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生きる・活着(ビデオ)

2003-12-08 17:23:00 | 中国映画 (19)

監督 チャン・イーモウ
出演 家珍(コン・リー) 福貴(グオ・ヨウ) 
1994年 
1940年代空1960年代の動乱の中国が舞台。
毛沢東政府から文化革命へと、混沌とした時代の中で、それでも生きていく庶民の姿が、心を打つ。

裕福な家の放蕩息子、福貴(グオ・ヨウ)は賭博の果てに家屋敷まで取られてしまう。
妻の家珍(コン・リー)は一旦は夫の元を去るが、
共産軍と国民軍の戦争に巻き込まれ、九死に一生を得て生還した夫と再会する。

幼い娘は高熱がもとで口が利けなくなっていた。
福貴は道楽で覚えた影絵義太夫として、なんとか生計を立てる。
福貴に比べて家珍は逞しい。
体制が変わる度に何が正しいのか、誰を信じて良いのか分からぬ混乱のなか、懸命に家族を守るため賢く立ち回る家珍。

娘にも縁談が持ち込まれる。
相手も足に障害を持つが、優しく頼りがいのある男だった。
嫁ぐ日、新郎の漕ぐ自転車の荷台に乗せられ、母を振り返り、振り返り、ベソをかきながら遠ざかる娘。
忘れられない場面です。
新郎側の人々がさりげなく幼い新婦を励ます。

悲劇は次から次へと容赦なく起る。
文革のあおりで医者が叫弾される。
娘の出産に医者が間に合わず、なす術もなく家珍の腕の中で娘は死んでいく。
娘の名をよび続ける母親の気持ちはどんなに悲しいことか。

何のための革命か、誰のための政治か、見ていて本当に腹が立った。
時代の波に翻弄されながらも、やっと最後に訪れた静かな生活。

涙、涙、になる題材なのだが、家族の真心とたくましさがこの映画を救っていると思う。
人々は悲しみや憎しみを素直に表す。
良家の若奥様から、貧しくとも心優しい芯の強い母親への変身が見事だったコン・リー。
彼女の他に、この役をできる女優はいないと思った。

チャン・イーモー監督は歴史に翻弄される家族を自然にありのままに描いている。
愛する一人息子を故意ではないが事故で死なせた男を決して許そうとしなかった家珍。
男が文化革命のあおりで、破滅し「もう生きていたくない」と泣いた時。
家珍は男を気遣って「生きるのよ!あんたは、うちに借りがあるんだから」と声をかける。

この場面は、印象的であった・・