本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

屍者の帝国【映画】

2015年11月02日 | 【映画】


@TOHOシネマズ新宿

伊藤計劃、という作家のことを知ったのは
この映画化の一報でのことです。
デビューして2年でこの世を去った天才SF作家、
ゼロ年代最高の才能とさえ言われている人にとても興味が湧きました。

気になる映画化作品の原作をすぐに手に取ってしまうのが私の悪い癖ですが、
本作は我慢しました。超我慢しましたよ。

あと2作あるんですけど。しかも1作は公開延期ですって。
生殺し状態はまだ続きます・・・。

------------------------------------------------
19世紀末のロンドンでは死体蘇生技術が飛躍的に進歩し、
すでに亡くなった人々を労働力として有効活用していた。
優秀な医学生のジョンは、
内密にイギリス政府が運営するウォルシンガム機関から召集がかかり、
ある秘密の任務を請け負う。
彼は伝説の書物であるヴィクターの手記を求め、
唯一の手掛かりと思われるアフガニスタン奥地へと向かう。
------------------------------------------------

まず、目のつけどころがとても面白いと思います。

SFが苦手な私が、すんなりと物語に入っていけたのは、
ワトソン博士、ヴィクター・フランケンシュタイン等聞いたことのある名前に加え、
人間が死んだら無くなると言われている重量21グラムを題材に、
死者と魂の話、という要素が、終始興味深かった。

原作未読ですが、恐らくはワトソン博士の冒険譚なので、
やはり2時間にまとめるには少々無理があったのではないかな、と思わせる要素が多々あり、
そこは勿体ないとは思いました。

加えて、小説ならばうまくまとめることもできるのかもしれませんが、
ちょっと話を膨らませ過ぎている印象。
もしかしたら、私がSF苦手だからなのかもしれないけど、
そんなに、散りばめなくてもいいのでは、というほどの情報量で、
後半は物語を追うのがちょっときつかったです。

あと、これは後からなるほどと納得したんですが、
作品の雰囲気が、導入部と中盤以降で、ちょっと変わった気がして。
どこがどう変わった、というのは上手く言葉にできないので雰囲気としか言えないんですが。
Amazonで本作レビューを読んでその理由が分かったんですが、
冒頭部分は伊藤氏が、その後は円城氏が、それぞれ自身の言葉で書いているからなんでしょうね。
合作という名目ですが、やはり作品にはそういうのって現われてしまうものだなと。
どちらが良い悪い、ということではなく、やはり違和感はぬぐえませんでした。

とはいえ。

人形、ここでは死体ですが、これを産業に利用して生活する、という発想と、
そこで生まれる、人形・死体についての魂・感情の葛藤、というテーマは面白い。
加えて、恐らく原作と少し登場人物の設定を変えているのではないかと思うのですが、
(wikipedia読んだら、何か微妙に違う気がして。)
でも、小難しい物語に人物の感情が入ることにより、観やすくなっているとは思いました。
無機質な物語が有機的になっている感じ、というのかな。

但し。
私は小難しいSFの設定を理解するのに精一杯なので、映画としては観やすくて良かったけど、
登場人物の感情が表に出ている分、
展開上、少しばかり邪魔だな、無理やりだな、と思うシーンも無くはなくて。
登場人物の人間味が、魅力を半減させている気がして、少し勿体ない気がしました。
この辺は、個人的な好みなのかなあ。原作読んでみた方がいいかなあ。

うーん。迷うぞ。


昨今、アニメ映画がとても多くなっていますが、
結構しっかりとして骨太な作品だった印象です。
本作とシリーズで製作された「虐殺器官」「ハーモニー」も控えており、
個人的には凄く楽しみです。
(一番見たかった「虐殺器官」が、製作会社倒産により公開延期になっているのが不安だけど・・・。)

ちょっとでも興味があれば、観ても損はない作品だと思います。
せっかくならば、劇場で。

バクマン。【映画】

2015年11月01日 | 【映画】


@新宿ピカデリー

原作は読んでいません。
漫画家になるためのサクセスストーリー、てのは分かっていたので、
結末は読める気がして敬遠していました。

でも、本作は、王道ながらも、
1本の映画として、とても面白かったです。

------------------------------------------------
優れた画力を持ちながら将来の展望もなく
毎日を過ごしていた高校生の真城最高(佐藤健)は、
漫画原作家を志す高木秋人(神木隆之介)から
一緒に漫画家になろうと誘われる。
当初は拒否していたものの
声優志望のクラスメート亜豆美保への恋心をきっかけに、
最高はプロの漫画家になることを決意。
コンビを組んだ最高と秋人は週刊少年ジャンプ連載を目標に日々奮闘するが……。
------------------------------------------------


「モテキ」が余りハマらなかった私にとって
大根監督はちょっとどうだろうと不安でしたが、
王道のストーリーに、特殊な演出を加えるやり方はとても上手くて、
全編飽きずに観れました。


奇をてらっている、と言えなくもないけど、
この位ポップな感じも、個人的には好き。
印象としては、曽利文彦監督の「ピンポン」を観た時の感覚に似てました。
作風は特に似ているわけではないんだけれど。


ただ、演出としては悪くないんだけど、
音楽とか映像の斬新さをアピールしたいがために、
各所、ちょっと長いかなあ、と思うことがあったのが残念。
筆使った戦い表現のシーンとか、悪くないのに、長回しが過ぎた気がしました。勿体ない。
ちなみに音楽について追記しておくと、主題歌のサカナクション最高でした。
他も映画音楽としてBGM類すべて作品の雰囲気と合ってました。
オシャレに、スマートに、でも泥臭い要素も残しつつ、ていう感じ。


俳優陣に関しては、逆じゃないか、という話も出ているようですが、
鑑賞後は、これで間違っていないと実感します。
ただ、主演の佐藤健は、悪くはないんだけど所謂"普通"の演技力なので、
周りを実力派で固めて来た分、ちょっと可哀想だったかも。
でも彼にはそれを補って余りあるビジュアルと華があるから、作品として成立させる力がありました。

固められた脇、すなわち、神木隆之介、山田孝之、クドカン、の他、
新井浩文、桐谷健太、皆川猿時、リリー・フランキー、誰をとってもナイスキャストでしたが、
やはり特筆すべきは、染谷将太でしょう。最高でした。あますところなく魅力全開。

話題の人を登用するのは仕方ないんだと思うけど、
しっかりと練られたキャスティングで臨む布陣は、
一瞬の隙も無い程に、作品にハマるものだなと実感しました。


総じて素晴らしい出来だったので、あまりつつくところがないです。
物語的なカタルシスもあるし、爽快感も感じられる。
ちょっと狙いすぎな感じはするけど、このくらいならご愛敬です。
万人受けするエンターテインメント映画です。
迷ったら、これを選んで正解だと思います。