医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

雨と匂いと日本の美4

2006年08月09日 12時51分43秒 | Weblog
 さて、みなさまもよくご存知の「枕草子」の作者、平安時代の女流作家である「清 少納言」はまったくの天才です・・。

 学校で教わって以来・・・、という方もいらっしゃるでしょうから、久しぶりに大人の頭でじっくり味わってみてください。

~春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく 山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

 夏は夜。月のころはさらなり、やみもなほ。蛍の多く飛びちがひたる、また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くも をかし。雨など降るも をかし。

 秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近こうなりたるに、からすの寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて、がんなどの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、また言ふべきにあらず。

 冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし、昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。~


 素晴らしい感性ですね・・僭越ですが僕的には夏と秋を入れ替えて、春が夜明け前のあけぼの(地面のぬくもりと生命の息吹、柔らかい東風を感じる日中でも良いとは思いますが)、「夏が夕暮れ、秋が夜」、冬は早朝・・・ではどうでしょうか?

 先日、椿山荘(ちんざんそう)に蛍を見に行ってきました。

 確かに夏の夜の蛍は風流で捨てがたいのですが、夏の夜の雨はどうなのでしょうか?・・・シェークスピアやオペラの「夏の夜の夢」もありますけれども・・

 あえて「夏は夕暮れ」 これがまたたまりませんよね。

 夏ゴルフの薄暮プレーは最高です。

 日中よりは少しだけ涼しい風と、見渡す限りだいだい色に包まれる空間、どことな~く漂うこれまたカーニバルの終わった後と共通の「もの悲しさ」。

 伊勢国松坂出身で、医師でもあった江戸時代の国学者、本居宣長(映画監督の小津安二郎氏のご先祖様らしいですが・・・)は言います。

「感ずべき事にあたりて、感ずべきこゝろをしりて、感ずるを、もののあはれをしるとはいふ」

 つまり、感ずべきことにめぐりあったときに、感ずべき心を知っているので、感ずるのを、「もののあはれ」を知るという、ということでしょうか?

 感ずべき心の感性を磨くことが、もののあはれを、美を知ることにつながるんだと。

 僕はもっともっと感受性を磨いて、感ずることができるようになりたいと思います。

 同じ人生なら感動が多いほうが得した気分になりますから。

 日本人に生まれ、日本の美しい四季、色々な匂いや風を感じられることが幸せです。