《社説②》:国立大付属小のいじめ 誠実さ欠いた対応の遅れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:国立大付属小のいじめ 誠実さ欠いた対応の遅れ
いじめの被害者に寄り添うという基本姿勢を欠いていたと言わざるを得ない。
国立の茨城大教育学部付属小学校で2年前、重大ないじめがあったにもかかわらず、最近まで文部科学省への報告を怠っていた。
当時4年生の女児が、同級生から悪口を言われたことなどが原因で不登校となった。いじめ防止対策推進法で定める「重大事態」に当たり、本来は速やかに報告しなければならない事案だ。
茨城大の太田寛行学長は「付属小と教育学部の認識が不足していた」とのコメントを公表した。文科省が毎年実施しているいじめの件数調査に回答しており、改めて報告する必要はないと思い込んでいたという。
目に余るのは、被害者側への不誠実な対応だ。
女児の母親は今年初め、付属小校長らと面談した際、半年以上前に報告済みと伝えられた。だが、文科省に記録を開示請求したところ、事実でないことが判明した。
重大事態が発生した場合、第三者で構成する組織などによる調査が、法律や文科省の指針で義務付けられている。にもかかわらず、第三者調査を求めた母親に対して、学校側は文書で「必要は無いと判断した」と拒否した。
母親が先月、教育学部の副学部長らと面談した際には、重ねて解明を促した同席の弁護士に「どれだけ調査したら気が済むんだ」との言葉が浴びせられた。
現場の不適切な対応に加え、付属小を抱える大学のガバナンス不全も深刻だ。
報告や調査を見送った判断はどのようにして下されたのか。学長らはなぜ指導できなかったのか。第三者調査で詳しい経緯を明らかにすべきだ。
いじめ防止対策推進法の成立から6月で10年となる。だが、学校や教育委員会が問題に真摯(しんし)に向き合わず、被害を受けた子どもや保護者を一層傷つけるケースがいまだに後を絶たない。
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