おはようございます。
いよいよ今年も終わりに近づいてきました。今年は僕にとっては大変動の年で、何よりも母校から移動して他大学に来たということです。
当初はどうなることかと思いましたが、9ヶ月が経過し新しい職場の一員として普通に仕事ができるようになりました。ありがたい話です。
さて、今日は少しきになる記事がありましたので紹介します。
メディウォッチからです。
https://www.medwatch.jp/?p=24155
1996年から2017年にかけて「医療施設」の状況を見ると、一般病院数は緩やかに減少し「集約化」しているようにも思えるが、人口10万対病床数に大きな変化はなく、十分な「集約化」は進んでいない。医療の質向上のために「再編」や「ダウンサイジング」をより強力に促していく必要がある。また、2005年から17年にかけて一般病院の平均在院日数は短縮したが、病床利用率も低下してしまっている。やはり「ダウンサイジング」などを考える必要があるとともに、「DRG/PPS」の導入などを検討していく必要があるのではないか―。
厚生労働省が12月27日に公表した、2017年の「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」から、こういった状況が伺えます(DRG導入などはメディ・ウォッチの見解です)(厚労省のサイトはこちら)。
(中略)
まず(1)の施設数、(2)の病床数に関しては、「有床診療所の減少が著しい」ことが特筆できます。1996年には全国に2万452施設ありましたが、2017年には7202施設となり、およそ30年で3分の1強(35.2%)に減少しています。直近の医療施設動態調査では、2018年度診療報酬・介護報酬により「減少スピードにややブレーキがかかった」ようにも見え、今後も動向を注目していく必要があります(関連記事はこちらとこちら)。
(中略)
国・公的・社会保険団体を「公」とし、医療法人・個人を「民」とした場合の公民比率を見ると、1996年には施設数ベースで「21.9対78.1」、病床数ベースで「37.9対62.1」でしたが、2017年には施設数ベースで「21.2対78.8」、病床数ベースで「34.6対65.4」となり、「公」の比率が明らかに下がってきています。一般に「公」病院は大規模であり、「施設の減少」よりも「病床数の減少」が大きくなります。「公立病院改革」や「地域医療構想の実現」などに向けて「合併や民間への移譲」などが進んでいることは確実ですが、さらに「閉院」や「ダウンサイジング」がどの程度進んでいるのか、より詳しい分析が期待されます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
(中略)
また、2017年における「人口10万対病床数」を見ると、一般病床では全国平均で703.1ですが、最多の高知県「1109.8」と最少の埼玉県「497.4」では2.2倍の格差があります。ただし、メディ・ウォッチでは「バラつき」はもちろん、「数字そのもの」に着目します。
我が国では、先進諸国に比べ「患者当たりの病床数が多い」と指摘されます。これは「医療従事者1人当たりの患者数が多い」ことを意味し、在院日数の短縮を阻む要因の1つとも指摘されています。さらに、後述するように「医療の質の向上」を阻んでいるとも考えられます。「病床数が多い=アクセスが良い」と考えがちですが、症例の分散による弊害も否定できません。この点、グローバルへルスコンサルティング・ジャパン(GHC)と米国メイヨークリニックやスタンフォード大学との共同研究では、「症例数と医療の質(例えば医療安全)は相関する」ことが明らかになっています。
(図:本文をご参照ください)
したがって1996年から2017年にかけて、一見「大幅に減少している(症例の集約化が進んでいる)」ようにも思えます。しかし、実は2001年の医療法改正で「一般病床」と「療養病床」が区分されており、両者を比較する場合には「2017年の一般病床と療養病床を合算する」必要があるのです。そこで、2017年の「一般病床+療養病床の人口10万対病床数」を見てみると、全国平均では959.8でやや減少しているものの、最多の高知県では2023.8で増加してしまっています(最少は神奈川県の652.1、埼玉県は657.3)。
(中略)
なお、都道府県別に「人口10万対医師数」を見ると、最多は高知県(259.7人)、最少は埼玉県(124.9人)と大きなバラつきのあることが分かります。医師偏在対策を検討している「医師需給分科会」では、この「人口10万対医師数」をベースに、地域人口の構成・地域医師の構成などを加味した「新たな医師偏在指標」をまとめました。それに基づき、全2次医療圏について「医師が相対的に多いのか、少ないのか」を把握することが可能となります(関連記事はこちら)。
(中略)
なお、在院日数コントロールの背景には、我が国の入院料設定も影響していると考えられます。我が国の入院料は、出来高でもDPCでも「1日当たり」で設定されており、「長く入院させると収益が上がる」構造となっています(DPCでは、「●日間の入院が最も利益率が高い」との「解」を見出すことも可能)。
ちなみに都道府県別の平均在院日数(一般病床)を見ると、最長は高知県の21.3日、最短は神奈川県の13.7日となっており、「病床数が多い」→「空床が生じやすい」→「在院日数をコントロールして病床利用率を高める必要がある」→「平均在院日数が長い」という構図が見え隠れしています。
ここで、例えば米国等で導入されている「1入院当たり」の支払い方式(DRG/PPS)にシフトさせていけば、「早期退院のほうが利益率は高くなる」ことは確実なため、不要な在院日数コントロールは相当程度消滅していくと予想されます(もちろんDRG/PPSですべての問題が解決するわけではないが)。DPC制度でも「D方式」(入院初日に入院基本料以外の報酬が全て償還される仕組み)という、DRG/PPSに近い仕組みが導入されていますが、さらなる拡大なども検討していく必要があるかもしれません。
まぁ、DRG方式云々の前に色々解決すべき問題がありますが、ダウンサイジング・病院の集約化は進めるべきだと思います。
ただ、それを行う前にそういう形で病院が成り立つようにしなくてはいけないと思います。
ちなみにDPCで長期入院させれば元が取れるとすれば、療養型のように何もしなければという前提になります。例えば積極的な診療をして、救命のために手を尽くしたりすると赤字になったりします。
よくあるのは内服抗がん剤(分子標的薬)を使用して入院管理をしていると、その薬剤を使用している平均入院日数を超えたあたりで赤字になるように設定されております。
ですので、この記事の根元にあるのは空床が多いために「無駄な入院が多くなる病院」があるので、それをどうにかしましょうということだと思います。実際、OECDの報告もそういう内容になっています(https://www.oecd.org/eco/surveys/Japan-2017-OECD-economic-survey-overview-japanese.pdf)。ただ、一方で積極的な治療を赤字ながらやっている病院もあります。そういう病院が成り立つように(必要な入院で赤字になるのは避けたいところ。そうでなければそのうち人の命をお金で切らざるを得なくなるかもしれません。病院が成り立たなくなれば、より多くの患者さんを救命できなくなるので、赤字の患者さんをきるという話になるかもしれません。・・・まぁ、そんなことは日本の医師の良心がさせないわけですが)
無駄な病床は減らしつつも、それで病院が成り立つような医療制度改革にする必要はありますが、DRGがどうなのか・・・は僕は「?」と思っています。
DRGの1入院あたりの支出というところに注目されていますが、DRGは手術や処置を優先して「ドクターフィー」を確保するのが目的の医療制度ですので、日本の現状の医療には合わないかもしれません。ついでに手術などを行わない場合はDRGも疾患群ごとの診療報酬になります。
ついでに言うと・・・入院診療を短くすればするほど収益が上がるので・・・病院周囲にホテルなどが建って、そこから受診する患者さんが増えたりするわけです。入院ではないけど、病院の周りに宿泊されているわけで・・・。
日本の医療を同じようにするためには環境整備が必要で、現実的には対応は不能だと思います。DPCは疾患群から処置で報酬を分けていく制度です。これは日本独自の制度ですが、不要な入院を抑えるためには病院の集約化を進めるとともに住み分けと医療制度改革を行う必要になります。
病院が潰れていったら意味がないので・・・。
ちなみに埼玉では入院ベッドの確保の方が大変(ベッド空き待ち)で、入院させたくてもできない患者さんが結構いる感じです(汗
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。