ヘコまされた被害者&その家族と不登校児童・生徒&その家族を盛り上げる委員会弁護士の日記

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『犯罪被害補償を求める会』の主張

2018年07月06日 20時28分54秒 | 相続
犯罪被害者に政治が手を差し伸べるために 

1、私達は2002年から署名運動や地方自治体への陳情をし、「犯罪被害者等基本法」制定に期待して2008(平成20)年まで、6年間待ちましたが、苦しい生活を強いられた被害者には遡及適用されませんでした。今後永久に補償は無いというのが皆の不安と不満です。

①私たちの置かれているこの状況は、1985年の国連総会決議(40/34)「犯罪及び権力濫用の被害者のための正義に関する基本原則宣言」(国連人権宣言)(諸澤英道訳)の内容と大きくかけ離れています。国連決議では全国的な基金を創設し、強化し、拡充することと、必要な場合にはその他の基金を創設して保障することを求めています。ヨーロッパではそれぞれ工夫した制度がつくられています。

②わが国でも、平成17(2005)年の第一回犯罪被害者等基本計画の「経済的支援制度に関する検討会」では「犯給法」が遡及出来ないことにより、「公的な救済の対象にならない犯罪被害者等」で、「何らかの救済の手を差し伸べないと基本法の趣旨を全うできないと思われる特別の理由がある者に対しては、社会の連帯共助の精神に基づき、『民間の浄財による基金』において給付を行うような仕組みを作りこの財源に充てる」ことが提言されていますが、これが実行されていません。私たちが「過去の被害者にも補償を」という合言葉で運動を始めた理由はここにあります。

③私たちは現在「民事裁判の債権を国が立替払いし、加害者に求償する制度」を求めています。この場合、国の負担があまり高額とならないよう、現行の「自動車損害賠償責任保険政府保償事業(無保険車、ひき逃げなどの被害者に自賠責相当の補償をする昭和30年7月29日法律第97号)」(現行・死亡3000万円・重度後遺4000万円)を現在実行されている例として準用することもやむをえないと考えています。
*兵庫県の明石市では、300万円を限度として、債権を市が受取り立替払いの制度を設けております。

2、平成20年12月から「損害賠償命令制度」が制定されました。しかし、相手が無資力あるいは資産を隠した場合は以前と変わらず、補償を受けることが出来ません。
「損害賠償命令制度」を実効あるものにするためにも、上記③の制度が必要です。

3、損害賠償の債権を得ても、加害者が10年間履行しない場合は消滅時効にかかり、再び裁判に訴え民亊裁判と同じ印紙代と弁護士費用を支払わなければなりません。
*これについても明石市では印紙代の助成をしています。
  *多くの被害者は加害者に対する民亊債権を持ち、又消滅時効の危惧を抱え再提訴を準備しています。
  *財源を云々するならば赤ちゃんでも消費税を払っています。税金はそのためにこそ納めているのです。
  *共済では年間1000円余りの掛け金で、相手死亡の場合一億円の補償の例もあります。

 以上が『過去の被害者』としての私たちの要望です。
 以下は犯罪被害補償を求める会として、今後我が国の犯罪被害補償制度を根本的に改革して行くための基本になる考え方です。

<犯罪被害者への施策は極めて不十分・不備>
1、犯罪被害者への基本的な支援体制が出来ていません。制度が不徹底で、毎年の犯罪被害者の数と犯給金申請者の数と比較してみていただけば、被害者でもわずかしか申請していないことが分かります。「犯罪被害白書」でみても、平成28年度の殺人895人に加えて暴行・傷害事件は56、178件、それに関連した傷害致死79件となっており、犯給金申請数と比較して、大きな差があります。
申請主義の害悪が犯罪被害者支援の分野にも及んでいるのだと思います。加害者から怖い目に遭い、警察や検察の取り調べで不愉快な想いをしている被害者が、自ら申請することが出来ないままに放置されていることも大きな原因だと考えます。

①犯罪被害者等給付金の計算基礎が「自賠責」型の生涯賃金になっていません。労災保険の形式をとっていますから稼働収入のない者は保障が極端に少額です。(基礎単価も低額です)就労可能年数や生涯賃金を基礎にしたものに改める必要があります。
同じ人間の命の代価であり、「自賠責」と同じ計算基礎で同じ金額が支給されるように改めるべきです。

②犯罪被害者等給付金は被害者の生活保障を名目に作られたのに、刑事事件で被害者に「過失」や「過剰防衛」ありと(見られたら)、給付金は3分の2、3分の1、と減額査定されます。これは生活保障の名に背きます。刑罰的発想が尾を引いているこのような「査定」はやめるべきです。

2、このような施策の不十分さや偏りは現在の犯罪被害者支援の実務が、国家・地方公安委員会、警察庁長官官房給与厚生課の職務となっているところに原因があると考えられます。
自由民主党司法制度調査会のPTも犯罪被害者等の支援を専門に担当する組織を作ることを提言しています。日弁連も、2017年の人権擁護大会の決議で、“犯罪被害者庁”の創設を提言しています。
犯罪被害者の発生と同時に、被害者の権利を認識し、独立した責任を果たせる機関が始動して、基本法で定めた犯罪被害者支援の実務を遂行するようにすべきです。

3、犯罪被害者等基本法が制定され12年が経過しました。国の責務、地方自治体の責務、という積極的な被害者支援の提起はされていますが、犯罪被害白書に見られる通りそれぞれのやるべきことは全く進んで居ません。第1項で指摘したように、本来国の機関がやるべき事務が「犯罪被害支援センター」という人員も予算も国の責任で確保されていない組織に丸投げされ、重要な仕事が責任の問えない非正規の人達とボランティアに任されている現状を改めるべきです。

4、地方自治体の支援条例作成も大かたは、国から指示が来たから作成したというのが実情で、作成した自治体は犯罪多発の東京6%、大阪で10%に過ぎません。条例をもった自治体の担当者も配置されたところは少なく、大阪の摂津市、兵庫の明石市のように首長に熱意のある都市で進んでいるに過ぎないのが実態です。

5、加害者を逮捕し、裁き、刑罰を加えるのは国家としての治安維持の責務です。誠実に生きていて(働いていて)被害を加えられた被害者が、元の生活に戻るために経済的補償を受けるのは、国民としての権利です。国民が不当な暴力により、命を失い、重い障害を負った場合、肉体的・精神的苦痛を慰める補償を行うのは福祉をうたう憲法をもった法治国家としての当然の義務であると考えます。

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