たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

茂木健一郎『赤毛のアンに学ぶ幸福になる方法』_エミリーとアン(2)

2019年02月17日 13時47分22秒 | 本あれこれ
「アンに対峙する女性の生き方の一つとして、エミリーの人生の選択が挙げられますが、それはココ・シャネル的な生き方にも通じるものがあると思います。二十世紀初頭に登場し、ファッション界に一大旋風を巻き起こしたココ・シャネル。彼女は、それまでの女性の生活スタイルや価値観を根底から変革しました。このシャネルのように、必ずしも結婚せずとも女性としての人生を謳歌し、仕事面でも大きな成功を得る。そういった感じのキャリアパスというものが、はたして日本に真に入ってきているかということです。

  アンの生き方に対峙するものとして、ココ・シャネル的な生き方が、確固たる人生のロールモデルになりえているかと言うと、やはり日本ではいまだにリアルなものとして根づいていないように思います。いろいろ選択肢はあっても、やっばリアンみたいな生き方が正解なのだと。アンのような強烈な個性を持った女の子でさえも、結局はこういう幸せな結婚で落ち着いたではないかと。もしかしたら日本人はそこにある種の安心感を見出したのかもしれないし、そこに人生の最終日標を設定したのかもしれません。その正解に向けて人生の方向性を決めて歩んでいくという傾向。欧米ではエミリーの人生に共感を覚える女性が多いのに対し、日本ではアンの人生が圧倒的な人気を誇る。それは、こういうことを表しているのではないでしょうか。

 ただ、ここでまたひとつやっかいな問題になってくるのは、おそらく多くの日本の男性にとって、エミリーのような人物は、あんまり好みではないだろうということです。僕は、エミリーという人物はとても面白いと思うけれど、たぶん普通の感覚ではそうは思わないでしょう。ああいう暗黒の世界というのは……。なにしろ『赤毛のアン』の作中においてさえ、男子に人気があるのは想像力溢れるアンではなく、かわいらしいダイアナ・バリーです。それがましてやエミリーとなると、けっこう大変かもしれません。

 けれども、男性がどういう文化を形成しているかで、その国の全体的な文化像も見えてきます。女性の生き方のロールモデルを考察する上では、必ずもう一方の男性の生き方というのも併せて考えていかなくてはならないのです。」

(茂木健一郎著『赤毛のアンに学ぶ幸福(しあわせ)になる方法』より)


「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法 (講談社文庫)
茂木 健一郎
講談社

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