岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

深い「亀裂」が入り今にも崩落しそうな1396mピーク近くの「雪庇」/ 「クマ」冬眠あけの時季

2009-04-24 05:01:12 | Weblog
(今日の写真は『深い「亀裂」が入り今にも崩落しそうな1396mピーク近くの「雪庇」』だ。雪がなければこの「場所」は岩と根曲がり竹だけの藪である。細い上に吊り尾根状になっているので、特に「谷川」に落ちないように注意しながら「渡って」いかねばならない。
 この場所からは「真下」は見えない。突き出した「雪庇」に阻まれ、遮られているからだ。だが、これ以上前には出ていけない。
 「ものが落下」するということは、それまで微妙な均衡状態で釣り合いがとれていたものの一方が、1gでも重くなり、「バランスが崩れた時」のことだ。
 簡単にいうと、この「雪庇」の場合は、「張り出している重さ」を支えている直下の雪面摩擦力よりも、載っている「雪庇」の重力が1gでも勝った時に崩落するということだ。
 この「雪庇」の「直下はどうなっているのだろうか」とか「直下の風情や赤倉沢の源頭部はどうなっているのだろうか」など考え、それを見たいと思い、一歩でも踏み出したときに、「梃子(てこ)」や「支柱」の原理を支えている力が雪庇先端部に加わる。
 そして、「亀裂」は大きく「裂けて」、そこから「雪庇」の崩落が始まる。
 文章で書くと、何だかゆっくりとした「動き」になってしまうが、事実は「一瞬」のことだ。それは、最近頻発している「大型クレーン車」の「アーム折れ」や「アームとそれを支える車体」の横出し事故の原理と原因に通じている。

  そういうわけで、「雪庇先端部分」に踏み出せない分だけ、かなり距離のある「遠目の眼下」はよく見える。
 「遠目の眼下」に見えているのは「赤倉沢」の中流部から下流部だ。非常に広い。ちょうど見えない上流部になると、途端に「沢幅」は狭くなり、同時に急峻になる。この急峻で狭い部分まで「堰堤」が敷設されている。最上流部にあるものが下から数えて「15基」目になる。
 右側の尾根(赤倉沢右岸尾根)には「赤倉登山道」がある。この「赤倉登山道」からは殆ど赤倉沢は見えない。だから「巨大な堰堤が人工物の竜のように仰臥」しているの見ることは出来ない。そして、登山者の誰も、赤倉沢の「大堰堤群」には気づかない。ましてや、この敷設工事に伴う「行き過ぎた自然破壊」を目の当たりにすることはない。

 その赤倉右岸尾根の麓に、沢に沿って樹木が伐られているところが見えるだろう。これは「堰堤工事」用に敷設した道路である。これが「自然破壊」の現実だ。「堰堤工事」のために、「ブナ」を伐採したのである。「堰堤と道路を造らせたのは林野庁」で「施工」したのは「白神山地」で「青秋林道」を手がけていた「F建設」である。
 赤倉沢の堰堤工事は、この「林野庁と」が「県民の反対」に遭い、「」工事から撤退した時期と、不思議なくらいに、ちょうど時を同じくして始まった。
 何も不思議な話しではないのだ。「発注と受注」という契約を履行するために、「林野庁」が「青秋林道」の「受注額」に見合う分の「仕事」を「F建設」に与えたに過ぎないということなのだ。
 だからどう考えても、どのように検証しても「必要でない」数の堰堤が敷設されているとしか思えないのである。
 見えない部分の赤倉沢左岸部の上部、つまり、この「雪庇」の直下には「修験者」の道がある。夏場も同じように直下は見えない。猛烈な根曲がり竹に覆われて周囲が見えないからだ。岩木山にある斜面の中では勾配が一番きついところでもある。「修験者」が「修行」のために選んだだけのことは、確かにある。)

      ◇◇「クマ」冬眠あけの時季…「お目覚め時、要注意」◇◇

 一昨日、昨日と寒かった。北風が冷たかった。今朝の外気温は6.5℃。今日は暖かくなるのだろうか。昨日から弘前公園で「桜まつり」が始まった。すでに満開だという。
 だが、日ごとに暖かくなるだろう。「桜が満開」、そして今季は、少雪、山麓には殆ど積雪はない。「山菜採り」や「渓流釣り」の時季が始まった。
 そして、この「山菜採りや渓流釣り」などで山に入る時に注意しなければいけないのが「冬眠から目覚めたクマ」である。
 13日に「扇ノ金目山」の手前で、クマの「冬眠岩」を見かけた。出来るだけ、そばを通りたくなかったのだが、「ルート採り」の関係から、すぐ前を通ることになった。
 「まだ目覚めるなよ。今出てきても、食べ物はないぞ。だから、もう少し眠っているんだぞ」と念じながら、細心の注意をして、ゆっくりと、音をたてないように慎重に通り過ぎた。これが、ルールだ。山に来たら「山の住人」に合わせることが作法というものであり、礼儀でもある。
 「クマ」は最近は「人慣れ」したからか、人里まで出てくるケースも増えてきた。「クマよけの鈴」を普段から持ち歩いている人も多くはなく、対策は難しい。「クマよけの鈴」を必要でない場所で「チンチン」「カランカラン』と鳴らして、騒音をまき散らしている登山客は多いが、「必要な時と場所」でそれを効果的に使っている人は少ない。

 本県や岩手県でも、ここ数年「ツキノワグマによる人身被害」は10件前後、被害者も10人前後である。そのうち、山林などクマの生活圏以外で襲われたケースは、半数以上を占めている。
 これは「人間とクマのすみ分けが崩れ始め、山以外での被害が増えている」ということを示していることだろう。間伐されずに荒れた山が増えてエサが少なくなったり、少子高齢化で中山間地に住む人がいなくなったりしたことが原因だ。つまり、「クマと人間との境界線がなくなりつつある」ということだ。もはや、「人間のパワーで野生動物を押し返すことが出来なくなった」ということだろう。
 山に入る時は鈴やラジオなどで音を出すことで人の存在を知らせることが有効だが、人間の生活圏に下りて来た「クマ」と遭わないようにするのは困難だ。
 「もし出合ってしまったら、背中をむけて逃げてはいけない」ということぐらいしか、私には言えない。
 先ずは、「クマ」から目をそらさず、後ずさりするように距離をとり、ザックや荷物などを間に置いて関心を逸らすことが有効だろう。