よみびとしらず。

あいどんのう。

迷路〜6月28日

2017-06-29 04:25:46 | 散文(ぶん)
迷路にきたと思ったらそのまま入って、南下したらタコの軟化に出くわした。軟化したタコは茹でられて、たこ焼きと寿司になった。たこ焼きの道は右、寿司は左。左巻きさんは右にいって、右巻きさんは左にいった。
左巻きさんはそのたこ焼きの情の深さに惚れ込んで、赤いからだをよりいっそう赤くした。左巻きさんの情熱はかない、ふたりは結婚し夫婦となって高架下の屋台でたこ焼きを売っている。いか焼きも始めようとしたら奥さんに浮気だと罵られ、すったもんだのあげくに離婚した。左巻きさんはいまでもひとりでたこ焼きの屋台をやっている。いか焼きは始めていない。

右巻きさんはいまだ迷路のなかにいた。寿司はとうに食べてしまい、あの寿司を食べて以来、いつだって腹をすかしている。行きずりの草木はもちろんのこと、犬でもトリでもお地蔵様でも、出会ったものはみんな食べてきた。右巻きさんの通ったあとには、なにも残らない。
北上した先の牧場に牛がいた。
実にうまそうだと右巻きさんは食べようとしたが、牛もまたみどり色した右巻きさんを実に美味しそうに思い、食べようとした。お互いに食べ比べが始まったが、ひょろりとした右巻きさんはすぐに牛に食べられた。しかし右巻きさんは、食べられたあとも負けてはいない。牛に4つあるうちの3つの胃袋を右巻きさんは平らげた。最後のひとつに取りかかろうとすると、そこが迷路の出口だった。右巻きさんはようよう迷路から脱出し、その足ですき焼き屋に向かい牛肉ばかりを食べた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿