アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

「オウムからの帰還」を読み、帰らない級友を想う

2012年10月23日 | 生活
オウムからの帰還」を書いた高橋英利さんは、私とほぼ同年齢の人だが、この人がオウムに出家したのは1994年春ということで、考えてみればずいぶん遅い。

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遅いというのは二つの意味があって、まずひとつは、1994年というともう我々にとっては結婚もして就職もして家も買って、またろうも生まれて子育て奮闘真っ最中という時期だから、その年に「まだ揺れる青春真っ最中?」ということ。もうひとつは、そのころすでにオウムが犯罪集団ではないかということが巷で言われるようになっていたのではないかということ。

私とよしぞうは同じ学科に所属していたのだが、それは同じ学年の人があと三人しかいない小さな学科で、その中からひとり、オウムに出家してしまった人がいる。彼がなぜオウムに取り込まれてしまったのか、そしてなぜ今に至るまで帰ってこないのかということはずっとどこかにひっかかっており、なのでこの本はものすごく彼と重なるところが多く一気に読んでしまった。

彼がいっていた「ハルマゲドンが来るので急がないと(=出家)いけない」というような、オウムの外側にいる人からすれば荒唐無稽に聞こえる言葉のいくつかも、この本を読んだらそれが彼らにどう受け止められていたかがずいぶん詳しくわかった。

論理的思考能力もあり、とてもまじめで、勉学にも優れている、そして科学についてもいろんな面からよく知っているはずの学生が、どういう経路をたどって、戻りようなくオウムに取り込まれてしまったのか、ということは、ずっと疑問だったが、この本を読むとどういう人がそうなりやすいのか、どんな出来事が流れを支えると、とまらずにそちらへいってしまうのかということもかなり見えてきた気がする。

彼と高橋さんはすごく似ている部分があると思う。人生とは?? 自分は何をなすべきか?? についてとことん考えてしまうところとか。

けれど、高橋さんは帰還して、彼は帰ってこなかった(現在はアレフの幹部らしい)。その違いはどこから生まれたのか。

まず非常に重要なことは、サリンの事件があったときまでに、高橋さんはまだ出家して一年くらいで日が浅かったということ。日が浅ければ傷も浅い。「傷」という表現が適当かどうかわからないが、要するに、世間(現世)での常識をどのくらい保っているかどうかが違うと思う。

そして、ふつう日が浅ければ、出家信者としてもぺーぺー、駆け出しであり、行動の自由が少なく、脱出するきっかけもチャンスもない。周囲から「揺れている(オウムのあり方に疑問を持っている)」と勘ぐられたら拷問まがいの「治療」をされるおそれもある(高橋さんも電気にかけられたりはしたがそれ以上追及されなかった)。

高橋さんの場合は、まず専門分野(天文)をみこまれて、駆け出し信者なのに重要な「ワーク(オウムの中で分担する職種)」を与えられた。なんと、占星術ソフトの開発である。これは、超重要ミッションであったし、麻原と接する機会も破格に多かった。

「ぼくたちのつくっていた占星術ソフトは、市販のさまざまな本を参考にしてつくりあげたもので、出生の年月日・時間と出世居場所の東経・北緯までを特定してホロスコープを作成するものだった。」
…そんなんで当たるのかどうかたいへん疑わしいが、少なくともそのソフトで麻原のホロスコープを出すととんでもない「星の下」に生まれていて、特徴は(危険であるという部分も含めて)たいへん当たっていたそうである。

さらに高橋さんは、地質学をやっていた経験もあるので「地震占星術」をやるように麻原から特命を受け、1995年の年頭に行われたラジオ放送で、「神戸」に地震が起きるという占いを出した。そのソフトでやったら、神戸の場所(東経・北緯)が出てきたので、地図を見て「神戸」と口に出してしまったのだが、地震学の常識からいって神戸はないだろうと高橋さんは思っていて、とんでもないことを言ってしまったとずいぶん気に病んでいたらしい。しかし実際に…

つまり、高橋さんは大成果を挙げたことになり、さらに開発を進めるために、行動の自由が与えられるなりゆきとなった。資金を持って自分で自動車を運転して、ひとりで東京の本屋街にいくようなことである。高橋さんはそこで、ふだんは入手できない新聞を買って読み漁るなど、ふつうは出家信者ができない情報入手ができることになった。

最後に脱出するときも、見咎められそうになったのを、特命であるといってふりきっている。

そこまでの偶然がかさなって、ようやく抜けられる人がいたのだ…

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6 コメント

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Unknown (なつみかん)
2012-10-23 10:40:14
私も、知り合いの大学の同級生が元オームのJ氏だったり、亡くなったM氏が別の知り合いの大学時代の研究室の先輩で、また亡くなる時に担ぎ込まれた病院に身内が勤めていたりだとかで、いろんな様子を聞いたことがあります。
みんな心にすき間ができるんですかね?そんな時に楽器でも始めてみるのもいいんじゃないのかな?て思ったりします。
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Unknown (nonchan)
2012-10-23 12:36:20
私は、大学オケで一緒にバイオリンを弾いていた後輩がオウムで広報担当になっていました。出家したことは知らなかったので、事件の後、テレビで顔を見たときは衝撃でした。
一緒にバイオリン弾いてたんですよ・・・たぶん楽器じゃダメだったんだわ。
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> なつみかんさんへ (アンダンテ)
2012-10-23 13:07:24
いろんな宗教で、「ハマる」ってことは起きるものですが、オウムの場合はすごい勢いで出家させたので、人的被害が大きかったと思います。手の届かないところに行ってしまうから…それに、人数もかなりのものでしたね。

心の隙間というかなんというか、ハマりやすいタイプや状況はあるようですね。今日の記事では「帰れるか」ということについて書きましたが、「ハマる」ところについても別記事で書いてみたいと思います。
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> nonchanさんへ (アンダンテ)
2012-10-23 13:09:24
楽器じゃダメだったんですね…
確かに、そんなもんじゃ埋まらないと思いますね。もっと、現実世界と自分、他者と自分の距離感があるみたいな感じなのかな。
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Unknown (るっちゃん)
2012-10-23 13:25:14
その本読んでないけど(そしてきっと読まないけど)、結局は「神戸の地震を当てた」って言ってるのかーと思うと、なんかちょっと、「大丈夫か?!本当に抜けてるのか?!」って思ってしまうなー。そんで、そんな話に心を惹かれてしまう人がいなけりゃいいなー、とも・・・。
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> るっちゃんさんへ (アンダンテ)
2012-10-23 14:01:33
いやー、とにかくその占いをさせるプログラムを作るというのが、市販本にあったアルゴリズムとデータをぶちこんで計算できるようにするだけのものですし、本の中でも偶然として、少なくとも麻原の法力(?)とは無関係なものとしてとらえられています。

というか、地震があったときに幹部が「高橋、よくやった」とほめてくれたり、麻原が喜んでいる様子だったので「違和感があった」と書いてあります。脱会を考えるきっかけのうちのひとつでもあったし、具体的に脱会のスキを作る大きな出来事でもあったのでしょう。

実際のところは、たまたま当たったのは偶然(ただ、コンピューターに計算させた結果を読み上げただけであるため、高橋さんが自分の常識を使ってあてずっぽを言ったとしたら言わなかっただろう「神戸」になってしまった)。ハルマゲドンを言いたいから、麻原はこれに限らずいろいろな予言をしていて、数うちゃ当たるというところではないでしょうか。
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