─光る波の間─

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バッハ/無伴奏チェロ組曲/古川展生

2005-02-06 17:32:44 | 音楽・映像・アート
私のイメージでは、この曲たちは昼間に聴くものだ。

夕べも聴いていたけど、やっぱり日中がいい。

できれば晴れた昼下がりで、季節は問わない。

少なくとも、閉ざされた室内は似合わない曲だと思っている。

だから夜中に聴くのでも、森の中で風の音を聴いてるような、

木々のざわめきや木漏れ日が射しているような、

そういう情景を想像する。

そしてその情景は、8ミリフィルムで撮ったように少しざらついた、

揺れるような画面なんだ。



弾く人が違えば、また違うイメージが湧くのかもしれない。

CDに収められているのはすでに過去の音ではあるけど、

その時その瞬間の古川展生が込められている。

今しか出せない音を積み重ねて、いつかまた同じ曲で録音して欲しいな‥

と思った。

*





石川直樹さんの日記より

2005-02-06 10:30:13 | つれづれ
石川直樹さんの日記より。

* * * * * * * * * * * * * * *

今まで、“最果ての地よりさらに遠く”を探して旅を続けてきたつもりだ。
極地や辺境といわれる場所に行ったことはあるが、ギネスブック曰く
「世界で最も大陸から離れた、定住者の存在する島」、
トリスタン・ダ・クーニャという島の名をぼくは知らなかった。
島の生活について、あれこれイメージをふくらませざるをえない
この島の存在を知ったのは、文学座の『最果ての地よりさらに遠く』という
お芝居を観たからだった。

 ‥‥中略‥‥

この公演を観て頭の中で重なったのは、スマトラ島沖の津波災害のことだ。
20万人といわれる人的被害に比べ、マクロ経済的にはほとんど打撃を
受けてないという。
知人のメールにはこんなことが書かれていた。
「アジアの海辺の貧しい人びとが何万人死のうとも、
保険会社は痛くも痒くもないようです。
もしかして、日本、欧米の数百人?の死亡者に支払われる保険金と
10数万人のアジア人に支払われる保険金と、
その総額は同じようなものじゃないでしょうか」
おそらくその通りなのだろう。

 ‥‥中略‥‥

おそらく、海辺の杭上家屋や板作りの貧相な家に住んで津波被害を受けた人々と、
各国の政府高官の意識も永遠に交わることはないだろう。
膨大な援助金が、木造カヌーをFRP製の船に変え、帆を船外機に変え、
美しい海岸線をマングローブ林ではなくコンクリートの堤防に変えるとしたら、
それは第二の津波被害以外の何物でもない。

* * * * * * * * * * * * * * *

石川さんの文章はいつも、淡々としながらもしっかりとこちらに訴えかけて
くるものがあります。
読む者の心も鎮め、静かに考える姿勢を引き出します。
それでいながら、旅の記録などは生き生きとして、地球上を縦横に駆け巡る
風のような自由さと清清しさに溢れているのです。

*

(トリスタンは、かの『トリスタンとイゾルデ』のトリスタン。
その名には、“悲しみの子”という意味もある。)