よみびとしらず。

あいどんのう。

罪と罰

2019-06-30 10:52:31 | 散文
あなたの望まぬ復活に魚は姿をかえて鳥となるその歌声は元の声にあらず歌う鳥の苦しみなどしるよしもなくさえずる鳥の音に酔いしれたあなたに罪はなく罰もない . . . 本文を読む

雨宿り

2019-06-29 19:20:54 | 散文
蘇らせたい思いとともにそれはだめだよとあなたはいったせっかく違えたこの道を無意味なものにしてはいけないとやさしいあなたの声色に意味なんかいらないと泣きわめくわたしを照らしだした太陽はどこまでも明るくあなたを失いなお風はふく一時の晴れ間は隠されて空は雲におおわれ雨はふるだれのとも知れぬ恵みの雨に似た涙雨あなたは諦観し無風はその頬かけぬけたなおも鳥は再び歓びのうたを歌い見知らぬあなたはわたしとすれ違う . . . 本文を読む

alone

2019-06-28 11:51:59 | 散文
御前の為になぞ生きてはいないよと貴方は云ったその言葉に救われた私がいてその言葉に絶望した私がいてふたつに割れた私の世界に太陽と月は現れた流れた涙は海となりわたしの祖先はそこから産まれた 海の底絶望した私は海の底おちて生まれ落ちた怒りと苦しみはマグマと連動し怒髪天を衝き貴方に知らしめるこの憎しみを忘れるなかれと救われた私は出口を捜したけれども晴れわたる空は広々として出口の入口分からずにすみわたる空に . . . 本文を読む

blue

2019-06-24 20:00:38 | 詩(イラスト付)
悲しみのあお不安のあお晴れわたる空のあおすき透る透明な海のあお水鏡にうつしだされたのは素直なあなた震えるその手で水をすくいあげた渇いた世界に潤いを雨はまためぐり大地を濡らすわたしの頬濡らしたあなたの姿 . . . 本文を読む

トローチ

2019-06-23 21:30:29 | 散文
だれにもいえない わたしのひみつ嵐のなかで 身動きもとれずノドから先には言葉もでないただ全身をふるわせてだれか助けてと願うからだは闇夜に光でつつまれたその輝きに気づかぬあなたのへたくそなウソは見破られあなたは出ない言葉から雄叫びをあげたどんな嵐よりも勇ましくやさしくて弱虫なあなたからたちのぼる光は太陽わたしの手には届かない二つにわれた光よりこうこうと輝きわたしを照らしたただひとつなんてことは決して . . . 本文を読む

non-bell

2019-06-22 17:43:19 | 散文
ベルは鳴らさないでとあなたはささやいた大切なあの子が起きてしまうから鐘は鳴らさないでと彼女は吠えたおいてきた記憶を呼び覚ましてしまうから鈴は鳴らさないでと少年は怯えたおそろしい誰かに見つかってしまうからふるさとにカネの音は響かずに騒音は大小さまざまな飾り気をまとい暗やみのなか夜を踊り明かす静けさにふるえる子どもの泣き止むまでその眠りを妨げるなかれと夢食いはすべてをのみこんだだまされるひとはだまされ . . . 本文を読む

2019-06-20 12:58:14 | 詩(イラスト付)
太陽からどんどん遠ざかる日にむかいたりて海上の太陽は我のせなかにありもうひとつひなかの太陽はいまも暗やみのそこねむるその居場所知る人魚の声も絶えて久しき水面は揺れるゆうらりゆらりと時の鳴るまで . . . 本文を読む

WAVE

2019-06-18 11:00:29 | 散文
ふるえてゆれる鼓膜にひびいた音もなく鳴り渡る不協和音に耳をふさいだ片目をとじてもうつる世界はもう片方の目に刀をむけるその刃がうつしだすのは彩りに満ちた真昼のひかりわたしにはあまりに眩しくてその切っ先をこころに刺した志し受け継ぐひとの目にふるえてゆらめく航海の路(みち)出会わなければ良かったというわたしに勘違いも甚だしいとあなたは笑った海はおだやかに波音をはこびわたしはかつてのわたしに会いにいく . . . 本文を読む

月世界

2019-06-17 20:34:10 | 散文
眠りについたただ音もなく沙汰(さた)もなく眠りのふちにおとずれたのはただ姿もなくゆれる影いくら分け与えられても満たされることはなかった満つる月影にわたしはわらううしろに伸びゆくわたしの影から飛び出したうさぎは何をみたのかしだいに笑顔は枯渇していき月はどこまでもわたしを追いかけるふりはらう術もなき姿なきすがた袋小路にうつしだされた月影は穴となりわたしはつかまる手をのばしても影に姿なくそこにはただ暗闇 . . . 本文を読む

2019-06-16 14:01:54 | 詩(イラスト付)
理不尽な思いも歪んだ過去も廃れた希望も迷子の涙もすべては一度海にかえして一緒に泳ごう言葉を無くした人魚とともにひかりは沈まずただ上空にあり沈んだ記憶は月までのぼる海のそこおく深くからふたつにわれた片われをさがしにわたしの身体は産声をあげた . . . 本文を読む

赤色の空

2019-06-15 17:12:54 | 散文
あか色の空にひとりは寂しいとないた小鳥は赤色のとさかをおくられて鶏となったあか色の空に怖がりの小鬼はその身体を赤色にそめあげて血気盛んな鬼となるあか色の空に恋しいあなたを待ちわびたわたしはその口元に紅をひくあか色の空に血は途絶えることなくどこまでも廻るわたしのなか宇宙よりも広大ではるかかなたの連鎖までそんななかあか色の空に月だけはその色彩にそまることなくただこうこうとあたりを照らすあか色の空に解き . . . 本文を読む

water

2019-06-14 12:30:10 | 散文
恵みでも災厄でもないものを恵みだ災厄だと云い放たれて本来のすがたを見失った鏡にさえもうつらずに本音はかくされたからだの奥底清らかな水辺にうつるのはどこまでも続く暗やみの黒そこにたたえられたのは透明な水その水を掬(すく)う両の手に与えられたのは確かなぬくもりその熱を忘れるなかれとただそれだけを願ったぬくもりも知らぬただの水 . . . 本文を読む

voice

2019-06-13 14:40:24 | 散文
少しずつ枯れていったあなたに似合いのあの花にきれいな水を分け与えたあなたのすみわたる歌声をいつまでもきいていたかった思いは溢れすぎて枯渇したしわがれた声には真実のカケラもなくかわした約束はついぞ守られたためしなしかすれた声のかそけきすき間にただそれだけを乗せればよかったものをたった一言そのひとこえを乾いた風は痛みをはこびしだいに喉元は熱を帯びてはれあがるただあなたに愛されたかったとあの日言えなかっ . . . 本文を読む

おろかな世界

2019-06-10 18:36:02 | 散文
大切なものをなくしたひとの子がないた天使は自業自得だとひとの子をバカに思いながらもその目からこぼれおちる涙の美しさにきょうみをもったひとの子なんかにきょうみをもつとは天使もバカなやつだなとアクマは天使を鼻で笑ったそんなアクマはいつもひとの子相手にイタズラをしかけてアクマの絶えることなきそのイタズラをひとの子は内心バカにしているそんな三者に興味ほんいから神さまはたずねた『おまえたち、自分のことは一体 . . . 本文を読む

とうめいなしずく

2019-06-09 15:00:21 | 散文
大切にしていたものがなくなったかなしくてないたなくなることは当たり前なのだからそれをかなしむなんてバカげたことだと天使はいったなくなることが当たり前であってもたとえ始まりから決まっていたことでもわたしにはそれはかなしいよとひとの子はいったボクには全くりかいできないねと天使はあきれ果てかれらは地上をあとにしたそして天空に自分たちの住まう世界を作っただれがいなくなってもかなしまずなにがなくなっても悔や . . . 本文を読む