たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『続・悩む力』より_「イワン・イリイチの死」

2015年05月30日 22時50分58秒 | 本あれこれ
「3.11でも、いかんともしがたい状況のなかで人の心を最も打ったのは、アクティブな活動よりも雄弁な言葉よりも、ただ祈り、運命を引き受ける「態度」だったと思います。

 なぜなら「創造」や「体験」は、世の中が平常で、元気なときでなければ実現されることはありません。しかし、「態度」は、健やかなときも辞めるときも、いついかなるときでも、想いさえあれば発揮することができるのです。

 逆にいえば、だからこそ常に、真価が問われるものでもあります。しかも、これといって、特別な鍛錬や特別な才能を必要とするわけではなく、イワン・イリイチのように、それこそ死の直前でも、寝たきりの状態でも実現することができます。

 態度による価値とは、この社会で日常的に問題にされている、成功か失敗か、効率か非効率か、有効か無効かといったものの彼岸にあり、また、資本主義社会の生産や交換価値とは対極の位置を占めているものです。それは、強いていえば、「宗教的なもの」に最も近いと思うのですが、いずれにしても、この価値は限りなく人間のある種の本質を表しているように思えます。」


(姜尚中著『続・悩む力』2012年発行、集英社新書、197-198頁より。)


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今日の夜の8時台の長く大きな揺れに、
またもや大震災の恐怖を思い出してしまいました。
なんだか3,11の二日前の揺れの感じに似ているような・・・。
明日のことは本当にわからないですね。
一日一日生かされている命に感謝しつつ、
自分を見失うことなく過ごしていくだけです。


続・悩む力 (集英社新書)
姜尚中
集英社

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