新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

大学病院の待遇改善が最重要だと思う

2013-06-23 20:11:26 | 医局制度改革・医学教育改革

こんばんは

 

今日は暑かったですね。思わず2時前後は少しエアコンを聞かせてしまいました。1時間くらいで室温が下がったので切りましたが。

 

さて、今日は少しYahooを見ていて、木曜日に次のような記事が出ていたことに気が付きました。

 

マーキュリー、医療業界に「メディキャリア」で最適な解決策を提供

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130620-00000019-scn-bus_all

サーチナ 6月20日(木)11時44分配信

医師、看護師等医療人材の職業紹介事業を展開するマーキュリー(本社:大阪市、代表取締役:岩本祐司)は、2013年5月に東京本社の移転、また、名古屋支店、福岡支店の開設など、医療従事者の人材ビジネスの体制を強化している。慢性的な人材不足に悩む医療分野に特化した同社の医師専門の求人サイト「メディキャリア」は、スマートフォンに対応し、より細かな転職ニーズにもスピーディに応えてもらえると、利用者の評価が高いという。

 医師、看護師等医療人材の職業紹介事業を展開するマーキュリー(本社:大阪市、代表取締役:岩本祐司)は、2013年5月に東京本社の移転、また、名古屋支店、福岡支店の開設など、医療従事者の人材ビジネスの体制を強化している。慢性的な人材不足に悩む医療分野に特化した同社の医師専門の求人サイト「メディキャリア」は、スマートフォンに対応し、より細かな転職ニーズにもスピーディに応えてもらえると、利用者の評価が高いという。医師専門でのキャリアが10年を超えるコンサルタントらによる転職希望医師への質の高いコンサルティングと、その医師たちの心に刺さる求人として好評の有料広告掲載とのマッチングが極めて斬新と話題になっている。

 マーキュリーは、2003年の設立以来、医療分野に特化した人材ビジネスを展開。2800以上の医療機関に対し、年間7000件以上の紹介実績を誇り、これまでに6万人を超える医師を紹介してきている。現在の医師登録者数も業界トップクラスの1万2000名に達する。

 医師専門の採用募集・求人広告サイト「メディキャリア」には、新たに「メディキャリア採用コンサルティングサービス」を導入し、求人広告に対して、医師が必要とする情報を不足なく伝えられるようなコンサルティングを実施し、情報内容の拡充を図っている。同社のコンサルタントである爲國公之氏は、「医師個人の活躍の場として最高の環境を整え、また、医師のQOL(生活の質)の向上に寄与できる交渉をとことんやり尽くしてきたからからこそできる、プロモーションの提案があります」と、専業ならではの強みを強調する。

 また、「新鮮な求人情報も、イメージしやすい詳しい情報(仕事内容や、職場環境など)も、求人側の医療機関との強いパートナーシップがあってこそ、掲載することができます。医療機関との強いつながりから集めた求人の一つひとつが、お仕事をお探しの医師・看護師の未来になるのです」と、専任コンサルタントのモットーである「医師・看護師に、最高の仕事と人生を」というキャッチフレーズが、求人サイトの情報一つひとつにも行き届いていると語っている。

 実際に、マーキュリーを利用して転職を実現した医師からは、「専門性を活かし、入職時より患者数を増やせ、給与も向上した」「やりたい医療に専念できる環境になった。特に事務長の人柄に魅かれた」など、医師の希望に叶った医療機関を紹介するまでのコンサルティングの効果を評価する声が多い。

 同社では、「より細かな採用ニーズに応えるため、時代の変化、顧客ニーズの変化に合わせて、サービスを変化し続け、顧客とのパートナーシップを維持し、更なるソリューションの価値向上をめざします」と、さらなるサービス拡充に意欲的だ。(編集担当:八木大洋)

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別にこの会社の紹介をしたかったわけではありません。他にも様々な同様の会社があります。昔の医局の一つの役割を持っているのだということを改めて認識しただけです。

 

2006年ころに名義貸しの問題などがありましたが、昔は「医局」からの医師派遣が重要な意味を持っていました。医師にとっても病院にとっても。これはもしかすると今でも「地域の病院」では重要なことかもしれません。

しかし、医師の側から見れば「医局に属さなくては働いていけないし、自分の希望通りのことはできない」わけではない。「やりようはいくらでもある」という話になります。

医局のこのような役割は本当に減弱したのだろうと思います(都会では)。

インターネット社会になり、勤務医(家などを買っていなければ)は動きやすいのだと思いますけど。

 

さて、この人材(医療従事者)派遣会社も今だからこそよいということだと思います。もしかすると、あと数十年は医師不足のまま続くのではないかと僕は思っていますので、その間は安泰かもしれません。需要と供給に関して需要の方が多いわけですから、供給側はいいですよね。

これは国民や患者さんにとってはよいことではないですけど。

 

恐らく、僕が知っている限りでは「医師不足」が将来解決すると思っている人の方が多い印象も受けます。少なくともこれ以上増えすぎないほうが「医師としての自分」にとってはよいと思っている医師がかなり大勢存在していると思っています。

もちろん、逆の考えを持っている医師も大勢いて、僕は医師数を増やして「質が下がる」ならば、質の下がった医師が排除されていくようなシステムを作ればよいだけで、質が悪くても生き残れる(全体が少ないので、どこかで働ける。少なくとも上記のような医師紹介サイトに求人広告をしている病院はかなりあります)ような世の中だからこそよくないと思っています。

専門分野をアップデートするのも大変です。少し現場から離れれば、実際がわからなくなり通用しなくなっていきます(だから、以前疑似病院のような研修会社を作ることにメリットがあると考えましたが)。基本的なところは変わらないことが多いので、何とか専門分野は何とかなることが多いですが、治療法を大きく変える新薬が出てきたときにその使い方などがわからなければ、患者さんの不利益になります。

 

また、総合内科専門医を取得して、まだ2年程度でしかないですが、他の分野で新しい薬が出た場合、すでにアップデートが遅れています。「あの薬は使ったことがないから使いにくいなぁ。実際はどうなんだろう」と思うことがよくあります。そのくらい医療の情報が早くなっています。

総合内科…というのは確かに何でもできるという良い面があります。家庭医というのも同様です。よく診る疾患から情報のアップデートをしていきますが、すべての疾患のアップデートが追い付くわけがありません。仮に毎週末、どこかの研究会に出ているとしてもある程度の情報しか集まらないだろうと思います。そのくらい専門性が高くなっていっています

その為、専門医は専門医で「優先順位」をつけて情報収集しなくてはなりませんし、総合医は総合医で「優先順位」をつけて勉強しなくてはなりません。時折、「いつの時代の治療を継続しているのだ」と思う医師もいますので・・・。

僕自身、ついていけなくなったら、現場の第一線からは離れなくてはならないと思っていますが、今の医師数では離れられないでしょう。それが問題なのだと思います。

 

さて、医局に関しては今までもいろいろ書いてきました。

医局制度改革・医学教育改革(46)

医局の役割は?

医学部新設の良い点は?

大学病院や地域の病院を改革させる、もしくは改革できるような体制を作らせることが肝要だ

医学部定員国管理見直し論:いずれにせよ、医局改革が先だと思う

医師教育制度はどうするべきか?

医療連携:縦と横と心

新しい医局制度:全医連に対する期待は・・

今は「医局、大学病院」は「臨床と基礎研究をつなぐ架け橋」であり「最大の教育施設」であると思っています。もちろん、基礎研究だけではありません。臨床研究はいろいろな施設が合同して行うものですが、大学病院でなくても臨床研究は実施できます。

 

しかし、基礎研究の結果を臨床へつなげる「Translational research」を行う施設は基礎研究もできるところでなくてはなりませんし、それができるのは臨床現場を見ている医師でしかありえません。基礎から臨床へ、臨床での気づきを基礎研究へ移し、臨床へ戻すことは大学病院だからこそできることだと思っています。

 

それゆえ大学病院の立て直しが必要でしょうし、改革がやはり必要だと思っています。

 

大学病院は本来「基礎研究と臨床研究をつなぐ役割を持ちたいと思う医師」が所属し、それを教える組織であるべきで、またそれを実施すべきだと思います。また、基礎医学、臨床医学を学生に教える組織であり、研修医や後期研修医(専門研修医)を教育するところであるのもよいのですが、やはり立ち位置としては「Translational research」が行えるだけの医師がおり、それをささえるスタッフがおり、他の病院へバイトなどに行かなくてもよいだけの待遇(基本的に一般病院より大学病院の方が給与が悪い。格段に)の確保が行われるべきだと思っています。

 

そして横の連携をすること。研究内容はともかく、臨床に関してはより良いシステムを作り出していくことだと思います。その為には医局の垣根を越えた横の連携が必要不可欠だと思っています。このような話をし始めてからもう7年にもなりますが、今でも考えは変わりません。

 

地域の病院に関しても、どこかで集約化して、開業医の先生との連携(臨床面での情報共有)+病院までの時間的距離を縮める方法を考えなくてはならないのだろうと思います。

 

それらをすべて行うためには結局、医師は足りないだろうと思います。

理想を目指すか、できなくなればそれで「できることをやる」のか(医師はよいです。自分で情報を集められますから。それもあって医師の家族にも中途半端なことはできません。たぶん)・・・。そう思っているからこそ、今医療を変えていかなくてはならないと思っています。

 

話が難しく、ごちゃごちゃしてきてしまいましたが僕が昔から「もっとも重要」なことは「大学病院の医師の待遇が改善されること」だと思っています。「バイトに行かなくては、一般病院の医師と同じような収入が得られない」ために、バイトに行き、その為に「教育」「研究」の質が下がるというのは問題だと思います。

大学病院が「最大の教育施設」であり、この目的を達成するために様々なことを改善しなくてはならないと思っていますが、その最たるものとして待遇だと思っています。

 

もちろん、バイトに行っているために「専門バカ」にならなくて済むのかもしれませんが。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

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2 コメント

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垣根 (山口直子)
2015-10-10 12:39:06
こんにちは、確かに大学病院の垣根がある事は分かりました。しかし、研究になると、やはり他へ情報が漏れては、意味が無いですよね。横の連携と言っても、限界はありますし、ある程度の規制をしておかないと、秩序が乱れるなど、色々な問題がありそうな気がします。私は、大学病院の事はよくはわからないので、何とも言えませんけれど。
さて、話は変わりますが、流石医師ともなると、言葉遣いが良くて、私は好きです。こういった職業の人は、言葉遣いがいいので、ブログを読んだりすると、気持ちが落ち着きます。こんな丁寧に書いて貰えると、読ませて貰っている方は有り難いです。
あと、されてみて一番辛いのは、知らずに研究の材料になっている場合です。私は、多分両方の気持ちが理解出来ます。される側の悲しさがする側にもっと分かって貰える時がいつか来たらいいと思います。何も教えられずに、そうなっていたの?と気付いた時、されている立場の気持ちを理解した上で関わって貰える医師がいると、きっと協力の度合いも違っていたのかな?と、私は思った事は有りました。説明のないことや、承認を本人がしていない状態で、家族が勝手に決めて居たりするのには、いささか疑問を感じたことが有りました。私は、たとえ、わからなかったとしても、本人も交えて説明したり、家族だけに話さない様にしていきたいタイプなので、余計にそう思います。
今の時代には、私の様なタイプは、古いので、必要ないのかもしれませんが。
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連携は本当に難しいですね (アンフェタミン)
2015-10-13 23:05:09
>山口直子さん
こんばんは、コメントありがとうございます。

僕のBlogは本当はこういった医療システムの問題を訴えることから始めたものですが、こういったコメントをいただくことは少なかったので、うれしく思っております。

大学病院だけでなく、すべての病院が「自分たちがスタンダード」と思っているのが怖いことなのだと思っています。後輩がいっている病院でも「これが○○大の標準」ではなくて、「どこでも同じことしているだろう」と言っていると聞いています。僕が他の大学にお世話になった時も同じように感じましたし、ネットでいろいろな方と知り合ったおかげで、様々な考え方や方針があることがよくわかりました。
ですので、自分たちが標準かどうかはすごく考えるようにしています。

言葉づかいをほめていただいたのはとてもうれしいです。ありがとうございます。

知らないうちに研究の材料になっているというのが、どういう場合化・・と思いますが、少なくとも今の世の中では「前向き試験」であれば「患者本人」の同意が基本(18歳未満でも、理解できる年齢ならば患者にも同意を得ることが基本です)で、後ろ向き試験(いまあるデータを解析するような)だとホームページなどで公にするなどの方法が取られたりしています。

今の世の中では本人が知らないうちに前向き試験肉y見込まれることは許されていないので、そういうことはないのではないかと思います。

また、コメントいただければと存じます
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