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キリコの風景

2007-01-06 08:15:17 | 邦画 (69)

005

監督 明石知幸
脚本 森田芳光
出演 杉本哲太(村石陽介)小林聡美(キリコ)
     勝村政信(西川利)重剛(海田)
     木根尚登 (木崎)田口トモロヲ(木村)

1998年、日本   

>>北海道函館空港に降り立った村石は、何かに引き寄せられるように西川という男が運転するタクシーに乗り込むと、マンションを見て回りたいからと一日貸し切りを申し出た。当惑しながらも西川は友人の不動産屋・海田を紹介し、3人の奇妙な部屋探しが始まる。ところが、村石は海田が紹介する先々のマンションで住人たちの隠された罪を言い当て、救い始めたのである。

しあわせなサヨナラ サヨナラの愛

映画はジョルジョ・デ・キリコの風景画がベースになっているそうです。
サスペンスタッチなのだけど、不思議な気分になる映画です。

函館の風景も美しい。

村石は消火器詐欺で、刑務所に入っているうちに超人的な能力を身に着けた。
千里眼である。

罪を犯した人間が村石に説得され、改心するところはちょっと感動的でもある。
犯罪を犯せば、被害者の心が痛むのは当然。
また、たとえそれが明るみに出なくても結局は犯罪者自身の心も蝕まれていくのだ。

現代人が抱える病理をマンションの住人に着眼した点が面白いと思った。

村石はそんなふうに、お金に目のくらんだ自分のつまづきを元に、人々を助けて歩きながら、本当は愛想を尽かされた妻キリコを探しに来たのだ。

運転手も不動産屋も村石の探すキリコの知人だという偶然も面白い。

画面が時々、斜めになったり、暗くなったりする手法も不思議さに拍車がかかる。

特筆すべきはキリコを演じた小林聡美だと思う。
過去を引きずる男や自信なさげな男たちに比べて、前向きに活き活きと自分の人生を生きている。

ここから結末に触れています。

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村石はキリコを探し当てる。

キリコはなんと、運転手の西川と暮らしていた。
人ひとり助けられない、村石には適わないと、うなだれる西川。
心中複雑な村石。ふたりの冴えない表情がおかしい。

村石の能力はキリコには通じない。

この能力は自分のことには働かないのだろう。
キリコは未練たらたらの村石に、母親みたいな気遣いは見せるが、石川との現在の幸せを選ぶ。

キリコを想う村石をつい応援してしまう私がいる。笑
キリコがひょうきんでさばさばと、少年のように魅力的だから、よけい。
彼女は現実的な人間なのだ。

背の高い男を見ただろう?
自分じゃないの?

村石は驚く。
結局、村石は自分の影に怯え、自分を追っていたのだ。

彼はキリコに救われのだろう。

自分の能力に酔い始めていたとしたら、ピシャリとやられたに違いない。
改心の押し売りと言えなくもない。笑

ほろ苦い大人の愛・・
どんなに村石が変わろうとも、反省しようとも、終わった愛はもう二度と元に戻ることはない。

彼は去る。

飛行機の音にふと空を見上げ、洗濯物干しに専念するキリコ。

日常の風景がちょっと切ない。


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