よみびとしらず。

あいどんのう。

WATER

2022-02-26 15:05:17 | 散文
水の中にいて呼吸を忘れずそれよりも大切なものを置いてきたそれが何かも分からないまま水から離れて空に焦がれて駆ける手足はとても上手に足掻いて消えた本当はいつもそばに居るこの身体のなかに水を得た魚はさやさやとささやかな歓びの種を蒔く「どうか頂戴」と希(こいねが)うのは海よりも遠いあなたの涙 . . . 本文を読む

2022-02-25 13:59:52 | 散文
転んだままでも大丈夫なように創りかえられた便利な街で眠らない眠れずに朝を迎えた 今日もたくさんのお薬を出しましょうあなたが傷つかないように並び替えられたたくさんの言葉で本音も建前も裏腹な口調はぺらぺらとわたしたちは言葉の主人(あるじ)を見失う叫んで蹴飛ばして羽ばたいていたそんな全てを切り捨ててここまでやってきた野生の勘は痩せ衰えて遠い故郷をただ見つる荒ぶる満月も新月の静寂もまるで聞こえずなんにも残 . . . 本文を読む

アナザー

2022-02-24 15:50:14 | 散文
そいつの居場所は何処にあるのか幾千万年惑うた先に日は沈むわたしはいつだって現レる「わたしの居場所はどこだろう?」古びた掃除用具入れの中橋の上から覗きこむ川面(かわづら)あの子の瞳に映った景色夜の枕元朝のゴミ捨て場に屯(たむろ)する鴉そんな場所に紛れてこちらを見つめる私とは決して目を合わせずにつかず離れず一定の距離は保ったままでけれどどろどろとした感情に居座り続けて日進月歩変わらない距離にいるそいつ . . . 本文を読む

Cherry blossom

2022-02-23 10:38:41 | 散文
風の味潮の匂いを花は運んで日は沈む夢から醒めずに来た夜はくるりくるりと5つの花弁チックタックとリズムは踊りどうかここに来てほしいの思いを乗せて本当の願望は海に捨ててきたわたしはさらう春の曙 . . . 本文を読む

たなごころ

2022-02-22 13:53:51 | 散文
分かりやすい両目をたずさえて祈りへ繰り出したあなたに昇る白い光の月明かりに照らされ赤く染まった黒髪は月の有頂天まで怒りに身を任せれば苛立ちかすむ有耶無耶にまぎれてあなたは隠れた熱のこもりに冷たい風は夜に乗り音楽は誰の耳にも届かずにいるそれでもどこまでも続く誰かの祈りはそうでない砂をじつと握りしめていた . . . 本文を読む

悪魔の休息

2022-02-19 16:02:25 | 散文
悪魔に休息なんてもんはなく気まぐれにイイコトをしたら追い払われて後の祭りだ賑やかな場所は嫌いじゃないと逃げて逃げて逃げた末に行き着いたのは一寸先のちょっとした笑い話にもできない不真面目な俺に与えられた朝 . . . 本文を読む

水の贈り物

2022-02-18 10:32:05 | 散文
その水に触れ身体は熱くなるわたしたちはそのどちらでもない場所からあなたに触れて歓びは寿ぐ明日を受け入れた白いギフトをあなたへ贈ろう言葉の届かぬ昨日から予定調和は乱れて狂い元の調和まで本当に辿り着きたくて繰り返すいまに積み重ねられてきた嘘を糧としてわたしたちは明日に火を灯すあなたは清らかな白のまま平生(へいぜい)を保ち泣いていた . . . 本文を読む

月と林檎

2022-02-17 20:33:13 | 散文
赤い月と黒い夜をみて林檎をかじるその赤くない実を林檎と呼べば蛇は足を失いあなたは笑う月の色にも夜の空にもまるで似つくことのない神話を握りしめて祝福を鼻で笑ったあなたは海に置き去りにされた赤い月の真似事をしたわたしはひとりその赤い果実に刃を突き立てる . . . 本文を読む

2022-02-16 14:12:09 | 散文
水は流れてなにも残さず響かずに沈んだ言葉たちの群(むれ)内側の明かりも火の影も見つめておさめられたのは海の底深海の面影に似たあなたは後退(あとずさ)り半円は満月と言い張り赤色に染まる優しいあなたの尖った牙をどこまでも待ち望んだのはゆうべの話さらさらと流れる音の調べに耳をすませば熱き血潮も乾いた水もなにも起きることのない夜だった . . . 本文を読む

月の出

2022-02-15 11:29:36 | 散文
月の出を見に行こうとあなたは行った外が怖いわたしを放置して白い月の出の空を拝んだ赤色青色空の色からぜんぶ違う色のわたしとあなたをなにも違わない夜へと誘うわたしの手をとったのは誰の声かとふたつ並ぶ影はひとりぼっちのわたしから白い月の出を見るまでに夜は沈まずにわたしを抱きしめている . . . 本文を読む

GATE

2022-02-14 12:53:48 | 散文
俯(うつむ)くことしか出来ないならばその視界のなかで目をこらせ夜の色よりも深い暗闇も海よりも重い息苦しさもそんな中にさえある歓びも俯いたまま目を見開けばたどり着いた地獄の釜の底にてあなたは笑うそんなあなたの横を通り過ぎて私はひとりその釜の底をぶちやぶれ . . . 本文を読む

HA

2022-02-11 04:45:46 | 散文
ハハハと笑う歯を食いしばり腹の奥から音の出るはずもない笑い声を噛みしめて笑い続けて刃は研がれたその噛み合わせの隙間からのぞく空の青さを鼻で笑うには遠すぎてくるくると目はまわりまた今日も項垂(うなだ)れたままの首の痛みを放置したただ通り過ぎていく夜を迎え入れてわたしはあなたの臍(ほぞ)に牙をむく  . . . 本文を読む

飛ぶ

2022-02-10 11:00:37 | 散文
色彩は飛んで虹にはならず四方八方飛散して産まれた空の詩透明なままで託された私はその青を睨んで叫んだこの向こう側まで飛んでいけそれが叶うことのない毎日に握りしめた拳のなかにも捕まった空の青さは鳥の姿でかつてを目指したどり着く場所はいつでもあしたであなたは嘆いたいつかわたしの彼方まで弾け飛ぶことのないこの感情を胸に抱いて鳥は飛ぶ . . . 本文を読む