美術館にアートを贈る会

アートが大好きな私たちは、
市民と美術館の新しい関係の構築をめざしています。

郡裕美氏の講演「Between Art and Architecture」(11月10日) 要旨

2023-12-14 11:43:30 | Weblog

講演「Between Art and Architecture」
講師:郡裕美氏(建築家/美術家)
日時:2023年11月10日(金)18:20〜19:20
会場:アートコートギャラリー
参加者:25名

毎年総会時には、ゲストをお招きして講演をお願いしています。
今年は、建築家/美術家の郡裕美氏をお招きしてご講演をいただきました。

<ご講演(ポイント)>

*Between Art and Architecture

私は建築家と美術家、両方の活動をしています。私にとっては、アートと建築の間にはほとんど距離がないのですが、いい機会なのでその2つについて考えてみたいなと思って、こういうタイトルにしました。

建築は、建物を建てることによって今まで見えなかった景色が見えたりします。
アートも、作品を通してそこにあるけれども気づかないことを目に見えるようにしてくれます。

アートは、人々の想像力に働きかけて、世界の見え方を変えます。
建築も、人々の想像力に働きかけて、世界の見え方を変えます。
アートと建築、主語を入れ替えてもほとんど同じように言えるのではないでしょうか。

*閉じていない作品

閉じている円と閉じていない円、このふたつの円はどちらが完璧だと思いますか。完璧というと語弊があるかもしれませんが、どちらが作品として力があるでしょうか。
閉じている円は完璧で、そこに鑑賞者が介入する隙はありません。しかし、閉じていない円の方は、見た人の心の中でそれを閉じようとする想像力が動き出します。人の心に語りかけるという意味では、閉じていない円、つまり余白のある作品の方が力があるのではないでしょうか。

建築やアートというのは、見た人の気持ちと呼応しあってはじめて成り立つもの、私はそんなことを考えて作品をつくっているような気がします。

私の愛読書である岡倉天心「茶の本」第3章に載っている文章をご紹介します。
「何物かを表わさずにおくところに、見る者はその考えを完成する機会を与えられる。かようにして大傑作は人の心を強く引きつけてついには人が実際に作品の一部となるように思われる。」
このように私の作品や建築を体験した人がそれぞれが想像力を働かせて、心の中で作品と一体化してくれるといいなと思っています。


<世界各地で実現した作品の紹介>

アート作品では、銀座メゾンエルメス、ベルリンの廃墟の教会、ベルリンの地下の貯水場、クリチバのオスカーニーマイヤー美術館などでのインスタレーション作品をご紹介いただきました。

https://www.studio-myu.com/art/works/works-data-folder/machina.html

https://www.studio-myu.com/art/works/works-data-folder/haruka.html

「光や音、そのほか最小限の要素を施すことで、場の見え方を変えることを大切にしています。鑑賞者の想像力に語りかけ、そこにあるけれど見えなくなっているもの(例えば光、影、場の記憶など)に気づくきっかけを作りたい」とのこと。

 

建築作品では、住宅の設計事例をいくつかご紹介いただきました。

光と影を楽しむ家、歩みを進めるたびに様々な階段が見えることで住人の動きを誘発する楽しい集合住宅、隣家との狭い隙間も有効に使った家など、わくわくするような家、居心地のよい家を、施主との対話を重ねて設計されています。「建築は人に新しい視点を与え、人の心を育てるもの、建築は、人間と自然をつなげる力がある」とのこと。

https://www.studio-myu.com/architecture/archdeta/hos.html


https://www.studio-myu.com/architecture/archdeta/hayama.html

そこに住む人の心に語りかけ、想像力を育てるような”余白” のある建築を作るのが建築家の仕事だとおっしゃっていました。

 

重要伝統的建造物群保存地区の町並みの修景、歴史的な建築の修復保存についてもお話いただきました。
古民家をただリノベするということではなく、道と建物、町と中庭との関係を修復するなど、空間の関係性を再生するように考え、例えば昭和の改装で看板建築になり閉鎖的だったファサードを、縦格子の透ける「境界」にすることで、町と建物の風通しの良い関係が修復され、町と生活のつながりも再生されています。


https://www.studio-myu.com/architecture/archdeta/inae.html


<事務局より>

閉じていない円のような作品を作ることで、アートの場合は見る人が、建築の場合は住む人の心が動いて、その余白を埋めていくものだと思いました。

ここ数年、色々と新しいことに挑戦されていて、2023年秋に行われた箕面アートウォーク参加作品も2024年初頭まで、箕面龍安寺に展示されているということ。まだまだお話をお伺いしたいくらいでした。これからの展開も楽しみにしています。私どもとも末長くつきあいください。ご講演ありがとうございました。


詳しい作品の内容は、著書「夢見る力」と「居心地の良さ」に書かれています。

ウェブサイトにおいても紹介されています。

アート作品紹介
https://www.yumikori.com

建築作品紹介
https://www.studio-myu.com

郡裕美氏 プロフィール

建築設計と並行して世界各地でアート活動を行う。作品を通して空間の見え方を変え、固定概念を一蹴することを企てる。ベルリンの地下貯水場跡、ブラジルの旧砂糖工場跡などでの、場の記憶に呼応するインスタレーションのほか、銀座メゾンエルメス 、ジャパンソサエティ(ニューヨーク)、オスカーニーマイヤー美術館(ブラジル)などでサイトスペシフィックな作品の制作をしてきた。
京都府立大学を卒業後、1995年コロンビア大学建築学部修士課程終了1996年コロンビア大学准教授に就任。以来、イエール大学、名古屋工業大学、東京理科大など日米両国で建築教育に携わる。
1991年スタジオ宙一級建築士事務所設立。住宅や公共施設、古民家再生や町並みデザインも手がける。
2016年より大阪工業大学 空間デザイン学科教授。
主な受賞:2004年文化庁新進芸術家海外派遣(2004)、ARCASIAアジア建築家評議会金賞受賞(2011)、JIA環境建築賞(2013)、建築学会賞(業績, 2015)など。

 


2023 総会・講演会・懇親会を開催しました。

2023-11-20 16:10:24 | Weblog

2023 総会・講演会・懇親会

日時:2023年11月10日(金)18:00〜20:30
会場:アートコートギャラリー
参加者:25名

1 総会

  • 新副理事長の就任
    加藤義夫氏(宝塚市立文化芸術センター館長)が就任。

  • 第6弾寄贈プロジェクト「山村幸則さんの作品を美術館に贈ろう」の報告
    ・山村作品内訳(映像作品、写真作品)
    ・第6弾寄贈プロジェクト経過(2022.4.24キックオフ〜2023.10.11募金目標金額達成)
    ・募金の概要(支援金額と支出予定)
    ・クラウドファンディング概要(Motion Gallery)
    ・リターン内容
    ・今後の予定

   多くの方々のご支援とご協力のおかげで募金目標金額を達成することができましたことを心より御礼申し上げます。
   今後は寄贈に向けて具体的な手続きを進めてまいります。
   引き続き応援お願いいたします。

  • 2023年の活動報告
     1/22 藤田美術館訪問
     2/18 滋賀県立美術館訪問
     4/8  山村幸則写真作品展示+体操@芦屋神社
     4/29 宝塚市立文化芸術センター訪問
     5/25 サポート会員特別プログラム
       名和晃平スタジオ「Sandwich」訪問
     6/10 芦屋市立美術博物館訪問
    (今後)
     11/12 姫路市立美術館訪問

2 講演会「Between Art and Architecture」
  ゲスト:建築家/美術家 郡裕美氏

「アートは、人々の想像力に働きかけて世界の見え方を変える。建築も人の想像力に働きかけて世界の見え方を変える。アートと建築を入れ替えてもほとんど同じように、言えるのではないか」という話から始まり、郡さんのアート作品や建築作品の事例を詳しくご紹介いただきました。

  (ご講演の要旨は改めてアップいたします)

3 懇親会

なかなかリアルに集まることができなかった期間をようやく過ぎて、対面で普通に交流できるようになってきました。

来年は、当会発足から20年を迎えます。ゆっくりと活動を続けている会ですが、佐野理事長の挨拶にもあったように、20年続けてこられたことは幸せな活動であったことだと思います。これからも美術館と市民の相互関係をアートを通して、より良質により深くより楽しく展開してまいりたく、よろしくお願い申し上げます。

 


建築家/美術家 郡裕美さんの作品が箕面で公開されています。

2023-11-15 14:36:16 | Weblog

先日の総会・講演会において、ご講演いただいた郡裕美さんよりの追加情報です。
郡さんのインスタレーション《EVOCATION》の箕面・瀧安寺での公開が延長されました。

_______

(郡さんより)

11月3日で会期が終わった箕面の森アートウォークで作った、2018年の台風で大破し撤去された瀧安寺の庫裡の記憶をカタチにするインスタレーション:EVOCATION の公開延長が決定しました!

失われた元禄時代の建物の輪郭を白糸で縄張りし、寺の台所である庫裡の象徴であるのかまどの上に越屋根の形の中に入り、赤い炎のようなキラキラに包まれ、空を見上げれば、かつてそこにあった大地と空の繋がりを感じることができます。

箕面 瀧安寺は7世紀に起源をもち、庫裡は1699年に建てられた由緒ある寺です。
境内の武田五一の設計した鳳凰閣(1919年竣工)とともに特別公開されてますので、ぜひ、お出かけください。
(武田五一は宇治の平等院の修復を担当していたらしく、その鳳凰殿がふわりと不時着したように、本体の構造とわざと軸がずれてる不思議なデザインです!)

なんと、客殿の右手前に設置した「失われた記憶の空間を表す私の作品」と、客殿の左奥に武田五一が作った「極楽浄土を表す空間」が対照的にあることに気がつきました! お時間許せば、箕面の紅葉を楽しむついでに、ぜひ、おいでいただくよう、会員の方、お知り合いの方などにお知らせいただければ幸いです。

■龍安寺特別拝観:客殿、鳳凰閣(国登録有形文化財)、枯山水
■拝観日時:11月11日(土) 〜 12月3日(日) 月曜休館
■拝観料金:一般…500円/小中高生…300円


新副理事長の就任

2023-11-11 17:16:02 | Weblog

11月10日開催の美術館にアートを贈る会の総会において、加藤義夫さんが新しい副理事長に就任されました。

前副理事長の井上雄次さんは、理事として活動を見守ってくださいます。

今後とも当会の活動をよろしくお願い申し上げます。

 


第4弾寄贈プロジェクトの作家、今村源さんの展覧会が水戸芸術館で開催されます

2023-10-27 15:11:45 | Weblog

当会の第4弾寄贈プロジェクトの作家、今村源さんの展覧会が水戸芸術館で開催されます。
ご案内させていただきます。

「今村源 遅れるものの行方」
Imamura Hajime: The Whereabouts of the Late
開催日:2023年11月3日(金・祝)~2024年 1月28日(日)
場 所:水戸芸術館 現代美術ギャラリー、エントランスホール

https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5251.html

(HPより)
今村源は、普段、気にも留めないありふれたものに、少しの隙間を加える、あるいは天地を入れ替えたり裏返したりすることで、ユーモラスな造形でありつつも、その軽く透明感のあるイメージから一転、日常と表裏一体にある深遠な世界を観る人に想起させる作風で広く知られています。ボール紙、発泡スチロール、石膏、針金やビニールなど、およそ彫刻らしからぬ軽い素材で、浮遊感溢れる「彫刻」を制作してきた今村の作品の根源には、彼が関心を寄せる森の地下に菌糸を張り巡らし、ときおり地上に姿を顕すキノコの世界があります。人間には見えない世界で、しかし確実に世界と共生し、世界を支えている菌類へと向けられた今村の思索は、私(個)を超えて連綿と続く生命の営みへと広がっていきました。本展は、1980年代前半より京都を拠点に制作活動をスタートさせ、いずれにも寄らない独自の哲学的作風で早くから注目を集めてきた現代美術家・今村源の10年ぶりとなる美術館の個展となります。