こんばんは
この週末は娘の誕生日を祝うことができて、大変ありがたいと思いました。ケーキが出てきた時には本当に手を叩いて、とても喜んでくれました。とても嬉しく思いました。
今日は午前中に近くのひまわりの写真を撮りに行く予定でしたが、歩いているうちに「お母さんのところに戻る」と言う話になり、結局写真を撮らずに戻ってきました。まぁ、暑いですから・・・。
で・・・北海道に戻ってきて、17℃という気温に「夏はどこへ行ったw」と思ったところです。
さて、本日はフェイスブックなどでも色々書かれておりましたが、がん免疫療法の否定するような記事が色々出ていたようです。がん免疫療法と言っても、臨床研究などを行なっていないものです。
造血幹細胞移植は「免疫療法」としての側面がありますし、腎臓がんやメラノーマなどではLAK療法やがんペプチドを使用した免疫療法などがあります。免疫チェックポイントに関するものもありますしね。
とりあえず朝日新聞の記事を紹介します。
自費診療で高額な治療を提供しているクリニックのウェブサイトでは、治療前後でCT画像を提示して「がんが消えた」と称するなどしています。本当にがんが消えるのならいくらでもお金を出す患者さんもいるでしょう。私も患者さんを紹介したいです。
だ、信頼できるかどうかを検証するためには情報が必要です。科学においてはデータは第三者が検証可能なように論文として発表されますが、こうしたクリニックのウェブサイトでは論文の文献情報が記載されていることは稀です。また、文献情報があっても元の論文を読むと、動物実験や試験管内レベルの話にすぎないことが多いです。
(中略)
治療効果を示したければ治療前後で同じ撮影条件の画像を比較する必要があります。医療従事者が見る論文や学会発表での症例報告で、撮影条件の異なる画像が提示されることはまずありません。しかし、高額な自費診療を提供しているクリニックのウェブサイトではよく見ます。不思議ですね。
情報を吟味した結果、患者さんを積極的に紹介したいと思えるような信頼できる自費診療クリニックはいまのところ一つもありません。
他に、週刊現代で「医師たちが告発。がん免疫療法はインチキだ」と言うのがあるようです。立ち読みしに行きましたが、コンビニでは売り切れでした。内容がわからないのですが、フェイスブックで知った限りでは「まともな内容」だと言うことです。
内容を確認していませんので、少し腫瘍免疫について書いて僕の考えを書かせていただきます。
この記事(血液内科ってどんな診療科ですか?:後半は血液内科の奨め)にも書いていますが、僕が血液内科を選んだのは「腫瘍を相手にする」のに、免疫を知る必要がある。特に腫瘍の撲滅を考えるならば免疫療法を学びたいと思ったからです。
免疫には大きく分けると2つの種類があります。
自然免疫と獲得免疫です。
自然免疫というのは「私じゃない」奴をやっつけるというもので、好中球(細菌)、単球(細菌などに加え、腫瘍も。免疫抑制に働く単球もいます)、NK細胞(私であると証明できないものを処分)があります。
獲得免疫というのは「こいつ敵」と認証されたものを攻撃します。攻撃の主体はB細胞やキラーT細胞(細胞障害性T細胞)などです。
そして免疫のブレーキをかけるグループ(抑制性T細胞、抑制性単球。免疫チェックポイント機構など)があります。
免疫療法には「アクセル」をかけるものとブレーキを外すものがあります。
アクセルをかけるタイプの免疫療法はLAK療法(腎臓がん)やサイトカイン(腎臓がんに対するインターロイキン2など)があります。がんワクチンや樹状細胞療法、最近はやりのCARTなどもアクセルを踏むタイプです。
ブレーキを外すタイプは最近はやりのPD-1阻害薬などです。これも流行りとはいえ、いくつかのがんで効果が示されているだけで、何にでも効果があるとはされていません。むしろ外国の論文では効果がないとされているものもあります。
難しいのですが、それぞれの治療で「臨床研究」として効果があるとされているのは「特定の癌腫」に対して、一部の治療が効果がありそう・・・というレベルです。
日本で臨床研究が難しいのは「同じような患者さん」を集めるのが大変だからだろうと思います。日本はある程度の大きな病院がたくさんありますので、患者さんは分散しています。標準治療ならともかく、治療効果がよくわからない治療を多くの病院が集まって行うということは少ないです。国外である程度承認されているものを輸入して・・・というのはあると思いますが、日本国内でどんどん免疫療法が進むというのはなかなかないのではないかと思います。
大きな病院(大学病院など)で「がんワクチン」や「樹状細胞療法」などを行なっている施設がありますが、これらも臨床研究のレベルです。単独ではなく、おそらくいくつかの施設で行なっているはず(確認したものは10施設以上、北海道から九州まで全国に渡り・・・。怪しいのは単独の自費診療のクリニックだと思います)です。
単独の自費診療のクリニックで臨床研究が行えるほどの患者さんは日本では集まらないと思います。僕が言えるとすると「単独の自費診療クリニック」で、よくわからないものは「あやしい」と思います。
繰り返し書きますが・・・ニボルマブなど海外で「ある種のがん」に有効と判定されて、日本に入ってきて、臨床研究をされたものもあります。臨床研究で有効性が示されれば、一般的には「標準治療(その状況でのベストの治療)」になります。
ただし、ほとんどはそこまで行っていませんので、「効果があるかも?」くらいの状況です。
その治療に意味を持たせられるかは「臨床研究」として行われているかどうかです。臨床研究は事前登録しているものが、前向き試験として意味が出てきます。それは調べればわかりますし、だいたいある程度の規模の病院が集まって実施します(同じプロトコールで)。
全てをインチキとする必要はありませんが、単独の施設は少し疑いの目で見た方が良いと思います。
免疫療法で「少しでも可能性を」と思われている患者さんやご家族には失礼な書き方ですが、もし行うのであれば臨床研究をしている施設で行なっていただきたいとは思っています。それであれば「個人の結果」がよければ何もいうことはありませんし、悪かったとしても全体として何らかの意味が出てきます。
この治療法が同じように標準治療がなくなった患者さんたちに、治療効果(延命など)があるのか。それは費用がいくら程度かかって、それでどの程度の延命効果と、何割の患者さんに有効なのか。特に有効なのは何の腫瘍か・・・などです。
昔、固形癌に対するミニ移植を国立がんセンターで免疫療法としてやっていた時代がありました(僕の学生時代だから2000年頃)。あの時もある種のがんには効果はありそうだが、メ〇〇ーマには全く効かないというような話だったような気がします。けど、この効かない癌はがんペプチドなどの免疫療法は効くと言いますしね〜。
こういうものも数が集まらないと、何の役にも立たないです。これからの進展にもならない。自分の可能性を信じながら、未来の医療の発展に寄与するためにも「臨床研究」として正式に行われている「がん免疫療法」を受けた方が良いのではないかと思っております。多分、臨床研究であれば、その部分だけ持ち出しで、他の公的保険が効く範囲を支払うように求められると思いますし・・・(確認しないとわかりませんが、普通の臨床研究はそうではないかしら・・・)
もちろん、標準治療がなくなったら、うまく共存するための免疫療法以外の方法を模索するというのもありだと思います。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。