美術館にアートを贈る会・トークセッション
「20年の活動をせんぶ見せます」
(前半−1の続き)
第2弾寄贈プロジェクト
和歌山近美の展覧会でお買い物をしませんか(八木)
レクチャーシリーズを6回行い、この会の活動の考え方を広め共有していった。
その中で、第5回の和歌山県近美の浜田さんの熱いプレゼンテーションによって、第2弾寄贈プロジェクトが始まることになる。
当時学芸課長だった浜田さんから、そのプレゼンテーション後に思いがけない提案があった。和歌山近美で開催されていた展覧会を見に来ませんか?美術館で買い物をするように、みんなで見に来て、買い物をして、それを美術館に入れてほしいと。
その呼びかけに応じて、美術館に遊びにいくように展覧会を見せてもらいにいって、展覧会を見た後でどれがいいかみんなで相談して、それを寄贈しましょうとなった。
そのときの参加者は会のメンバーだけでなく、地元の和歌山のwakasのメンバーもいっしょになって、別室に入って、全員がひとことずつ自分の考えを述べ、その上で投票し、1回で栗田宏一さんの作品を寄贈することになった。
1回目の藤本さんの作品は、アーコートギャラリーでの出品作だったが、以降は、アートコートギャラリーが間にいっさい入らない作家をこころがけている。
栗田さんの作品はみなさん幸せな気持ちになりながら、ご協力くださった、会としてはのぞましい形で発展しはじめた時期だと思う。
第3弾寄贈プロジェクト
滋賀近美の学芸員からの緊急コールから始まる(八木)
2回の寄贈活動を見ておられた、滋賀近美の学芸課長員だった山本惇夫さんから、助けてほしいという相談があった。
伊庭靖子さんが当時、神奈川県立近代美術館で個展をされて、そのときに滋賀近美の委託預かり作品で、滋賀近美のコレクションの人間国宝だった陶芸家の清水卯一さんの作品を描いた伊庭さんの作品3点があった。
伊庭さんは非常にファンの多い作家で、伊庭さんの作品を入手したいという人がたくさんおられて、海外からも委託であれば買えるだろうという問い合わせがあったりして、学芸員だった山本さんとしては、せっかく滋賀近美のコレクションをもとにして描いてもらった作品(山本さんご自身が企画された4人の作家のグループ展の出品作でもあった。)が、美術館から出ていってしまうということはたいへん残念だし、美術館としても大きな損失になる。なんとかコレクションに迎え入れたい。そのときになにができるかと考えたときにご相談があった。学芸員さんからの緊急コールということもあり、受けよう、ぜひ力になろう、という形で始まったのが第3弾である。
第4弾寄贈プロジェクト
初めてのコミッションワークの取り組み(八木)
藤巻さんが伊丹の美術館の学芸員をされていて、当会の活動を知って、相談があった
作家今村源さんの2006年の個展から2点預かったままになっている作品がある。それをなんとかひとつでも、収蔵になれば美術館としても、そして作家としてもよいことではないかという相談が、藤巻さんからあった。
そのとき、預かりになっている2点の作品は、今村さんにしたら、自分の手元を離れて美術館にずっと置いてある作品なので、それらは作家の今村さんから美術館に寄贈するので、それらとは別に、新しい作品をつくってみたい、という申し出が今村さんからあった。今村さんの思いがけない提案から、その新作を寄贈する方向に動き出した。
常設で彫刻作品が置かれている美術館なので、新しい作品をできれば常設で置ける場所を見つけたいとのことで今村さん自身が自分で良い場所を見つけてくれた。今村さんの作品はふわっと浮いたような作品なので、展示室への階段の中空に設置したい。今村さん自身がドローイングを描いて見せてくださったり、制作過程を見せてもらうためにスタジオ訪問をしたりした。これは私たちの会で初めてのコミッションワーク、発注制作になった。
この時期になると、美術館側の受け入れは、わりと柔軟で、実績のある会からの寄贈ということで、受け入れ側のへの慎重を期する遠慮は不要になっていて、良い形で美術館と活動ができた。
キャプションに寄贈者名として美術館にアートを贈る会が入っている。寄贈した1年間は寄贈者全員の名前が記載されていた。
第5弾寄贈プロジェクト
3人の学芸員から5人の作家提案
美術館側の私たちの会に対する信頼度はさらに深くなって、第5弾に入ると、兵庫県立美術館の現代美術を担当する学芸員さん3人が、兵庫県立美術館として収蔵したい作家5人について丁寧なプレゼンをしてくださり、さらに美術館で実際に5人の作家の作品を見せていただく機会もつくってくださった。
5人の中から会として児玉靖枝さんを選び、その後、児玉さんの作品でいくつもあるシリーズから最新作まで展示して、会員で作品を選ぶ会を開催。3点を選んだ。児玉さんに自分の創作について話してもらう機会もつくった。
クラウドファンディングに初めてトライした。よりたくさんの方の協力を求め、よりパブリックな活動にするため、ネット上の募金活動にトライしてみることにした。
まだCFが一般的でなくて、一度でもやったことのある人は問題なかったが、初めての人は少しハードルが高い人もいた。この仕組みで協力者は全国に広がった。
第6弾に向けて
新規寄贈プロジェクトのためのトークディスカッションや新規寄贈プロジェクトのためのスタディを行う。
1回目は、篠さんに、コレクションの意義と市民の声の重要性ついて。
2回目は、中塚さんに、関西の美術館のコレクションについて。
3回目は、会員から作家提案を受けた。
4回目に、その中から、山村幸則さんの《芦屋体操第一、第二》を選んだ。
パフォーマンスが画期的(加藤)
体操というパフォーマンス的なものを寄贈できないか、画期的な発想だと思った。当時国立国際美術館で、パフォーマンスをコレクションするというのをやり始めたところだった。
第6弾寄贈プロジェクト
作家リサーチとして芦屋美博の大槻さんも招いて山村さんの作品世界を学ぶところから始めた。
芦屋神社で、キックオフイベントを開催。芦屋の撮影ポイントを歩くツアーも2回開催。
クラウドファンディングも実施し、募金目標金額を達成して、山村さんに支払いは済んでいる。現在は美術館の本年度の収集委員会に諮ってもらう準備を進めている。
美術館訪問シリーズ
2009年から始め、現在も継続中。
かなり上質で非常に付加価値の高い美術館訪問が続いている。
(後半に続く)