医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

雨と匂いと日本の美2

2006年08月07日 13時57分09秒 | Weblog
 ちょっとタイトルを変更しました。

 五月雨(さみだれ、さつきあめ)は陰暦で言うところの5月だから、現代で言えば6月に当たるわけなので、正確には梅雨を指すことになるでしょうけれど・・・あまり突っ込まないでください。

 さて、匂い(勾=かどわかす、ではありません)を感じる嗅覚(きゅうかくです、しゅうかくではありません)は、脳神経と言って、脳から直接出る大切な神経のうち(首から上に関しては脳から直接神経が出るものがあり、それ以外は脊髄を介する)、最も頭側にあるので、第Ⅰ脳神経と呼ばれます。

 人間ではだいぶ退化してしまっておりますが、この嗅神経は走行距離も短く、鼻の粘膜の天井にある嗅細胞があって、そこから嗅糸と呼ばれる20本ほどの糸のような神経線維の束となり、頭蓋骨の篩骨篩板(しこつしばん:文字通りふるいのよう)を通って脳の嗅覚中枢へ向かいます。

 学生時代にこの嗅糸を解剖で見たとき、「カイワレダイコン」か「ヒヤシンス」のようだ、と思いました。

 この篩骨篩板を怪我すると、嗅糸はすぐ切れてしまい、匂いがなかなか回復しません。

 また味は舌で感じると医学部でも習いますが、風邪をひいて鼻がつまると、味覚を感じなくなることから、僕は嗅神経が味に関与する割合はかなり高いものと推測しております。

 匂いを感じる物質は、分子量でいうと約30-300くらいで揮発性の低分子有機化合物です。

 分子量とはちなみに、1mol(モル)中のある分子の質量からgを取ったものですから、炭素12が基準となって、6.02×10の23乗個の分子の重さであり、水素は1.0で、酸素はえ~と原子量が16だったから分子量は32でしたっけ

 世の中では匂い物質がなんと数十万種類位存在するとも推測されております。

 嗅覚が退化している人間も1万種類くらいは嗅ぎ分けられるとも言われております。

 最近では人間の癌の臭いをかぎ分ける、訓練犬の話を耳にしております。

 匂いによって、過去の記憶がぱっと連想されて、懐かしい郷愁を覚える体験ってみなさまもありますよね?

 嗅球に電気刺激を与えると活動電位が脳の多くの場所から得られるといいます。

 嗅神経は第Ⅰ脳神経だし、脳に一番近いし、嗅覚は非常にミステリアスな感覚ですね・・。