美術館にアートを贈る会 総会・ゲストトークのご報告
日時:2013年9月11日(水)18:30- 総会
18:45- ゲストトーク
(ゲスト・兵庫県立美術館学芸員 出原均様)
19:30- 懇親会
会場:アートコートギャラリー
参加者: 20名
★ 田中恒子副理事長より開会挨拶
この活動は多くのアーティスト、美術館、市民をつないでいる。美術が遠くのものではなく身近なものとして市民のものとなるために。
現在は伊丹市立美術館と今村源さんをつなぐ活動をしている。
先日は、ART OSAKA 2013においてこの活動に理解をしていただき、受付すぐ横に私たちのコーナーを設置することができた。まだまだ知られていないこの活動を広く知っていただく機会になった。これからも市民と美術をつないでいく、美術館を市民のものにする活動を続けていきたい。
★ 事務局寺谷より報告
1) 第四弾寄贈プロジェクトの進行状況
募金状況の報告
新作「シダとなる・イタミ2013」は伊丹市立美術館に参考展示中。
2) 今後のイベント計画
(10/6 第6回美術館訪問
京都国立近代美術館バックヤードツアー)
3) 当会の活動が企業メセナ協議会の助成認定活動に認められた。
★ ゲストトーク「美術館とコレクション」
ゲスト:出原均氏(兵庫県立美術館学芸員 常設展・コレクション収集管理グループリーダー)
事務局岡山よりの紹介
出原氏は、もともとは広島市立現代美術館で学芸員をされており、兵庫県立美術館では「横尾忠則・冒険王」「榎忠・美術館を野生化する」など現代作家を中心とした現代美術の展示も多く手がけておられる。
合わせて、コレクションの収集管理もされ、常設展や作品購入にも関わっておられるので、現在の兵庫県立美術館のコレクションを含め、当会の活動への意見もお聞きしたい。
出原様のトーク要旨
兵庫県立近代美術館ができたのは1970年。
1978年に山梨県立美術館が「種をまく人」を購入する前と後では、美術館のコレクションがかなり変わった。
1980年以降にできた美術館は、高額の作品を購入するようになり、それ以前は、地元作家を中心にして購入にお金をかけていなかった。
兵庫県立美術館(兵庫県立近代美術館)は、あまり作品の購入に予算を割けなかった時代とそれ以降の時代の両方を経験するという意味では、日本の美術館の歴史をある程度象徴している美術館ではないかと思う。当館のコレクションを時代順に追ってみたい。
1) 金山平三作品の県への寄贈(1966年)
コレクションの基礎
金山平三は、神戸出身の風景画家。遺族(奥様)が1966年に兵庫県に寄贈された。これが兵庫県立近代美術館のコレクションの第1号。
300点近くの大コレクションで、これを核にして兵庫県立近代美術館はコレクションを始めた。
2) 版画・近代美術・郷土作家等の購入・寄贈(1971年度~)
兵庫県立近代美術館は、1970年にオープン。
収集事業は翌年から
当館には三大収集方針がある。
版画・近代彫刻(ブロンズ)・郷土作家。
版画と近代彫刻はともにマルチプル。一点ものではないので、購入費が少ない中でいかにコレクションを充実させるかということで版画などに注目した。
2-1 版画
当館の9000点ぐらいの作品のうち5分の3以上は版画。まさに版画家の版画もあるし、絵画が購入できないから版画を購入したというのもある。
2-2 近代彫刻
ブロンズ彫刻は型から何点か抜くので、ある程度の費用は抑えられるのではないかと少しずつ彫刻を買っていった。兵庫県立近代美術館の目玉になっている。
原田の森ギャラリーの1階のガラス貼りのところに、近代彫刻がずらりと並んでいたのは圧巻だった。
2-3 郷土作家
小磯良平と金山平三は記念室をつくっており、兵庫県立近代美術館の礎という意味で二大作家として顕彰されている。
3) 具体美術協会及び現代作家の作品購入(1985年度~)
白髪の絵画は1977年に1点購入
当時の若い学芸員から声があがったのだと思う。「兵庫はやっぱり具体だ」と。1985年ぐらいから具体を買っていく動きが出てきた。元永定正さん、白髪一雄さん、田中敦子さんなど、主な具体の作家の作品を購入。1980年代は時代も高揚し経済的に潤ってきて、現代美術への評価が与えられてきた時代に具体を買っていた。
4) 伊藤文化財団の作品寄贈(1982年度~)
近代美術の名品・その他
伊藤ハムの株の収益を美術品購入に当てるという伊藤文化財団がある。神戸市の博物館と兵庫県立近代美術館への作品寄贈や補助を行っている。
美術館側からこういうものがほしい、という提案をし、伊藤文化財団が購入し、美術館に寄贈する形をとっている。
最近は現代美術というよりは近代美術の方にシフトしたいという要望が財団から出て来ているので、現代美術については別の手だてが必要になっている。
5) 山村コレクションの購入・寄贈(1986年度)
現代美術の拡大
山村コレクションには多くのコレクションがあった。いくつかは購入、いくつかは寄贈によって、具体を中心とする現代美術の核が兵庫県立近代美術館にできた。具体だけでなく、60年代~70年代の現代美術も入ったことは、当館にとても面白いコレクションになった。
山村コレクションの現代美術の流れは、80年代のニューウェーブの松井紫朗さんまでなので、85 年代以降の現代美術は手薄である。
6) 県立美術館開館に向けての購入(2002、3年度)
屋外彫刻、重点作家(横尾忠則・村上華岳)など
2002年に美術館を神戸製鋼の跡地に移して、兵庫県立美術館として第2のスタートを切る。新しい美術館なので、コレクション収集をもう少し充実させる動きがあった。当館は基本的には海外でもペインティングを買わないという方針がいまもある。いままでの版画、近代彫刻、郷土作家という三大方針を守っている。
国立国際美術館での「美の響演 関西コレクションズ」でも当館から出したのは近代彫刻だけだった。
巨大な美術館ができたことで、野外彫刻を高額なものを何点か購入。
重点作家として、横尾忠則の作品のポスター、版画のほとんどを買った。ペインティングも購入し、自画像をできるだけ収集している。村上華岳も購入。地元作家として、横尾さんと村上さんを中心として重点作家として購入している。
7)2010年度・2011年度の作品購入
入館者増による臨時的なご祝儀購入
兵庫県ゆかりの現代作家の作品を中心に
(配布資料 ART RAMBLE Vol.28と32を参考にしてほしい)
この2年間で多くの作品を購入できた理由は、特別展で入場者が多かったこと。平成21年度はだまし絵展、22年度は水木しげる展。ともに来場者が多く、かなりの収益があがったので購入できた。
赤川コレクションは、日系ブラジル人の方による、ブラジル系日系人作家の作品。その大口の寄贈があった。移民を送り出して来た神戸港がある兵庫県の美術館へ寄贈し、ブラジルへ渡った日本人の活躍を、美術を通して日本の人たちに紹介したいという赤川氏の強い願いがあった。日本でよく知られている大岩オスカールなども含まれていた。
番外)美術館にアートを贈る会について
第2弾寄贈プロジェクトの栗田宏一さんとは知り合いで、和歌山県立近代美術館へ寄贈すると聞き少し寄付させていただいた。個人的には、いい作家の作品を入れるのはよいことだと思う。
美術館側とすれば「ありがとう」という以外何ものでもない。
美術館にコレクションされる基準は、美術館としてはたくさん見て目を鍛えて基準をつくっていくしかない。美術品は100年、200年もつものという発想で考えている。
★ 懇親会
大川をのぞむ中庭で和やかに懇親会を開催した。
なかなか普通は聞けない購入の裏話なども聞かせていただきました。
出原様、ありがとうございました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございます。(記録・奥村)
日時:2013年9月11日(水)18:30- 総会
18:45- ゲストトーク
(ゲスト・兵庫県立美術館学芸員 出原均様)
19:30- 懇親会
会場:アートコートギャラリー
参加者: 20名
★ 田中恒子副理事長より開会挨拶
この活動は多くのアーティスト、美術館、市民をつないでいる。美術が遠くのものではなく身近なものとして市民のものとなるために。
現在は伊丹市立美術館と今村源さんをつなぐ活動をしている。
先日は、ART OSAKA 2013においてこの活動に理解をしていただき、受付すぐ横に私たちのコーナーを設置することができた。まだまだ知られていないこの活動を広く知っていただく機会になった。これからも市民と美術をつないでいく、美術館を市民のものにする活動を続けていきたい。
★ 事務局寺谷より報告
1) 第四弾寄贈プロジェクトの進行状況
募金状況の報告
新作「シダとなる・イタミ2013」は伊丹市立美術館に参考展示中。
2) 今後のイベント計画
(10/6 第6回美術館訪問
京都国立近代美術館バックヤードツアー)
3) 当会の活動が企業メセナ協議会の助成認定活動に認められた。
★ ゲストトーク「美術館とコレクション」
ゲスト:出原均氏(兵庫県立美術館学芸員 常設展・コレクション収集管理グループリーダー)
事務局岡山よりの紹介
出原氏は、もともとは広島市立現代美術館で学芸員をされており、兵庫県立美術館では「横尾忠則・冒険王」「榎忠・美術館を野生化する」など現代作家を中心とした現代美術の展示も多く手がけておられる。
合わせて、コレクションの収集管理もされ、常設展や作品購入にも関わっておられるので、現在の兵庫県立美術館のコレクションを含め、当会の活動への意見もお聞きしたい。
出原様のトーク要旨
兵庫県立近代美術館ができたのは1970年。
1978年に山梨県立美術館が「種をまく人」を購入する前と後では、美術館のコレクションがかなり変わった。
1980年以降にできた美術館は、高額の作品を購入するようになり、それ以前は、地元作家を中心にして購入にお金をかけていなかった。
兵庫県立美術館(兵庫県立近代美術館)は、あまり作品の購入に予算を割けなかった時代とそれ以降の時代の両方を経験するという意味では、日本の美術館の歴史をある程度象徴している美術館ではないかと思う。当館のコレクションを時代順に追ってみたい。
1) 金山平三作品の県への寄贈(1966年)
コレクションの基礎
金山平三は、神戸出身の風景画家。遺族(奥様)が1966年に兵庫県に寄贈された。これが兵庫県立近代美術館のコレクションの第1号。
300点近くの大コレクションで、これを核にして兵庫県立近代美術館はコレクションを始めた。
2) 版画・近代美術・郷土作家等の購入・寄贈(1971年度~)
兵庫県立近代美術館は、1970年にオープン。
収集事業は翌年から
当館には三大収集方針がある。
版画・近代彫刻(ブロンズ)・郷土作家。
版画と近代彫刻はともにマルチプル。一点ものではないので、購入費が少ない中でいかにコレクションを充実させるかということで版画などに注目した。
2-1 版画
当館の9000点ぐらいの作品のうち5分の3以上は版画。まさに版画家の版画もあるし、絵画が購入できないから版画を購入したというのもある。
2-2 近代彫刻
ブロンズ彫刻は型から何点か抜くので、ある程度の費用は抑えられるのではないかと少しずつ彫刻を買っていった。兵庫県立近代美術館の目玉になっている。
原田の森ギャラリーの1階のガラス貼りのところに、近代彫刻がずらりと並んでいたのは圧巻だった。
2-3 郷土作家
小磯良平と金山平三は記念室をつくっており、兵庫県立近代美術館の礎という意味で二大作家として顕彰されている。
3) 具体美術協会及び現代作家の作品購入(1985年度~)
白髪の絵画は1977年に1点購入
当時の若い学芸員から声があがったのだと思う。「兵庫はやっぱり具体だ」と。1985年ぐらいから具体を買っていく動きが出てきた。元永定正さん、白髪一雄さん、田中敦子さんなど、主な具体の作家の作品を購入。1980年代は時代も高揚し経済的に潤ってきて、現代美術への評価が与えられてきた時代に具体を買っていた。
4) 伊藤文化財団の作品寄贈(1982年度~)
近代美術の名品・その他
伊藤ハムの株の収益を美術品購入に当てるという伊藤文化財団がある。神戸市の博物館と兵庫県立近代美術館への作品寄贈や補助を行っている。
美術館側からこういうものがほしい、という提案をし、伊藤文化財団が購入し、美術館に寄贈する形をとっている。
最近は現代美術というよりは近代美術の方にシフトしたいという要望が財団から出て来ているので、現代美術については別の手だてが必要になっている。
5) 山村コレクションの購入・寄贈(1986年度)
現代美術の拡大
山村コレクションには多くのコレクションがあった。いくつかは購入、いくつかは寄贈によって、具体を中心とする現代美術の核が兵庫県立近代美術館にできた。具体だけでなく、60年代~70年代の現代美術も入ったことは、当館にとても面白いコレクションになった。
山村コレクションの現代美術の流れは、80年代のニューウェーブの松井紫朗さんまでなので、85 年代以降の現代美術は手薄である。
6) 県立美術館開館に向けての購入(2002、3年度)
屋外彫刻、重点作家(横尾忠則・村上華岳)など
2002年に美術館を神戸製鋼の跡地に移して、兵庫県立美術館として第2のスタートを切る。新しい美術館なので、コレクション収集をもう少し充実させる動きがあった。当館は基本的には海外でもペインティングを買わないという方針がいまもある。いままでの版画、近代彫刻、郷土作家という三大方針を守っている。
国立国際美術館での「美の響演 関西コレクションズ」でも当館から出したのは近代彫刻だけだった。
巨大な美術館ができたことで、野外彫刻を高額なものを何点か購入。
重点作家として、横尾忠則の作品のポスター、版画のほとんどを買った。ペインティングも購入し、自画像をできるだけ収集している。村上華岳も購入。地元作家として、横尾さんと村上さんを中心として重点作家として購入している。
7)2010年度・2011年度の作品購入
入館者増による臨時的なご祝儀購入
兵庫県ゆかりの現代作家の作品を中心に
(配布資料 ART RAMBLE Vol.28と32を参考にしてほしい)
この2年間で多くの作品を購入できた理由は、特別展で入場者が多かったこと。平成21年度はだまし絵展、22年度は水木しげる展。ともに来場者が多く、かなりの収益があがったので購入できた。
赤川コレクションは、日系ブラジル人の方による、ブラジル系日系人作家の作品。その大口の寄贈があった。移民を送り出して来た神戸港がある兵庫県の美術館へ寄贈し、ブラジルへ渡った日本人の活躍を、美術を通して日本の人たちに紹介したいという赤川氏の強い願いがあった。日本でよく知られている大岩オスカールなども含まれていた。
番外)美術館にアートを贈る会について
第2弾寄贈プロジェクトの栗田宏一さんとは知り合いで、和歌山県立近代美術館へ寄贈すると聞き少し寄付させていただいた。個人的には、いい作家の作品を入れるのはよいことだと思う。
美術館側とすれば「ありがとう」という以外何ものでもない。
美術館にコレクションされる基準は、美術館としてはたくさん見て目を鍛えて基準をつくっていくしかない。美術品は100年、200年もつものという発想で考えている。
★ 懇親会
大川をのぞむ中庭で和やかに懇親会を開催した。
なかなか普通は聞けない購入の裏話なども聞かせていただきました。
出原様、ありがとうございました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございます。(記録・奥村)