医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

雨と匂いと日本の美3

2006年08月08日 13時21分07秒 | Weblog
 そして僕の場合、鮮やかに過去の光景が連想される匂いとして、それがちょうどこの時期の匂いなのですが、線路の枕木の匂いなのです。

 あれは枕木に塗ったコールタールの匂いだと思うんですが・・うだるような暑さの夏の午後、線路には蜃気楼のような空気の揺らめきが生じ、その匂いがたちこめ、遠くに貨物列車を引くディーゼル機関車の汽笛の音や、工場のサイレン、そしてこれでもかってくらい蝉がしぐれる夏の午後の風景・・・

 駅と線路、貨物ターミナルが遊び場だった、自分の少年時代のワンシーンを思い出すからです。

 日本におけるフュージョンバンドの天才中の天才集団、カシオペアの「Mint Jams」というアルバムがあったのですが(現在は廃盤)、中でも「ASAYAKE」は素晴らしいし曲ですし実際に超有名なのですけれども、「Take Me」という曲がこれまたとっても秀逸で、そんなけだるい夏の午後にぴったりなのです。 下記で試聴してみてください。

http://www.ongen.net/search_detail_album/album_id/al0000025791/


 日本にはありがたいことに四季がありますが、季節としては9月が一番好きです。

 夏の中に最初の秋を感じる瞬間・・・それは風であったり、匂いであったり、体で感じるその一瞬・・・夏が終わる、あの「もの悲しさ」や「はかなさ」がなんともいえません。

 そんな時、松岡直也氏の「九月の風」を聴くと胸が”ぎゅいん”としめつけられます。

 前述の「ASAYAKE」や「Take Me」から「九月の風」、それと以前お書きした高中正義の「Blue Lagoon」まで一気に試聴できるサイトがありました。

http://www.neowing.co.jp/JWAVE/detailview.html?KEY=MHCL-242

 ネクラなわけではないのですが、カーニバルやお祭りが終わった後の静寂に「美しさ」を感じてしまいます。

 もののあはれ感・・・

 以前紹介したかもしれませんが、「黒いオルフェ」という古い映画があります。

 この映画もカーニバルと静寂、明と暗、生と死がテーマになっており、ギリシャ神話のオウフェウスとエウリディケ(イタリアオペラ風に言えばオルフェオとエウリディーチェ)の悲劇を元にして、ブラジルのカーニバルを舞台に撮られたフランス映画ですから、色彩も素晴らしくきれいですし、とっても秀作ですのでぜひご覧ください。

 ちなみにこのオルフェウスの伝説は日本版もあるのです。

 「古事記」に書いてありますが、日本の国造りのはじめとして、イザナキとイザナミという夫婦が島々や神々を産みます。

 火の神カグツチ(=火産霊ほむすび)を産み落とした母イザナミは、陰部に大やけどを負って命を落としてしまいます。

 ちなみにカグツチは東京港区の愛宕神社に防火の神として祀られております。

 妻イザナミを連れて帰ろうと、イザナキは黄泉の国を訪れるのです。

 決して姿を見ないようにと約束したのに姿を見てしまい、妻を永遠に失ってしまうくだりはオルフェウスの物語に酷似しております。

 その後、イザナキは男神ですがアマテラス(天照)・ツクヨミ(月読、月夜見)・スサノオ(須佐之男、素盞鳴)を産み、そのアマテラスの岩屋事件が宮崎県の高千穂町にある天岩戸神社、スサノオの妻がイナダヒメ(奇稲田クシナダヒメ)で、その六代目の子孫がオホクニヌシ(大黒天)になるわけです。

 ちなみにスサノオとイダナヒメを祀るのが、島根県の八重垣神社や全国の氷川神社です(出雲の国の斐川=ひかわと関連がありそうですね)。