よみびとしらず。

あいどんのう。

淡雪

2021-12-31 08:42:58 | 散文
雪にフタされた柔らかで儚くそれでも確固たる意思をもつその白い冷たさの奥にあるのは誰よりも熱に敏感な心おかえりなさいと問うまでにあなたは熱をもつわたしから距離を置く内と外とに分断されたおなじ光に放たれて息を吐き出せばくるくると廻るわたしは夜を迎えに目を瞑り時の鐘の鳴る大晦日新しい春の来る前に . . . 本文を読む

泡と糸

2021-12-30 12:27:04 | 散文
ぷつりぷつりと途切れた糸は人の縁(えにし)に結ばれた朱に交われども染まらぬ空はどんな色かとあなたは問うた目にはみえない泡沫に溺れたわたしは歌うたう恋か何かも知らぬ間にただ苦しくて呼吸も忘れたそれを届けに来たあなたからどんな色にも染まらぬ身体は泡にもなれずに泣き叫ぶ音叉の響きに耳をすませばひとは海に着きて舟を漕ぐ何処にも存在しないわたしからたどり着いたのは御伽噺と確かなる嘘内緒の話とあなたは笑ったそ . . . 本文を読む

カーテン

2021-12-29 20:30:13 | 散文
触れて弾けて目が醒めた朝にあなたの悲しむ姿はみたくないとわたしはなおいっそうあなたを困らせたカーテンは朝日を含み微動だにせず光はその布の奥に向かう道を阻まれる風の匂いを思い出しながら大きく伸びをしたわたしは腕を開きて光から逃げるようにカーテンを引く室内は明るい一日を受け入れてわたしはわたしと距離を置くカーテンの向こう側ではかつてのいまとこれから先に広がる夜空を抱きしめてもうここにはいないあなたの呼 . . . 本文を読む

ひとひ

2021-12-18 13:58:10 | 散文
夜に落とされた忘れ物からくらりとめくればまた新たに産まれるまやかしににっこりと微笑んだのは明るい月のしたその悲しみの表情は決して泣くまいと水を手放したあなたは優しい炎に包まれる燃えることのない色の葉にわたしはわたし自身を手放したいとかそけくささやけば夜は大いに笑壺(えつぼ)に入りて日は昇る昏い明日に焦がれてはいつも正反対の眼差しからなる空は空っぽになるつもりなどはじめからなかった太陽はさんさんと愛 . . . 本文を読む

阿吽

2021-12-17 09:26:22 | 散文
ひとりのなかにあったひとりじゃない者たちの結末は幸せから遠くかけ離れた場所にありその居場所にいざ架け橋を勇敢な七色の虹は尋常に架かりてこの胸の内側はざわめいた遠く離れたままで良かったのにと誰かがささやけば波の立ちたるゆらゆらとこの感情の正体もわけもなく溢れた涙の意味も曖昧模糊なかたちして怒りだけがわたしたちを誤魔化したわたしはわたしから遠くかけ離れた場所にありこの正体は隠されたまま見つめ合うことす . . . 本文を読む

クロス

2021-12-14 09:54:01 | 散文
立ち消えに天地は歪んだ十字架のうえわたしが誰だか分かりますかの言問(こととい)も傾いた世界にこの身を任せて首を傾げた平行線はゆらゆらと海に焦がれて打つ波もなし柔らかな景色は雲の彼方まで白色の光に隠された姿は月かそれとも太陽かわたしのもう果たされることのない約束をいつまでも手放さずに歳月は巡るその色にゆだねて春夏秋冬正面にうつるあなたの影はかすれてわたしははらはらと風に舞う落ち葉は鮮やかなまでにあな . . . 本文を読む

2021-12-13 17:30:52 | 散文
余白に照るのは月明かりあついからだは空に鳴くもうなくなりましたと紙の行方は昨日の夜の夢まで風に飛ばされたあなたを思うて更ける夜の止まぬ胸の高鳴りは震える地続きに海を見たいまはもうたくさんの拍手喝采鳴る手のひらの途絶えた夜はぷつりとは途切れぬほつれた余白に舞う赤色はわたしをいざない海のない場所に朝日は昇る透明な空にとけこんであなたの目と耳は糸で塞がれたその糸をすすげば水は青色に染まるわたしは空色の水 . . . 本文を読む

ヒトカゲ(ゐ)

2021-12-12 12:51:26 | 散文
火傷を恐れて水から逃げたヤモリは家のぬくもりが恋しくて家の内には入らずにいる憧れのままに火元を置いて優しさも悲しみも知らずして人影はわたしたちから離れるすべもなくひろい光源の後ろの正面に居座ったただ淋しさだけはちゃんと知っているイモリは枯れ果てた井戸を後にして似た翳(かげ)りを持つわたしの影に棲みついた 光の在処は数知れず何処からも照らされる世界に頭を隠したあなたのその尻尾からも灯火(ともしび)は . . . 本文を読む

恋文

2021-12-11 08:51:20 | 散文
百代の過客となったのは誰の優しさかそのぬくもりを感じることもなく吹く風の冷たさは旅人の厚い掌を強く握りしめさせて柔らかな夜の帳はかたく蓋をした全ての思いはこの御胸に抱かれたままやがてあなたは振り返りもせず わたしは雷を喰らう鬼となる幾年月もいつまでももう交わらないと深く頷いた恐怖も疑念も絶望もぜんぶを振りまいて距離を置きここにある遥か彼方のどこまでもいつの日にかという思いは淡雪に溶いたわたしはあな . . . 本文を読む

COLORS

2021-12-10 14:40:18 | 散文
わたしにあかをあなたはあおを互いに異なる色を交わした交わることすら能わずにはじまりにおわったわたしたちから幾重にも雲は成り立ち日は翳(かげ)る雨を願う空はやがて快晴の青に包まれた水に色を忘れたわたしは染まる桃色の花を握りしめてそうとは知らずあなたに触れたこの色の葉は雲に隠れて行方も知れずどこかで見かけたあなたの影にわたしは置いてきた水色の光を見出した . . . 本文を読む

FLY

2021-12-09 09:14:58 | 散文
その場所から飛び出した太陽に赤い一日は照らされて空に昇った求められたものは水と熱お前にはあらずと鳴く鳥は紐づけられて青色の鳥と相成(あいな)ったその姿に空は色付き朝は希望の光に抱かれているこの青色の星に風は吹きわたしたちは羽根のない姿で飛び出すことにした . . . 本文を読む

ツキ

2021-12-08 00:02:25 | 散文
冷たさと温もりの同居する 雨の降る一日にあなたを思へば苛立ちはたち消えて頬をつたった水のありかはツクの明かりに灯されて宵とあかときは離れ離れの同じ場所から全てを奪った真夜中にぐるりと廻るは月のカゲわたしとあなたの生い立ちに似たツキの欠けたる満月と逃げ出した影を探して海に出る落としたものの行方もミズに染まる夜 . . . 本文を読む

2021-12-04 13:56:00 | 散文
はじまりの音に落とされたのは誰かの痛みと傷口に塩その赤色に口付けられてあなたの頬は色づいた何処も彼処もほころんでわたしの笑みに含まれたのは如何なる怒りか歓びか花の涙は海へ繋がったばかりの暗夜行路は儚くも黒色に染められた漣(さざなみ)燃ゆる炎の揺らめきを射た眼差しは青色の月に照らされた . . . 本文を読む