【卓上四季・05.02】:ぼくの好きな先生
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季・05.02】:ぼくの好きな先生
先生はたばこと絵の具の匂いがした。ぼくと同じように職員室が好きじゃない。いつも一人きりでキャンバスに向かって絵筆を動かしている。遅刻の多いぼくを困ったような顔で注意したり、すてきな話をしてくれたりした
▼初期のRCサクセションを代表する曲「ぼくの好きな先生」だ。忌野(いまわの)清志郎さんが高校時代の恩師、小林晴雄さんをモデルにした。美術室の隣の部屋で絵を描き、おおらかな人柄であった。教え子から慕われた
▼どこかに余裕があり、四角四面ではない。小さなことにこだわらず、授業中の雑談がおもしろい。かつての学校にはそんな先生が何人もいたような気がする。変わったと言われ始めたのはいつごろからだろうか
▼事務処理や会議に追われ、授業の準備がしっかりとできない。残業を含めて仕事の時間が長く、いつも疲れている。本当は子どもとじっくり向き合いたいのに。先生の労働環境の厳しさが問題となって久しい。学生が教職を敬遠する動きも広がっている
▼先生の待遇や働き方の改善を急ぐ必要がある。そのための対策を文部科学省が検討している。仕事に見合った給料を出し、十分な人員をつける―。教育の質を保つには、この当たり前の前提を忘れてはならない
▼15年前のきょう、清志郎さんは亡くなった。小林さんもその9年後に旅立った。いまごろ、学びやの思い出を語り合っているかもしれない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2024年05月02日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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