よみびとしらず。

あいどんのう。

ドーナッツ

2018-08-31 06:52:28 | 散文
いろんなものがそこにはあってありすぎて どれも選べずに僕のそこにはなにもない たくさんのものがつまっていたそれらを バクがすべて食べてしまい あとには夢だけが残った ドーナツのわっかみたいな場所に僕はいる 飛ぶトリのみる景色は 穴のつまったドーナツ型で なにもないことなどあるはずもないのに 夢のありかは夢まぼろしか 目の前に広がる街に転がった石ころは見た 夢と現実は重なりあう 平凡で月並みな世 . . . 本文を読む

えん

2018-08-29 17:20:01 | 散文
会いたいあなたはどこにも居らず けれども気配はすぐそばに 左回りは許されず 旋回の外側でわたしは踊る はらはらと舞い散り 髪は乱れてはらはらと わたしの涙ははらはらこぼれ あなたの瞳ははらはらと わたしを憂えてなお見守った あなたの思いはただ真っ直ぐで そんな思いに癒されて 太陽は少しだけ顔をだす 無理にこじ開ける者もなく 空に広がるたくさんの雲は 光と海と大地を包みこむ 弾劾の声も空まで . . . 本文を読む

flower

2018-08-27 21:49:54 | 散文
雨は降りさかさまの空に 種子ひとつこぼしたらハナひらき 孤独な太陽は雲にかくれた 雷鳴のなかに咲く閃光の 天地(あまつち)の道は通れども誰も渡らず ハナは誰に見られることもなく めくるめく時に身をゆだねただ時を待つ 虫のこえ耳すますひとの目に 触れずとも咲き誇る一輪のハナ やがてハナは枯れ散り舞う風の 行方は誰も知らずとも 踊りおえたハナは無事もとの地へかえり 水にとけ虹の根となり空を渡る . . . 本文を読む

月の木

2018-08-25 15:30:28 | 散文
月が木にかかった 小さなわたしでは取ることができずに ただ手をのばすだけ まわりを見ても誰もいなくて お月様がわたしに問いかけた 「私の生きた証はどこにあるのだろうか?」 「分からない」とわたしはこたえた 「分かるまでここにいる」と月はいった やがて月と木は通じあい 木にはたくさんの大小さまざまな月が成った しかし夜空に月がないのは困ると かみなり様が木に雷を落とした 木は消し炭となり . . . 本文を読む

2018-08-24 19:15:14 | 散文
海のない場所で海を思う 夕凪に泣く子の声を海はひろい 波音は絶えず世界へと広がり その声を見知らぬ誰かの元まではこぶ 波音を耳にした誰かもまた涙をながし またちがう誰かが朝焼けと夕焼けの海をみる 海のない場所でみる海は コバルトブルーと白い砂浜 或いは闇夜に沈む海の姿なく ただ繰り返される波の音 悲しみにくれた思いも喜びに満ちた笑顔も すべては水に包まれて 今日もまた誰かが海をみる 誰かが . . . 本文を読む

女神

2018-08-23 10:54:03 | 散文
女神はほほえみ、私の体は上手に動かない そこにない泥濘(ぬかるみ)に足をとられ 吹く風は感じられず無風をあるく 輝く太陽の先にあるものが私をにらむ 私の両目はふさがれて よく見えない世界は砂漠となりて 幼子の砂のうえ遊ぶ 黒髪のゆれて夜更けはさらに包まれた 月も知らないこの夜の 閉ざされた瞳にささる ひとひらの影に 真昼の太陽を託した、女神のほほえみ 海の女神に守られた場所で 私はあなた . . . 本文を読む

trip

2018-08-21 16:51:38 | 散文
かつての故郷は夢のなか カモやスズメの導きに かみなり様へ会いに行く カラスにくらむ身体は水のにおいに包まれて 泳ごうともがけどもこの身は大地にはばまれる せめて空でも飛べればと 雲かかる空を仰げども 大地立つ身体に太陽は遠く 誰がわたしたちの翼を奪った? 奪われた悲しみも忘れ去り 旅立ちを放棄した羽のないカラス 本物の烏は飛び立ちて 鳴る羽の音は 漕ぎ出でた舟とおなじ音 ばらばらに巣立っ . . . 本文を読む

MEET

2018-08-19 11:22:48 | 散文
会ったこともないあなたに願うのは どうか忘れないでくださいと 顔も見知らぬあなたであれども あなたはわたしを知っているから 「いつかまたお会いできる日を」 木陰は風にゆれ それにあわせてわたしもまた姿かたちを変えていく 音の響きも常にはあらず 太陽の引力すら忘れて わたしたちはいまを生きる 「とても楽しみにしています」 夜に住む月は海に触れ けれども真昼の空は月の輝きを知らず 海は空の青さ . . . 本文を読む

小雨

2018-08-17 05:22:23 | 散文
ここにだけかかった雨雲の理由は ここにだけ降る小さな雨 ななめに斬り込まれた空は 昨日とはさかさまに現れてまた沈む ここにだけかかった雨雲は全体へとおし広がり 心には一切の青空なくも 身をひそめてなお主張する ここにあると やがて雨雲は流れてここにだけ留まり わずかな青空が彼方に光った ここにだけ降る雨が教えてくれた 小さな勇気 . . . 本文を読む

みどり

2018-08-16 11:11:17 | 散文
一番長いわたしが切られました この身に刃をあてがわれ あなたは躊躇う(ためらう)こともなく 青いそらと強い陽射しは わたしをよりいっそう強くして この世界はきれいなみどりに包まれます わたしはあなたに切られました 切られたわたしは他の様々なわたしと共に まっかな炎にくべられて あの青いそらへとかえります 母なるお山が見えたとき わたしは何色にもそまらずに 姿かたちも解放されて かつての . . . 本文を読む

reverse

2018-08-15 06:09:44 | 散文
さかさまの炎は元のヒと合わさり またさかさまの水となる 水は落ちてまた昇り 豊潤な緑となり闇夜を照らす 仮宿を離れたトリの止まり木は朽ち トリは再び空に舞う うたかたの調べは誰の耳にも届かずに ただ思いだけが海に残った 「かえっておいで」 「おかえりなさい」 水にとろけたうたかたの思いは 空気とからまり 生物は終えるまで呼吸を繰り返す 空を舞うトリは また新たな止まり木を目指した . . . 本文を読む

輪廻

2018-08-13 17:17:18 | 散文
二つに割れた片割れが元の場所へと戻ってきた もう片方は迷子のままで かえってきた片割れは もうそこはかつての場所ではないことを まったく気が付くそぶりもみせずに 迷子の貴方を待ちわびる 本当の迷子はどなたであるかを 夜の月だけが尋ねるも くるりとまわった迷子の夜は 賑やかな色彩をあとにして 次第に視界は手離され 逆さまの海では青い魚が泳いでいる 夢の入口に立つ迷子 鳴る雷(かみなり)のお . . . 本文を読む

都会のライオン

2018-08-09 10:19:23 | 散文
流れゆく街並みに風はなく 自転車を漕ぐこどもたちだけが風をうけていた 雨の降りそうな空を見上げる者は誰もなく 俯き(うつむき)さえせずにそれぞれの道を行く 目の前にある扉を開けることもなく 限界は宇宙の彼方へと置いてきた 走ることを忘れて感覚を鈍らせ ただ手足を動かし日々を追う 立ち止まらずに 愚痴や弱音にまみれても そこに在ることだけはやめることなく それだけは諦めずにここに立つ 瞳の . . . 本文を読む

虹色のヘビ

2018-08-08 14:01:02 | 散文
砂漠に星がひとつ落ちて、落ちた星をヘビが食べた。 星を食べたヘビは虹色になった。虹色になったヘビはそのからだをみんなに自慢したが、みんなは口々に「虹色のからだなんて気持ち悪いよ」と非難して、ヘビの友だちはひとりまたひとりと離れていった。虹色のヘビはひとりぼっちになった。 ヘビは自分の虹色のからだを、そんなに悪いものだとは思わなかったけれど、そばに誰もいないのはさみしくて悲しかった。 しばらく . . . 本文を読む

バス

2018-08-07 09:39:32 | 散文
眠たげな朝に バスはどんどん西へと走る わたしの世界はまだ夢のなかにあり ひがしほりこしが いましぼりもちに聞こえる バスのメロディー 信号待ちに 運転士の指は 軽やかにリズムをとりハンドルの上を踊る それをうつす窓の鏡 いましぼられた餅は 舟をこぐ海にはなたれて 兎は海に出たけれど 取り囲まれた餅に食われて 兎は餅の一部となる わたしは餅にまみれた兎に誘われ 目的地まで歩いていく . . . 本文を読む