本日、快晴。

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誰よりも狙われた男【映画】

2014年10月30日 | 【映画】


@新宿武蔵野館

名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作です。
(遺作は「ハンガー・ゲーム」の最終章とのこと。そんなのも出てんだね。)

素行は知りませんが、彼の俳優としての実力は、
外国人の私から見ても圧倒されるものがありました。
私の初見は「ブギーナイツ」ですが、
当時名前は見ていなくてもその存在感だけは覚えており、
知名度が現在まで上がってから「M;I-3」とか「その土曜日、7時58分」見てビビりました。
んー、でもやっぱり「カポーティ」だけは見ておかないと
彼のことを語ってはいけない気がする。

近日中、早急に見なくては。


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ドイツ、ハンブルク。
諜報機関でテロ対策チームの指揮を執るバッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、
イッサというイスラム過激派に関わりがあるといわれる若い密入国者をマークする。
人権団体の弁護士アナベル(レイチェル・マクアダムス)を介して
銀行家ブルー(ウィレム・デフォー)との接触をもくろむ彼を、
あえて拘束せずに監視するバッハマン。
イッサの動向を追い掛けることで
テロ資金源となっている人物にたどり着こうと考える彼だったが、
思いも寄らない出来事が次々と降り掛かってくる。
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音響が静かで、途中寝落ちそうになったのはさておき(おい)。



タイトルから、若干のオチを予想していた私と、
"CIA"でピンと来て、ああはいはい、とラストを見ていた相方。

ビックリするようなオチではありませんでしたが、
その演出技法や俳優陣の演技などにより、ラストの衝撃度は高いと思います
目新しい展開ではないんですが、非常に後味が悪い。

主観の転換、と言いますか、
バッハマン目線でなければもっと複雑に見えて、
最後の展開の衝撃度も、より上がったかも、と思うと少し物足りなくなくもないですが・・・。


要は(ネタバレ覚悟で言うと)、
「誰よりも狙われた」のは誰か、ということですよね。


とはいえ。
オチ抜きにしても、描写は細かく丁寧だし、
不穏な緊張感の中で繰り広げられる心理戦は見事。
話の筋もしっかり練られていて、配分とかバランスも良かったです。


登場人物が多いので、早めに相関関係を理解してないとツライ、というのが難点ですが、
欧米人メインなので、比較的見た目で区別も付けやすいかなと。

(私は主にアジア映画(除:日本)において、これがニガテなので・・・。)

いやはや、面白かったです。


外国の作品だと、俳優の演技についてはなかなか評価が難しいですが、
フィリップ・シーモア・ホフマンなしには、本作の空気感は成立しないような気がしました。
派手さは無く、緊迫したシーンが続くため、
観客が飽きる可能性があるところを、存在感だけできちっと締めてくるんですよね、この人。

それだけだと、重くて疲れる映画になるのだけど、
レイチェル・マクアダムス(「シャーロック・ホームズ」のアイリーン・アドラーだったんですね。)や、
イッサ役の俳優さん(すみません、初めてみる俳優さんでしたが。)の
純粋さにじみ出る演技が、いい意味でアクセントになっていたように思います。

最後のシーンは、何と言うか、もう圧巻ですね。
本作以降、フィリップ・シーモア・ホフマンの新しい演技が見られないというのが残念で仕方ないです。


そして、監督のアントン・コービン氏。

ロックバンドのフォトグラファーとしてキャリアをスタートさせたそうで、
なるほど、写真家ゆえの単調な映像・演出かと納得。
でも最終的には、この映画にはこの手法が合っているのだとも納得。
ラスト間際まで、ずーっと同じテンションで物語が進むからこそ、最後の1シーンが活きてくる。
話の筋もよく出来ていますが、監督も狙ってやっているんでしょう。巧いです。



高評価な原作を、丁寧に再現することにより、
実写映画化は、必ずしもマイナスにならない。

今の日本映画界において由々しき問題を
しっかりカタチで見せてくれる、という意味でも
良作であることは間違いないです。
(スタッフの実力の差、とか言われてしまうと元も子もないけどねー・・・。)

いやしかしまあ、久々に骨のある映画を見ました。
オススメです。是非とも劇場で見てください。



余談ですが、11月からは個人的期待作の公開が目白押しなのですが、
Yahooレビューで既に何作か不安にはなってきてます・・・。
せめて、この映画が裏切らないでくれたことは、救いだなあ。

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