【記者発】:大阪IR 「ハッピー」になれるか 大阪経済部・井上浩平
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【記者発】:大阪IR 「ハッピー」になれるか 大阪経済部・井上浩平
なんだか「見切り発車」のような気がしてすっきりしない。政府が4月14日に認定した、大阪府・市によるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備計画のことだ。
大阪IRは令和11年秋~冬、人工島の夢洲(ゆめしま)(大阪市)で開業を目指している。米カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人とオリックスを中核株主とする「大阪IR株式会社」が運営を担当。カジノやホテル、国際会議場などを整備し、年間の来場者数は約2千万人、経済波及効果は近畿圏で1兆1400億円を見込む。
同じ夢洲で7年に開催される大阪・関西万博に続く巨大プロジェクトで、関西経済の起爆剤になるとして、誘致を支援してきた関西財界も認定に沸いている―。認定後、そうした構えで取材に当たり、確かに喜びの声が聞こえてきたが、不安も感じられた。
大阪府市の統合型リゾート施設のイメージ(MGMリゾーツ・インターナショナル、オリックス提供
「IRは全てがハッピーというわけではないと思う」。直言居士で知られる関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は認定後の定例会見でこう語った。松本氏はまずは、IRが関西や日本の観光拠点となり、雇用創出などでも広域に経済効果をもたらすことに期待をかけた。
一方で「3つぐらいの問題がある」と指摘。カジノ事業で全体収益の8割を占める計画に課題があるとし、ギャンブル依存症対策にも注文を付けた。収益構造の多様化や、家族で楽しめる施設とする必要があるとの認識も示した。
建設予定地の夢洲自体も、液状化リスクや土壌汚染の問題が出ている。万博と重なる期間の建設工事を円滑に進めることも課題になるだろう。
晴れない気分でいると、全く別の取材で、ものづくりが盛んな大阪府東大阪市で創業した中小企業の社長がこんなことを言っていた。「東大阪ではTTP(徹底的にパクる)が大事といわれますわ」。技術などを盗むのではなく、いいものを取り入れてより良い製品や新しい価値を生み出す考え方だという。
せっかく認定されたのだから、大阪らしく世界の成功例や英知を集めて素晴らしいIRにしてほしい。前向きに考え直していたところで、府市が活用してきたIRのPR動画に美術家の作品を盗用していた問題が発覚。やはり前途多難の船出になりそうだ。
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【プロフィル】井上浩平
元稿:産経新聞社 主要ニュース オピニオン 【経済・コラム・「記者発」】 2023年04月30日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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