医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

塔の美観5

2006年08月03日 10時45分36秒 | Weblog
 繰り返しになりますがエッフェル塔の美しさは、まずアーチの美しさと同部の彫刻やレースのようなディテールの意匠、錬鉄をあたかも編んで造ったかのごとくの骨組みの美、そして見せる美意識です。

 サッカーもそうですが、西洋に追いつこうとしても、歴史も文化も芸術も異なるし、オシムが言うように向こうも進歩するので離されますから、日本は日本で独自の美を追求した方がいいと思います。

 今回、押上(おしあげ)の新東京タワーの建築監修は、元プロボクサーにて東大の特別名誉教授・ハーバード大の客員教授であり、「住吉の長屋」で有名な、日本を代表する建築家の安藤忠雄氏と、東京芸大元学長で彫刻家、「そりのある形シリーズ」の澄川喜一氏です。

 この著名なご両人であればこそ、ぜひとも和的な意匠、それこそ竹細工や神殿造り、特に「そり」の澄川氏であれば、「平等院鳳凰堂」に代表される日本古来の美しい「そり」をぜひとも取り入れて、世界に恥じない日本独自のデザイン力を示して欲しいですよね。

 そういう意味では彼らの芸術的センスが「Andoh-Sumikawa塔」と、後世に名を残すことになるかもしれません。

 竹細工や籠(かご)ともりの文化は日本のお家芸だし、籐(とう=ラタン)の編みこみもアジアの特産のはずです。

 例えば夜間、内側からの明かりによって透けて見える骨格と、外側の編みこみの美まで、計算して表現して欲しいと思います。

 外側の色彩ももちろんですし、それとライトアップされたときの影にまで十分気を使ってください。

 全体的なシルエットの美はもちろんのこと、特に細かい部分のデザイン力でもエッフェル塔のような西洋の彫刻やレースに負けないような、日本の和紙や障子やすだれや竹細工を生かした、意匠を凝らして欲しいと思いませんか?

 扇子の骨組み部分の彫り物や、籠目(かごめ)彫りや透かし彫り・・・陽明門や五重の塔・・・日本の伝統芸能や職人さんの匠の技、日本の叡智を注いで欲しいのです。

 見ているだけで香木の薫りが漂うくらいに、美しく気品高く、アジアンにジャポネスクに仕上げて欲しい・・・。

 世界に通用する和の美・・・。

 ヘンに近代化にこだわらないで欲しいと思います。安っぽい未来チックなものや、得体の知れないヘンテコなUFOみたいなタワーや、機能重視の工事現場のようなタワーは見たくありません。

 近代技術と伝統の融合、西洋建築と和の調和・・・、腕の見せ所ではないでしょうか?

 100年以上前のフランス人が実際に成し遂げた、エレベーターを斜めに動かすくらいの心意気を見せてください。

 隅田川にふさわしい、桜やゆかたに花火、屋形船に似合う和の「粋(いき)」をぜひとも具現化してください。

 そしてそれを鑑賞するための水をたたえた緑が彩る空間も、エッフェル塔を参考にして同時に整備して欲しいと思います。

 これだけ大きな建造物を作る責任は重いと思います。

 否が応でも東京の、日本の新しい顔になるわけですから。

 街の風景は政治家と一緒で、その国や住民の民度を反映しますので、みなさんも厳しい眼をもって注意を払いましょう。

 僕たちもパリ市民のように、もっと喧々諤々騒いでもいいと思うのですけれど・・・

 岡本太郎氏や丹下健三氏に届くような会心の力作を期待しましょう。