【社説②】:復興相らの交代 「適材適所」空疎に響く
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:復興相らの交代 「適材適所」空疎に響く
岸田文雄首相が、秋葉賢也復興相を交代させた。
秋葉氏は自身の政治団体事務所の賃料を妻らに支払った問題や、昨年の衆院選で秘書二人に給与とは別に計二十万円の車上運動員報酬を支払った運動員買収疑惑を先の臨時国会で追及され、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との新たな接点も指摘されていた。
閣僚辞任は当然でも遅きに失した判断だ。「適材適所」と言い続けた首相の言葉が空疎に響く。
野党の辞任要求を拒否していた首相が交代に踏み切ったのは、来年一月召集の通常国会で二〇二三年度予算案審議への影響を避けるためだろう。だが時機を逸した受け身の人事であり、約二カ月で四閣僚が交代する異例の事態だ。
首相の任命責任が厳しく問われるのは当然であり、政権担当能力に対する疑問が突き付けられても仕方があるまい。
後任の渡辺博道復興相は、自らが閣議決定に加わっていない二三年度の復興予算について通常国会で説明することになる。首相は秋葉氏を交代させるなら、予算編成前にすべきではなかったか。
岸田内閣は防衛費を大幅に増額するため、復興特別所得税を流用する方針を決めている。秋葉氏の復興相起用や約四カ月で交代させたことの妥当性と合わせて、復興道半ばの被災地に寄り添う姿勢が疑われて当然である。
首相は性的少数者への差別発言を批判された杉田水脈総務政務官も交代させた。
秋葉氏とともに問題を抱える人物を年内に政府から一掃したかったのだろうが、そもそも衆院議員としての資質も欠くような人物をなぜ政務官に登用したのか。首相は説明責任を果たすべきだ。
国会審議中は擁護し、閉会の途端に交代させるような人事は、あまりにも場当たり的である。
秋葉氏、寺田稔前総務相の辞任や薗浦健太郎前衆院議員の辞職につながった「政治とカネ」の問題は全く手付かずだ。法律をつくる国会議員が順法精神を欠くような深刻な事態を招いた背景に、政権復帰十年を迎えた自民党の緩みがあるなら、根は深い。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年12月28日 08:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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