので、滞在しながらネットオークションで、尉と姥を連日落札。
高砂の未来はどうなっ ていくのだろうと高砂人形たちが会議をしたりしていました。
尉と姥が熊手とほうきを持っているので、それが気になり始めて、壺だけで なく、熊手とほうきも投げてみたりしました。

● 星屑男


  
神戸ボトルアートプロジェクトに参加したときの作品です。
須磨の山上で、ラムネ瓶が地中から掘り出されたという話を聞いて、山にラムネ瓶を掘りにいきましたら、カツっとスコップにあたって、瓶のかけらが どんどん出てきました。 発掘した瓶を洗浄したら、亀裂が入っていたりはしていますが、美しさを見 出しました。
今では1社だけラムネ瓶を扱っている兵庫鉱泉所に、リターナルビンにヒビが入ったり割れたりした瓶がありそれらを分けて頂きまし た。その割れた瓶の鋭利な部分を磨き、それらに穴をあけて、スーツにその 破片を縫い付けて、それを着込んで、星屑男として長田の街を歩きました。

● 時のかけら@自在空間アートステップ



展示会場の真向かいに、生田ギャラリーという骨董屋さんがあって、展覧会の為に、商品である骨董品をお借りできないか相談し、9点をお借りしまし た。昭和初期、大正の骨董品の数々です。

その骨董品がまずどこに行きたいのか、どこだったら作品としての意味が深 まるのか、投げて受け止める場所を考え、毎月1回、骨董品をお借りして、 神戸のどこかで投げては受け止めるという行為をしました。 金魚鉢に実際に水と金魚を入れて、投げて受け止めることもしました。

ものを投げ上げて、空中で一瞬静止する瞬間があります。その瞬間は上でも ない、下でもない。軽やかに感じる瞬間があります。自由に感じる瞬間がありまして、そういう瞬間を求めているのかなと思います。 絶対に落としてはいけない、そういうリスクを含めて、制作する作品だと思っています。
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■ 加藤義夫理事のコメント
 
かなりユニークな仕事をされています。 基本はナンセンスイズム、それを真剣に身体を張ってやっているのが心に響 きました。
しかも人生の半分、26 年間やり続けていることはすごいことです。 現代人は経済原則で動いていますが、山村さんはすごく純粋。もっともアー ティストらしいアーティストではないでしょうか。 アートという概念から拡張して、作品という枠を超えて、楽しいことややり たいことをやり続けられる人。
今日は天才をひとり見つけました。

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【山村幸則(やまむら・ゆきのり)プロフィール】

1972年 兵庫県神戸市生まれ。
1994年 大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コース卒業。
2005年 国立オスロ芸術大学芸術学部大学院修士課程修了 (ノルウェー王国)。
その後、様々な国や地域にて滞在制作を行い、土地の歴史や文化、人々との出会いや交流の中から、素材や表現方法を模索し、作品を具現化。 その過程と作品を介して生まれる多様な関係性、繋がりを大切に考えている作家である。


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