たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『アンネの日記』より‐ペーターへの思慕

2024年06月19日 11時34分16秒 | 本あれこれ

「夜、ベッドに横たわるとき、お祈りの最後にこう言います。「神様、すべての善なるもの、いとしいもの、美しいものに対して、神様に感謝します」。こう言うときのわたしは、歓喜に満ちあふれています。それから、隠れ家生活をしていること、自分が健康であることなど、”善”なるもの-ペーターの”いとしさ”-まだ芽ばえただけで、感じやすく、二人とも触れようとしないもの、この世に存在する”美”について考えます。

 そういうとき、不幸なことは考えません。まだ残ている美だけを考えます。お母さんとわたしが全く意見を異にするのはこの点です。人が憂うつなとき、お母さんは「世界じゅうのあらゆる不幸を考え、自分がそれを受けていないことに感謝しなさい」と忠告します。しかしわたしはこう忠告します。「外へ出て野原へ行きなさい。そして自然と日光を楽しみ、あなた自身と神様の中に、幸福を再びつかもうとしなさい。あなたの中とあなたの周囲にまだ残っている、あらゆる美を思い出して幸福になりなさい」

 お母さんの考え方が正しいとはどうしても思えません。お母さんの言うようにすれば、その人は自分が不幸な目にあっているかのような態度をとらなければならないでしょう。そうなったらおしまいです。わたしはその反対に、自然、日光、自分自身などの中に、何か美しいものが常に残っているものだと気がつきました。これが自分を慰めてくれます。こういうものをながめてごらんなさい。あなたはきっと、あなた自身と神様を発見します。そうすれば、あなたは心の平静を再び取り戻します。

 幸福な人はだれでも、他人をも幸福にするでしょう。勇気と信念のある人は、決して不幸の中で死にはしません。」

 

(A・フランク 皆藤幸蔵訳『アンネの日記』1974年7月25日第1刷、1978年10月1日第11刷文春文庫、238‐239頁より)

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