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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【卓上四季・05.02】:ぼくの好きな先生

2024-05-05 05:05:20 | 【文科省・教育制度、現場の実態把握・教員の資質・不登校・文化庁・

【卓上四季・05.02】:ぼくの好きな先生

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・05.02】:ぼくの好きな先生

 先生はたばこと絵の具の匂いがした。ぼくと同じように職員室が好きじゃない。いつも一人きりでキャンバスに向かって絵筆を動かしている。遅刻の多いぼくを困ったような顔で注意したり、すてきな話をしてくれたりした

 ▼初期のRCサクセションを代表する曲「ぼくの好きな先生」だ。忌野(いまわの)清志郎さんが高校時代の恩師、小林晴雄さんをモデルにした。美術室の隣の部屋で絵を描き、おおらかな人柄であった。教え子から慕われた

 ▼どこかに余裕があり、四角四面ではない。小さなことにこだわらず、授業中の雑談がおもしろい。かつての学校にはそんな先生が何人もいたような気がする。変わったと言われ始めたのはいつごろからだろうか

 ▼事務処理や会議に追われ、授業の準備がしっかりとできない。残業を含めて仕事の時間が長く、いつも疲れている。本当は子どもとじっくり向き合いたいのに。先生の労働環境の厳しさが問題となって久しい。学生が教職を敬遠する動きも広がっている

 ▼先生の待遇や働き方の改善を急ぐ必要がある。そのための対策を文部科学省が検討している。仕事に見合った給料を出し、十分な人員をつける―。教育の質を保つには、この当たり前の前提を忘れてはならない

 ▼15年前のきょう、清志郎さんは亡くなった。小林さんもその9年後に旅立った。いまごろ、学びやの思い出を語り合っているかもしれない。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2024年05月02日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.01】:自転車に青切符 安全通行につなげたい

2024-05-05 05:05:15 | 【不慮の事故・自動車事故・予期せず、意図せず、発生する惨事、火災他】

【社説・05.01】:自転車に青切符 安全通行につなげたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.01】:自転車に青切符 安全通行につなげたい 

 自転車の交通違反に「青切符」を交付し反則金を納めさせる制度の導入を柱とする道交法改正案が、衆院を通過した。成立すれば2年以内に施行される。
 
 自転車の違反にはこれまで、重大なケースを除いて多くは罰則のない指導や警告が出されてきた。
 それを大きく転換し、取り締まりの網を広げる。
 背景に事故の増加がある。自転車側の違反が目立つ。道内も昨年は自転車が起こした死傷事故が100件と前年より増えた。
 電動アシスト付きなど高性能な自転車が普及し、配達の自転車も行き交うようになっている。利用者にルールに沿った走行を促す必要性は高まっていると言える。
 自転車は本来、環境に優しく健康にも寄与する乗り物だ。
 それが「走る凶器」にならないよう、新制度を安全な通行空間の確保につなげたい。
 青切符は車やバイクの比較的軽微な違反に適用されてきた。それを自転車にも導入する。
 16歳以上が対象で、信号無視や一時不停止などを主に取り締まる。こうした行為で警察官の注意に従わなかったり、危険を生じさせたりした場合の交付を想定しているという。
 酒酔い運転など重大違反は刑事処分に進む「赤切符」の対象だ。
 違反の種類や危険度から警察が青か赤かを判断するのは分かりにくさもある。恣意(しい)的な運用があってはならない。
 取り締まりが行き過ぎないよう、参院審議では運用指針や該当例をより明確にすべきだろう。改正内容を広く周知し、交通安全教育を徹底することも重要になる。
 自転車は軽車両に分類され、やむを得ない場合を除き車道の左側を走行するのが原則だ。
 しかし車が高速で走り、路上駐車も多い車道に危険を感じ歩道を使う自転車は多い。自転車専用レーンなどが足りていない現状では仕方のない面がある。国や自治体は整備を本格化させるべきだ。
 一方で、歩道をスピードを出して走る自転車に危ない思いをした人も多いだろう。接触や衝突は重大事故になりかねない。
 自転車利用者は、あくまでも歩行者の安全が最優先であることを肝に銘じたい。
 改正案には、車が自転車を追い抜く際に安全な速度で進むよう義務付ける規定も盛り込まれた。
 車のドライバーは、車道を自転車と共有する意識を持つことが大切になる。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季・05.01】:型通り

2024-05-05 05:05:10 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【卓上四季・05.01】:型通り

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・05.01】:型通り

 昨年まで最年少名人獲得の記録を保持した谷川浩司さんは対局中、めったに膝を崩さないことで知られる。「正座をしないと、いい将棋が指せません」。理由を尋ねた作家高田宏さんにそう答えたそうだ

 ▼身心一如(しんしんいちにょ)というものだろう。身体のかたちの取り方一つで深い思想に達するような感覚があるとは高田さんの実感である

 ▼曹洞宗の開祖道元禅師の教えに「坐禅(ざぜん)は則(すなわ)ち大安楽の法門なり」という1行がある。修行によって心身一体化の境地に達すれば、人の力を最大限に発揮できるという(「道元を語る」かまくら春秋社) 

 ▼解剖学者養老孟司さんによると、「型」とは身体の扱いや所作のことであり、いつの間にか動き出して終わっているような意識レベルのこと。谷川さんの棋力も「型」に根ざしたものだったのかもしれない

 ▼曹洞宗大本山の一つ、総持寺の祖院は石川県輪島市にある。能登半島地震で国の有形文化財が半壊するなど大きな被害があった。門前町の商店街も被災。2007年の地震からの完全復興を宣言してから3年足らず。地域の落胆と絶望は計り知れない

 ▼道元が日常の行動を細かく定めたのは心身の分かち難さを理解していたからだ。型の完成には鍛錬が不可欠。内実を伴わなければ「型通り」に終わるもの。それは、発生から4カ月を経てなお倒壊家屋の解体すらままならぬ被災地の復興支援にも言えることである。 

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2024年05月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.05】:こどもの日 子の権利は地域の未来だ

2024-05-05 05:04:55 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【社説・05.05】:こどもの日 子の権利は地域の未来だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.05】:こどもの日 子の権利は地域の未来だ 

 きょう5日は「こどもの日」。国民の祝日法は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」と定める。国連の子どもの権利条約でも、子どもは守られる対象であるだけでなく、権利を持つ主体であることを明確にしている。

 次の時代を切り開く子どもたちの権利を守ることは、地域の未来を守ることだ。一人の人間として向き合い、健やかな成長に寄り添いたい。
 コロナ禍が直撃した家計に物価高騰が拍車を掛け、子どもたちを巡る状況は厳しさを増している。
 2022年度の沖縄子ども調査では、19年度の調査と比べて困窮層の割合が5.9ポイント上昇し、経済的に厳しい世帯が増えた。低所得層の生徒ほどきょうだいの世話や家族の介護・看病をする時間が長く、保護者とともに抑うつ傾向が高かった。
 調査ではヤングケアラーと貧困が重なる時、「子どもの権利」が大きく侵害される可能性があるとした。
 今国会で、児童手当の拡充を柱とした少子化対策関連法案が審議されている。将来の不安なく安心して子育てができるように、経済的な手だてを講じることは喫緊の政治課題だ。しかし、公的医療保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金」の創設は、現役から高齢者まで幅広い世代に負担を広げる。結局、所得の低い人ほど負担が重くなってしまう。
 経済格差を解消しなければ少子化対策も意味をなさない。子育て支援、所得の改善、物価高対策に大胆に財源を充てることだ。歯止めなく膨張する防衛費を見直せば、国民に新たな負担を求めることなく財源を捻出できる。
 子育ての負担軽減には、育児は女性の役割という固定観念が根強くあることも改めないといけない。総務省の調査によると、6歳未満の子どもがいる共働き世帯では女性の育児時間が1日に3時間24分なのに対し、男性は1時間3分にとどまる。
 性別に関係なく仕事に就き、社会で活躍していくことが当たり前の時代に、女性だけが仕事と家庭の両立を求められるのはあまりに時代錯誤であり、不公平だ。男性の育児参加を広げることで、子育てしやすい環境や制度の議論がより進むはずだ。
 若年妊産婦が社会の中で孤立しないための支援も重要だ。沖縄は10代で出産する女性の割合が全国に比べて高い。10代での出産は周囲に相談しにくかったり、パートナーや家族の支援が得られなかったりする場合がある。
 経済力が乏しい若年世代が孤立すると、家庭内のドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待、育児放棄につながるリスクが高まる。予期せぬ妊娠で学業を諦め、貧困の連鎖を招いてしまうことも防がなければならない。
 子どもたちの権利を守る、大人の決意が問われている。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・05.05】:子ども見守る義務

2024-05-05 05:04:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【金口木舌・05.05】:子ども見守る義務

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・05.05】:子ども見守る義務

 この春から子どもたちの希望もあり、学童通園をやめた。わが家は共働きのため、下校から一時的に見守る人がいなくなる「鍵っ子」になった

 ▼欧米では、これを「放置」と見なすことがある。例えば、米メリーランド州は8歳以下の留守番は処罰対象と なる。児童だけで行動させることに厳しい目が向けられる
 ▼子どもが犯罪に巻き込まれる危険性が高いことが背景にある。世界では子どもの年間行方不明者が数十万人以上にも上るという。1979年に米国で起きた誘拐事件を機に「国際行方不明児童の日」(5月25日)が制定されている
 ▼県内では「子どもの貧困」が横たわっている。親から放置されている子ども、しっかり食べることができない子どもがいることを忘れてはならない。一刻も早く救いの手を差し伸べたい
 ▼県は子どもの貧困対策に注力するため、今年4月に「こども未来部」を新設した。社会全体で子どもたちを見守ることができる環境を築かねばならない。どの子も「こどもの日」を祝える沖縄社会にすることは大人たちの責務である。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年05月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.04】:駐日米大使先島視察 軍事利用拡大は許されぬ

2024-05-05 05:04:45 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説・05.04】:駐日米大使先島視察 軍事利用拡大は許されぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.04】:駐日米大使先島視察 軍事利用拡大は許されぬ 

 米国のラーム・エマニュエル駐日大使が17日、石垣市と与那国町を訪問する。陸上自衛隊駐屯地の視察や首長との面会も調整している。米軍は「人員輸送」を目的に新石垣空港と与那国空港の使用を県に申請している。大使訪問に関連するものであろう。

 駐日大使の先島訪問と首長面談は異例である。部隊派遣や訓練など、米軍の活動への理解を得る狙いがあるとみられるが、地域住民の平穏な生活に逆行するものだ。隣国との緊張を招くことになりかねない。慎重な行動と発言を求めたい。
 南西諸島の民間空港・港湾の使用拡大は日米両政府の既定方針だ。2022年12月に政府が閣議決定した安保関連3文書は民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を明記した。23年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)はこの方針を日米双方に拡大することを確認した。
 さらに政府は今年4月、有事の際の自衛隊・海上保安庁による使用に備えて整備する「特定利用空港・港湾」に那覇空港や石垣港を含む7道県16カ所を選定した。
 このような流れの中で、先島における空港・港湾の軍事利用は一層拡大する可能性がある。23年9月に米軍の掃海艦、今年3月にはミサイル駆逐艦が石垣港を使用している。今回の両空港の使用申請はその一環と言えよう。駐日米大使訪問に名を借りた軍事利用拡大を容認するわけにはいかない。
 同時に注視しなければならないのは、自衛隊強化が急速に進む石垣、与那国を訪問する政治的メッセージである。2016年開設の与那国駐屯地、23年開設の石垣駐屯地の視察は、台湾情勢を念頭に自衛隊と米軍の連携をアピールし、中国を牽制(けんせい)する意図があると考えられる。
 20日には1月の台湾総統選で勝利した頼清徳氏が就任するという微妙なタイミングでもある。この大使訪問は中国を刺激することになろう。軍事的な緊張感が高まるようなことがあってはならない。さらなる自衛隊増強や有事を前提とした空港・港湾整備などの軍事拠点化が先島で加速することになりかねない。
 エマニュエル駐日大使は22年4月に来県し、玉城デニー知事と面談した際に「沖縄は日米にとって戦略的に重要な場所にある」との考えを示している。23年3月、日米同盟強化に伴う沖縄の基地負担増について報道陣に問われ、「自由で開かれたインド太平洋を守るための責任だ。負担ではない」と反論している。沖縄を含め「米軍と基地の所在市町村は非常にいい関係だ」とも述べている。
 在沖米軍基地による基地被害、県民の負担への認識が欠けているのではないか。同じような態度で石垣、与那国の軍事利用を迫るようなことは到底許されない。先島地方をはじめ沖縄は日米同盟の防波堤ではないのだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・05.04】:過去に目を閉ざす者

2024-05-05 05:04:40 | 【第二次世界大戦・軍部の功罪・戦後80年・靖国神社・東京大空襲他の犠牲者への補償

【金口木舌・05.04】:過去に目を閉ざす者

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・05.04】:過去に目を閉ざす者

 「昭和レトロ」がブームだ。昔懐かしい喫茶店やテーマパークが人気を博す。4月29日の「昭和の日」もあり、脚光を浴びた。一方、現在の元号「令和」はいつの間にか1日で5年の節目を迎えていた

 ▼令和を強く意識させられたのは最近のこと。文部科学省が来春から中学校で使う歴史教科書の検定で「令和書籍」の2冊を追加合格にした
 ▼令和書籍は明治天皇のやしゃごで作家の竹田恒泰氏が代表を務める。竹田氏はユーチューブチャンネルで、沖縄について「かなり紙面を割いた」と主張する
 ▼だが、沖縄に関する記述は重要な側面が欠けている。沖縄戦での旧制中学生らの動員を「志願のかたち」と表現しつつ、天皇の戦争責任や戦後に沖縄の軍事占領を望んだ「天皇メッセージ」には触れずじまい
 ▼「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」。ワイツゼッカー元ドイツ大統領の有名な言葉だ。「新しい戦前」を想起させる軍備増強が沖縄で進む。沖縄の不幸な歴史に目を閉ざせば、今の沖縄の苦悩も見えない。件(くだん)の教科書はどうだろう。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年05月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.03】:法施行77年 総裁任期で改憲せかすな

2024-05-05 05:04:35 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【社説・05.03】:法施行77年 総裁任期で改憲せかすな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.03】:法施行77年 総裁任期で改憲せかすな 

 日本国憲法の施行から77年を迎えた。国会で憲法改正に前向きな勢力は改憲発議に向けて議論を急いでいる。しかし、国民の大半は「急ぐ必要はない」との考えだ。国内で改憲の機運や議論が盛り上がっているとは言えない。慎重な議論を重ねるべきだ。

 共同通信が実施した郵送方式の世論調査で、改憲の議論を「急ぐ必要はない」が65%だったのに対し「急ぐ必要がある」は33%にとどまった。
 岸田文雄首相は自民党総裁任期の9月までを改憲目標としている。世論調査では改憲が「必要」「どちらかといえば必要」が合計で75%となったが、その中でも改憲を「急ぐ必要がある」は41%だった。
 そもそも改憲論議は総裁任期に合わせてせかすような性質のものではない。国民がついていかないのは当然ではないか。改憲を目指す自民、日本維新の会の支持層でも「急ぐ必要がある」は46%だった。改憲に理解を示す層でも期限を切った論議を是とはしていないのだ。
 9条改正については必要性が「ある」が51%、「ない」が46%と拮抗(きっこう)した。
 憲法9条は戦力不保持を規定するが、政府は自衛権は認められていると説明し、自衛隊を設置した。それにとどまらず、解釈改憲を重ねることで自衛隊の配備、増強を進めてきたのである。
 集団的自衛権の行使を可能とする安全保障法制については憲法学者や専門家から憲法違反の指摘を受けながら可決、成立させてきた。
 長距離ミサイルなど敵基地を攻撃する能力の保有は戦後日本の安保政策の大転換にもかかわらず、これを閣議決定で推し進めてきたのだ。
 これらの軍事増強の動きに対し、憲法は一定の歯止めとなってきた。国民の理解が得られない速さで改正を推し進め、憲法を形骸化させるような拙速な論議は戒められなければならない。
 沖縄の施政権返還から今月で52年となる。返還と同時に沖縄にも実効性をもって憲法が適用されることになったが、その理念が現時点でも十分に生かされているとは言い難い。沖縄への基地の押しつけはその最たるものだ。日米安保体制の重圧を沖縄が背負い続けている実態は法の下の平等に反する。
 辺野古新基地を巡り、沖縄県行政の権限を無視するような国の姿勢は憲法の地方自治の規定にそぐわない。改憲を急ぐよりもその理念を軽んずるような国の姿勢こそ見直されるべきである。
 社会の在り方やニーズの多様化で、改憲の論点も9条改正だけではなく、同性婚や衆院解散権などさまざまだ。
 新たな権利の確立が必要だとして改憲に理解を示す人たちも多いだろう。一方で教育の充実や参院選挙区の合区など項目によっては法制度の改定によって対応できるものもあろう。論点をより整理することが先決だ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・05.03】:雨に洗われた土の中から

2024-05-05 05:04:30 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【金口木舌・05.03】:雨に洗われた土の中から

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・05.03】:雨に洗われた土の中から

 渇水から一転、連続の大雨でダムの水が増えるごとに安心する。一方、こんなに連日雷の鳴る荒れた春はあったかと思い返す
 ▼雨に洗われた土の中から沖縄戦の不発弾が姿を現した。米軍嘉手納基地内の格納庫新設地で見つかった225キロの爆弾と、うるま市の津堅島の畑で見つかった三つの81ミリ迫撃砲弾
 ▼嘉手納基地では発見2日後に設定した処理日の朝になって住民に周知する事態となり、地域が振り回された。80代男性は「人のやることには間違いがあるから心配だ」と避難所に来た
 ▼米軍が沖縄戦で浴びせた弾薬は20万トン超。戦後も不発弾の爆発で多くの県民が亡くなった。まだ1878トン あると推測される。日本軍の陣地があった津堅島にも大量の弾薬が撃たれた。今回現れたのはそのうちの三つか。地上戦もあり、住民も巻き添えにされた
 ▼ロシア侵攻2年で3割もの国土が地雷や不発弾で傷つくウクライナで、子どもたちに危険性を知ってもらうため、赤十字がすごろくを配布したという。戦争は人間にろくな物を残さないと痛感する。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年05月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.02】:校則イエローカード 弊害が明らかなら廃止を

2024-05-05 05:04:25 | 【文科省・教育制度、現場の実態把握・教員の資質・不登校・文化庁・

【社説・05.02】:校則イエローカード 弊害が明らかなら廃止を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.02】:校則イエローカード 弊害が明らかなら廃止を 

 半嶺満県教育長は本紙のインタビューで、校則違反などの回数に応じて段階的に重い処分を生徒に課す県立高校の指導法「イエローカード」について、「廃止も含めて検討する」との方針を示した。

 2021年に県立コザ高校で2年(当時)の空手部男子生徒が自ら命を絶った問題を調べた第三者再調査委員会は、調査報告書でイエローカードの廃止や見直しを提言している。コザ高校は既にこの制度を廃止している。
 指導法の妥当性について検証すべき時期に来ている。生徒に不要な心理的負担を強いることが指摘されているからだ。弊害が明らかならば廃止に踏み切るべきだ。
 イエローカードは校則違反で生徒を指導する際に出されるもので、発行枚数が増えるほど罰則が重くなる。コザ高校の場合、違反1回目は「注意」、2回目は「反省文」となり、5回目は「停学」、6回目以降は「懲戒規定に準ずる」などと定めていた。
 この指導法はコザ高校以外でも「学校生活改善カード」などの名称で導入している。再調査委の報告書は「生徒たちに学校教師に対して発言することや、異議申し立てを諦めさせる形で機能することが特徴」と指摘し、「生徒が自死に至る心理的変化を発見できなかったことの遠因となった可能性がある」としている。
 報告書の指摘は重い。学校側にとっては生徒の問題行動の抑止になるかもしれないが、生徒と教師の円滑な対話がないままカード発行によって罰を課すような指導は生徒を精神的に追い込むことになろう。罰則を前提としたカード発行は好ましい生徒指導とは言いがたい。
 半嶺教育長は本紙に「元々、子どもたちに説明しながら段階的に指導していくという趣旨で行われていたと理解している。それが形式的になり、指導が目的となってしまった部分がある」と述べた。学校現場での運用状況を反映した発言であろう。十分な対話を経ないまま生徒の行動を形式的に基準に当てはめ、罰則を課す運用が常態化しているならば、継続の必要性は乏しいのではないか。
 イエローカードのように、規則に違反した場合のペナルティーを定めて運用する指導法は「ゼロ・トレランス(寛容度ゼロ)」と呼ばれている。クリントン政権以来、米国の教育現場で導入された。
 日本では2006年、文部科学省がこの指導法に関する手引を全国の学校に配布している。文科省は、学校ごとに明確なルールを定め、小さな違反も見逃さない一貫した対応が可能になるという利点を挙げている。半面、生徒の個性を無視し、一律の基準で生徒に罰を課す指導法に対する弊害も指摘されてきた。
 県教育庁や各学校現場はイエローカードの運用実態を早急に検証する必要がある。その上で制度存廃の是非を議論してほしい。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月02日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・05.02】:両性は本質的に平等だ

2024-05-05 05:04:20 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【金口木舌・05.02】:両性は本質的に平等だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・05.02】:両性は本質的に平等だ

 NHKの連続テレビ小説「虎に翼」は日本初の女性弁護士の人生を描く。ドラマでは、戦前の民法下における妻に対する夫の差別を取り上げており、じっくり見入った

 ▼旧民法で妻の財産は夫の管理と明文化されていた。ドラマの見どころは、暴力で夫婦関係が破綻した場合も、夫はこの規定を盾に妻の財産管理権を主張できるかという法廷での審理
 ▼結論は夫の主張を裁判所は退けた。いくら権利でも乱用を法は許さない。敗訴した夫のせりふが強引だ。「俺は絶対、お前と離婚しないからな。お前だけ幸せになるなんて絶対許さない」
 ▼ここからは民法を巡る現実の話。離婚後の共同親権導入に向けた民法改正案が気になる。参議院で審議が進むが、衆院では自民党議員が「離婚しづらい社会が健全だと思う」と発言し、波紋を広げた。これでは離婚を望む配偶者を縛り付けてしまう
 ▼親権を盾に、子と元配偶者を暴力的に支配することがあってはならない。3日で施行から77年になる憲法は両性の本質的平等と夫婦同権を定めているではないか。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年05月02日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.01】:嘉手納パラ訓強行 「例外的」は通用しない

2024-05-05 05:04:15 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【社説・05.01】:嘉手納パラ訓強行 「例外的」は通用しない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.01】:嘉手納パラ訓強行 「例外的」は通用しない

 米軍嘉手納基地を運用する米空軍第18航空団の司令官ニコラス・エバンス准将が、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練について「当分、毎月1回行い、次回は5月末を予定している」と明言した。

 嘉手納基地でのパラシュート降下訓練は日米特別行動委員会(SACO)合意に反している。県や地元自治体は再三、実施しないよう求めてきた。同盟国との約束を破り、県民の安全をないがしろにすることに悪びれる様子もない。
 米軍の傍若無人は度が過ぎていないか。合意を盾に中止を求めるわけでもなく、米軍の言いなりに訓練を容認する日本政府の対応も理解しがたい。国民の安全や安心を脅かす主従関係を続ける両政府に断固として抗議する。
 パラシュート降下訓練は1996年のSACO最終報告で読谷から伊江島へ移転された。しかし、日米両政府は2007年に「嘉手納基地を例外的な場合に限って使用」と追加合意し、基地負担の軽減よりも米軍の運用を優先する抜け道をつくった。
 その結果として、嘉手納基地での降下訓練が繰り返され、昨年12月からは5カ月連続で実施された。米軍は、伊江島補助飛行場の滑走路の状態悪化を嘉手納基地での訓練実施の理由に挙げている。米側は改修工事を進めているが、完了まで1年半程度かかると見込まれている。
 木原稔防衛相は「嘉手納で定期的に行われる訓練ではない」と述べるが、米軍側は月1回訓練を実施すると明言しており、矛盾が生じている。「例外的な場合」という言い訳は全く通用しない。
 なし崩し的に嘉手納基地で訓練を強行する米軍の横暴な態度と同様、日本政府の不作為も許されない。
 嘉手納基地は、住宅地など人の行き来のある民間地に隣接する場所もある。県民が巻き込まれる事故が起きたとしても、日米地位協定上、公務中の事故として扱われるため日本側の捜査当局に調査権はなく、原因究明や再発防止を徹底させることはできない。
 読谷補助飛行場で米軍のパラシュート降下訓練が実施されていた当時、兵員が目標地点に降下できず、民家や農地などに誤って降下することがたびたび発生した。1965年6月には、小型トレーラーが民家に落下し、小学生の女児が圧死する事故が起きている。こうした悲劇を繰り返さぬよう、県や近隣市町村は嘉手納基地での降下訓練の中止を強く訴えているのだ。
 嘉手納基地だけでなく伊江島やうるま市の津堅島沖で実施するパラシュート降下訓練に対しても県民は強い抵抗感を抱いている。米国と「対等な同盟関係」を掲げるならば、日本政府は「毎月1回」の訓練を公言した米空軍第18航空団の司令官に抗議し、訓練中止を求めるのが本来の姿だ。日米両政府は日米合意違反の訓練を今すぐやめるべきだ。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・05.01】:一本の柞(クスノキ)

2024-05-05 05:04:10 | 【環境問題(公害・排ガス・治水・産廃・水俣病・アスベスト・有機フッ素化合物

【金口木舌・05.01】:一本の柞(クスノキ)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・05.01】:一本の柞(クスノキ)

 三好達治賞を受賞した与那覇幹夫さんの詩集「時空の中洲で」に「柞(イスノキ)」という作品がある。与那覇さんの出身地・宮古島は水不足に苦しんできた地域。男の子が生まれると親は柞を植える

 ▼楕円(だえん)形の葉が雨水を蓄える。幹に結わえたクバの葉とかめをつないで雨水をためる。柞はふるさとを離れた詩人の原風景か。詩に刻んでいる。「一本の柞の大木が、待ち疲れた様相で、夢の中に度々顕れる」
 ▼民は雨を求め、輪になって舞った。宮古の伝統芸能に雨乞いの集団舞踊「クイチャー」がある。3月末、在沖野崎(ヌザキィ)クイチャー保存会が倉敷ダムでクイチャーを踊った。踊りの前から小雨がぱらつき、やがて本降りになった
 ▼沖縄地方で少雨傾向が続いていたが、クイチャーの祈りが届いたのだろうか。4月は雨が続き、ダムの貯水量は徐々に回復しつつある。しかしまだ、油断はできない
 ▼沖縄の伝統的な集落には、井戸があり、わき水があった。節水の意識も定着していた。暮らしの中で小さな水がめを守っていた先人たちの時代に学ぶことは多い。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年05月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・04.30】:衆院3補選自民全敗 政治とカネ 国民の信問え

2024-05-05 05:04:05 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説・04.30】:衆院3補選自民全敗 政治とカネ 国民の信問え

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・04.30】:衆院3補選自民全敗 政治とカネ 国民の信問え

 衆院の3補欠選挙で自民党が全敗した。東京15区と長崎3区は自民現職の不祥事で候補者を立てられず不戦敗で、与野党対決となった島根1区でも大敗した。裏金問題による逆風が最大の要因だが、旧統一教会問題を含め積み重なる自民党への不信感の結果だ。自民党の存在意義が問われる事態である。

 早速、岸田文雄首相の求心力の低下、解散総選挙や自民党総裁選への影響など、政局に焦点が当たっている。しかし政局より、この国会で政治とカネの問題に決着をつけられるかどうかがより重要だ。
 自民党は結局、裏金問題の解明をしなかった。この仕組みを誰がいつ始めたのかは明らかにされず、裏金の使われ方も不明だ。第三者委員会による調査はもとより国会での証人喚問も見送った。にもかかわらず曖昧な基準で大甘な処分を決定した。
 政治資金規正法改正の自民党独自案は、政治資金や政策活動費の透明化、企業・団体献金の是非など、指摘されてきた課題を避けている。岸田首相にやる気はなく、自民党自体に信頼回復をしようという決意は見えない。
 岸田首相は2021年9月の総裁選に勝利し、首相に就任してすぐに解散総選挙を断行して勝利した。25年参院選まで「黄金の3年間」を得たはずだったが、22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに自民党と旧統一教会の深い関係が大問題となった。
 これもきちんと解明することをせず、その後、旧統一教会絡みで細田博之衆院議長や盛山正仁文部科学相の問題が出た。細田氏は病気を理由に議長を辞職し、盛山文科相への辞任要求は突っぱねた。説明責任を果たさないまま細田氏は死去し、島根1区の補選となった。これらの不信の積み重ねが今回の選挙結果につながったことは間違いない。
 残念なのは、東京15区40・70%、長崎3区35・45%、島根1区54・62%と、3選挙区とも投票率が大きく下がり、過去最低となったことだ。政治不信の深まりで、国民に無関心と諦めが広がっている。この流れをどう止めるか、与野党ともに問われている。
 安倍首相、菅義偉首相、岸田首相と続く政権は、憲法解釈の変更で集団的自衛権行使容認に踏み込み、戦争体制に向かう法律を次々と作った。大軍拡政策を展開し、武器輸出に道を開き、戦争の準備を進めている。与党だけの議論で閣議決定し、国会で追及されても空疎な答弁を繰り返してきた。経済政策や少子化対策の財源問題も同様で、国民の政治不信を深めてきた。
 自民党が多数を占める国会で、あるべき政治資金規正法改正ができるとは考えられない。同法改正を第一の争点に、国民に信を問うべきではないか。総選挙では、この間の外交・防衛政策や経済政策の是非、自公政権の総括も行い、国民の諦めと無関心の流れを反転させるべきである。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年04月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.05】:「こどもの日」と平和 学び行動 続ける努力を

2024-05-05 05:03:55 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【社説・05.05】:「こどもの日」と平和 学び行動 続ける努力を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.05】:「こどもの日」と平和 学び行動 続ける努力を

 きょうは「こどもの日(ひ)」。戦後(せんご)間(ま)もなくできた「祝日(しゅくじつ)」を決(き)める法律(ほうりつ)で最初(さいしょ)に定(さだ)められた九(ここの)つの祝日の一(ひと)つです。

 祝日を選(えら)ぶに当(あ)たり当時(とうじ)の国会(こっかい)が第一(だいいち)の基準(きじゅん)としたのは「新(あたら)しい憲法(けんぽう)に沿(そ)っていること」でした。

 世界(せかい)に例(れい)がない「こどもの日」は、平和(へいわ)憲法の下(もと)で新(あら)たな国(くに)づくりへ、子(こ)どもたちにかけた期待(きたい)の大(おお)きさの表(あらわ)れでもあったのです。

 その子どもたちから今(いま)、平和を求(もと)める声(こえ)が上(あ)がっています。

 最近(さいきん)では2021年(ねん)、核兵(かくへい)器(き)を持(も)ったり造(つく)ったりすることを禁(きん)じる国連(こくれん)の「核兵器禁(きん)止(し)条約(じょうやく)」に賛成(さんせい)するよう日本(にほん)政府(せいふ)に求める署名(しょめい)活動(かつどう)が、全(ぜん)国(こく)の高校生(こうこうせい)たちによって実施(じっし)されました。

 中心的(ちゅうしんてき)な役割(やくわり)を担(にな)ったのは、平和について学(まな)び行動(こうどう)するサークル「高校生平和ゼミナール」です。1978年に広島(ひろしま)で誕生(たんじょう)し、その後(ご)各地(かくち)に広(ひろ)がりました。

 県内(けんない)からも高校生3人(にん)が参(さん)加(か)。その一人(ひとり)、4月(がつ)に京都(きょうと)の大学(だいがく)へ進学(しんがく)した上原(うえはら)一路(ひろ)さん(18)に、平和に関心(かんしん)を持ったきっかけを聞(き)きました。

外務省で質問する上原一路さん(左)=2022年

外務省で質問する上原一路さん(左)=2022年

                      ■    ■

 きっかけの一つは小学(しょうがく)4年生の頃(ころ)に家族(かぞく)で名護市(なごし)の「瀬嵩(せだけ)の浜(はま)」を訪(おとず)れた時(とき)のこと。貝(かい)一つ一つに名前(なまえ)があると母親(ははおや)から聞き、「面白(おもしろ)そう」と思(おも)ったそうです。

 同時(どうじ)に知(し)ったのは、基地(きち)を造るためこの海(うみ)がもうすぐ埋(う)め立(た)てられるということ。「きれいな海をなぜ埋め立てるの?」と疑問(ぎもん)が湧(わ)きました。

 6年生の時には学校(がっこう)の勧(すす)めで平和ガイド講習(こうしゅう)に参加。最初(さいしょ)は嫌々(いやいや)でしたが、お年寄(としよ)りが子ども時代(じだい)に経験(けいけん)した沖縄戦(おきなわせん)の話(はなし)を聞き、もっと知りたいと思うようになったのです。

 「平和と言(い)うとハードルが高(たか)いようだけど、平和は身近(みぢか)な問題(もんだい)」と上原さん。「なぜ」と「知りたい」を重(かさ)ねて考(かんが)えるようになったと話(はな)してくれました。

 小橋川(こばしがわ)仁菜乃(ひなの)さん(16)も身近なことから平和に関心を持った一人です。

 昨年(さくねん)、うるま市の自宅(じたく)から徒歩(とほ)10分(ぷん)の場所(ばしょ)に自衛隊(じえいたい)の訓(くん)練場(れんじょう)ができると聞いて「静(しず)かな環境(かんきょう)はどうなるんだろう」と不安(ふあん)になりました。

 母親と一緒(いっしょ)に住民(じゅうみん)説明会(せつめいかい)に参加。中学(ちゅうがく)で習(なら)った憲法を思い出(だ)し、防衛省(ぼうえいしょう)の担当者(たんとうしゃ)に「なぜ9条(じょう)があるのに訓練をする必要(ひつよう)があるのか」と疑問をぶつけました。

 答(こた)えは早口(はやくち)で、ほとんど聞き取(と)れなかったそう。一方(いっぽう)、建設(けんせつ)反対(はんたい)の声の高まりを受(う)け、防衛省は先月(せんげつ)、計画(けいかく)の撤(てっ)回(かい)を決めました。

                      ■    ■

 「おかしい」と思ったら声を上げること-。2人の経験(けいけん)は、私(わたし)たちに大切(たいせつ)なことを教(おし)えてくれています。

 今もいろんな国(くに)で戦争(せんそう)や紛(ふん)争が起(お)きており、平和は当たり前(まえ)ではありません。

 戦後80年近(ちか)く日本が戦争をしなかったのには「戦争の放(ほう)棄(き)」を定めた憲法9条が大きく影響(えいきょう)しています。

 一方、その憲法には自由(じゆう)と権利(けんり)は「不(ふ)断(だん)の努力(どりょく)によって保持(ほじ)する」ともあります。

 平和であるためには常日頃(つねひごろ)からの国民の努力が重要(じゅうよう)なのです。

 一人一人が考え、異(こと)なる考えであれば話し合(あ)い、争(あらそ)いを避(さ)けるために行動(こうどう)する。平和はそうした積(つ)み重ねでしかつくれないことを、大人(おとな)も子どもも知る必要があります。

 そして、すでにそれを実践(じっせん)している子どもたちの声は、尊(そん)重(ちょう)されるべきだと思います。

(写図説明)外務省で質問する上原一路さん(左)=2022年

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月05日  05:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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