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あいりのCinema cafe

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風の丘を越えて~西便制~

2004-12-24 23:49:28 | 韓国映画

kaze

監督 イム・グォンテク
出演 キム・ミョンゴン(ユボン) オ・ジョンヘ(ソンファ)
キム・ギュチョル(ドンホ) 1993年

思ってたより重い題材の映画でした。
1960年代初頭、パンソリ芸人ユボンは師匠から女性問題で破門され旅回りに身を落としている。彼の望みは育てている孤児ソンファに自分の持てる限りのパンソリの心と唄を教え込むこと。
また、旅の途中、孤児となったドンホも連れてゆくことにする。

40年前の韓国の村や町の様子が珍しい。
パンソリとはいったい何なのだろう。
日本の浄瑠璃に似ているが、物語を語って聞かせる唄のようだ。
名作と言われるだけに、胸にズシリとくる映画だったが。
移り変わる美しい四季の中で、父親と成長した養子二人がパンソリ(アリラン)を唄い踊る場面がちょっと忘れられない。
楽しげに、幸せそうに、物語が辛いものであるだけにこの場面はよけいに美しく輝くのだろう。

貧しさの中で、芸だけに凝り固まったかのごとく厳しい父親。
パンソリの王道から外れた彼には彼なりに意地があったのか、ソンファと同じく唄うことが好きだったのだろうか。
そんな育ての父を嫌ってドンホは去って行く。

父親はソンファのパンソリが澄んで美しいことから彼女に言う。
「西便制の声は、人の心を刃物で削ぐように恨(ハン)が染みこむものだ。」
「人の恨(ハン)とは、生きることだ。心に欝積する感情のしこりだ。生きることは恨(ハン)を積むことだ。恨(ハン)を積むことが生きることなのだ」
そして、この父親は(養父ではあるが)よくもまあ娘にあんなことができたなと思う。
芸術至上主義か。まるで芥川龍之介「地獄変」の地獄絵図じゃないの。

けれど、自分を決して恨もうとしないソンファに父は言う。。
「これからは、恨(ハン)に埋もれずに、恨(ハン)を越える声を出してみろ。西便制は悲哀と愛憎に満ちている。しかし恨(ハン)を越えれば、西便制も東便制(パンソリの二大流派)もなく、ただ唄の境地があるのみだ」

そして、父親は死に、ドンホは何も知らないまま姉を探してやって来る。
探し当てた時、ある理由から姉にはドンホは分からない。
ドンホはソンファにパンソリを所望し、太鼓を叩く。
聞き覚えのある太鼓の音、次第に二人の頬から流れる涙。
二人の気持ちは交わり、美しく浄化されていくように見える。凄い場面です。
姉と弟と言っても血の繋がらない二人に姉弟以上の感情があったのかは私にははっきりとは分からなかった。
何となく、男女の愛に近いものであるとほのめかしてあるのですが。

オ・ジョンヘは吹き替えなしで本人がパンソリを唄っていると聞いたが、本当だろうか。
ソンファはあれほど待っていた弟と別れてしまう。
なぜと問う人に彼女は言う。
「私たちの過去はあまりにも重過ぎて触れたくないから。。
昨日、私たちは唄うことでもう恨(ハン)を超えました。」

愛と憎しみ?この映画を見て、私は人間の深い業という言葉を思い浮かべた。
時たま感じる韓国映画の底に流れている何やらほの暗いもの。
その正体が少し分かったような気がした。


永遠の片想い(劇場)

2004-07-28 15:38:08 | 韓国映画

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監督・脚本 イ・ハン 
出演 チャ・テヒョン(ジファン)
   ソン・イエジン(スイン)『ラブストーリー』
   イ・ウンジュ(ギョンヒ)       2003年韓国
                   ★★★★☆85点
『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョンが出演していると喜び勇んで見に行きました。
これが一作目と違って、悲しい映画だったんですね。
映画が終わった後、私は堪えていた涙が溢れたのですが、お隣の席のお嬢さんが急に泣き始めちゃって。
私も、そのお嬢さんの気持ちが分かりました。

なぜ『永遠の片思い』なのかがよっく分かりました。
大学を休学して学費を稼ぐジファンは或る日、アルバイト先の喫茶店に来た二人連れの女の子のスインに一目惚れしてしまう。
ジファンが速攻で行動に移すところに、ジファンの素直で愛すべき性格が現れていて胸にグッときました。

チャ・テヒョンは前作と同じような素に近い明るい役柄で、やっぱり現代の男の子という感じです。
切ない物語なんだけど、笑える場面も多かったです。
唐突な告白に困るスインに大きな掛け時計を見せ、時間を戻したからこの次は友達として会ってと頼みます。
この演出は新鮮でした。

それから、三人の楽しい交際が始まる。
スインは病弱な美少女(お似合いです)、ギョンヒは元気でボーイッシュ。
落ち込んだ時の慰めにギュと丸めてポケットに突っ込んで持って帰りたい!ようなギョンヒ
この台詞が言い得て妙です。

二人の女の子は親友。
次第に三人の関係は変わり始めるが、スインとギョンヒは互いに譲り合ってジファンへの本当の想いを伝えられない。切ないです。

三人で旅に出てジファンは運転しながら片方の手のひらを外に出します。
風を感じて彼がどんなに幸せか。いいシーンです。

ラストの意外なドンデン返しには驚きました。
二人にはこんな秘密があったのか。やられたって感じ。
それからジファンの妹、この少女、感情表現が豊かでとても初々しい、注目です。
以下は結末に触れていますのでご用心。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ジファンはギョンヒの最後の手紙を読みます。
三人の輝くような楽しい思い出を胸に・・・
ジファンの悲しみがこちらに伝わって胸が痛む。

前半が明るい雰囲気だっただけに、この二重の悲劇はどうなのかなあ。
個人的にはせめてギョンヒは幸せになって欲しいと思いました。
三人は映画『イルポスティーノ』を見てそれぞれが同じ台詞をつぶやく。

「人を愛しているんだ。胸が痛い。でもこの痛さを持ち続けたいんだ。」


ラスト・プレゼント・Last Present(TV)

2004-06-28 11:17:00 | 韓国映画
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監督 オ・ギファン
出演 イ・ヨンエ(ジョンヨン) イ・ジョンジェ(ヨンギ) 
    クォン・ヘヒョ(詐欺師ハスク)
                       2001年韓国
好き嫌い当てにならないオススメ度 ★★★★80点
これはテレビの録画を一人で見たので号泣しました。^^; 
                                 
愛にも様々な形があるでしょう。
この映画のジョンヨン、は小さい時から自分の運命(かな?)を知っていたのでは。
母親も(多分自分の子供も)同じ病で亡くなったのではないかしら。
だから、人を笑わせ幸せにする子供時代のヨンギに出会って、幼いながらも惹かれた。

妻は人を幸せにする仕事ができるよう、夫に悲しい思いをさせたくなかった。
そういう台詞がありました。
愛する人を悲しませたくないという、この妻の気持ちは理解できます。
自分も母に取り残された。夫を置いていく辛さ。。。

夫がテレビで熱演している時,妻は倒れ心臓マッサージを受けます。
生と死が交錯する場面は長く凄まじいものでした。
でも、なぜか不思議なほどイ・ヨンエが美しかった。
イ・ヨンエは『JSA』の生意気な女性将校、『春の日は過ぎ行く』のどこか陰のある年上の女性よりもこちらの役柄の方が良いと思う。

黒服の詐欺師二人組みのキャラクターが貴重。
お人好しでペテンにかけるつもりが、気がつくと人助けをしている。
この一人は今、日本でブームの『冬のソナタ』の気の良いパク次長だった^^
良い味出してますね。
妻には生涯思いつめた人がいるらしい、それは・・・

もうひとつ、妻のかつての親友が会いに来て「頑張ってね」と言います。
彼女も幼馴染が背負っている病を知っていたのでは。
だから、初めは会いたくなかったんじゃないかと思ったのですが。
韓国の人々はプライドが高く、現在の自分を知られたくないという見方もあるようです。
そうなのかなあ。

ラストのシーンは感動するしかないのですが、舞台でパントマイムを演じる哀しいコメディアンがフと、あのパントマイムの名優ジャン=ルイ・バロー(天井桟敷の人々)に見えました。
イ・ジョンジェが少し感情の表現力に乏しいように思えたのはイ・ヨンエが熱演だっただけに惜しい気がしました。

ラスト・プレゼントの意味は、映画を見て確かめて下さい。^^

TB送信:お気に入りの映画


猟奇的な彼女(劇場)

2004-06-18 20:01:00 | 韓国映画

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監督・脚本 クァク・チェヨン
出演 チャ・テヒョン(キョヌ) チョン・ジヒョン(彼女)

脚本は、韓国の大学生がインターネットで流した物だそうで、若々しい感覚に溢れています。
キョヌは、ちょっとドジな、お気楽大学生。
或る日(ママ)の言いつけで「叔母さん」の家に行く途中、電車の中で、酔っ払った美人女子大生を介抱します。
彼女は、曲がったことが大嫌い、口も早いが手も早い。
いつしかキョヌは彼女に、かしずくハメに。
彼女は脚本を書くのが趣味で、キョヌがそれを読んで回想するシ-ンが可笑しい。
笑えます。
彼女のお見合いに付き添って、見合い相手に彼女について守るべき事(彼女の操縦法?)を懸命に説明するキョヌの表情が良い~~~♪
それは、つまりキョヌがどれだけ彼女を愛しているかってこと。。
映画のテーマ曲がまた良くて、ここ泣きどころでっス。涙ポロポロ

彼女には悲しい秘密があった。
自分の気持を整理するために彼女は二人でタイムカプセルを埋め、一年後の再会を約束するが。
最後には、嬉しいダ~イどんでん返しが用意されています。
こういう映画が今までにありそうでなかったので、このラストは読めませんでしたぁ。
してやられた~~~!ううっ~
でも、最初に母親が親戚のおばさんがキョヌにそっくりの息子が亡くなったことを話してましたよね。
それに私には聞きなれない”韓国の地名”、これが後々の伏線になってるんでしょう。
キョヌがそのおばさんちに行く途中で、彼女に会ってるということも。

チャ・テヒョンは気弱なおとぼけキャラがハマッテて良かったと思います。☆

「チャンスは、努力したものに訪れる・・・」ラストの台詞が憎い・・・・・


イルマーレ(劇場)

2004-06-09 09:10:00 | 韓国映画

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監督 イ・ヒョンスン
出演 イ・ジョンジェ(ウンジュ) 
    チョン・ジヒョン(ソンヒョン)2000年韓国

青年は海辺の家に越してきて、そこをイルマーレ(イタリア語で家)と名づける。
海辺の静かなしゃれた家、そこから全てが始まる。

そこにはレトロな郵便受けがあった。
青年ウンジェは或る日、自分の前のイルマーレの住人の女性(ソンヒョン)から手紙を受け取る。
その日付は2年先の青年にとっては未来からの手紙だった。
時空を超えて二人は文通を始め、やがてお互いを大切に感じ始める。

ウンジェはそれとなくソンヒョンに会いに行くが、無論彼女は彼の顔に見覚えがなくて見ているこちらはもどかしい。
ソンヒョンは分かれた彼とのことをウンジェに相談し有る事を頼むが。
ウンジェの身に思いがけない事が起きるのを目撃し、過去に生きる彼に来ないで!と手紙を書くが。
間に合うかどうか、ハラハラさせられる。

そう言えば時を超えた恋愛ってあまり他の映画にないよね。『ある日どこかで』があるな。
韓国映画にもう一つ同じテーマの『時代愛』があるが、こちらはもっと年月に隔たりがある。
2年間の過去と未来が交錯する『イルマーレ』は見ている方は多少こんがらがる。

運命は以外な方向に展開し青年は彼女の前に現れて言う。
「今から話すことを君は信じられないだろうが・・・」この時、新しい恋が芽生える予感が。 。。